「海外借用地」

イソフラボンという構造体は大豆などに多く含まれているが、この化学構造は人の女性ホルモンに似ている事から、摂取すると人体内で女性ホルモンと同じような働きをする。
そのため閉経後の女性がエストロゲン不足によって起こすとされている、骨粗しょう症の予防には効果があるが、一方で外部から不自然にホルモンと似た成分を摂取することは、本来人が持つホルモンのバランスを崩す恐れがある。
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近年、このイソフラボンを用いた栄養補助食品は数多く販売されているが、食品安全委員会はその摂取量に一定の目安を設定し、大豆の1日の摂取量の上限は、イソフラボンのアグリコンとして70mg~75mg、またその成分が人によって試験され、効果があることが明確になっている特定保健用食品からの摂取量は、1日当たり30mgとしている。
その上で妊娠中の女性や小児、乳幼児は日常の食事以外に、大豆イソフラボンの摂取は控えるようにとしている。
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またダイエットのサプリメントとして近年台頭しているコエンザイムQ10、これは体の中でどう言った化学反応を起こしているかと言うと、人体では酵素が触媒として働いているが、酵素単独では反応が進行しない場合があり、このとき必要なのが補酵素と呼ばれる存在であり、コエンザイムQ10もこうした補酵素の一種である。
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人細胞内のミトコンドリアに存在する代謝系に、エネルギー発生系があるのだが、食事から摂取された栄養成分は最終的にこの代謝系でATP(アデノシン三リン酸)と言う高エネルギー物質に変換され、体内随所のエネルギー源となるが、コエンザイムQ10はこのATPの生産に関与する酵素の補酵素としての働きを持つことから、これが不足すると細胞内のエネルギー生産率は悪くなる。
従ってコエンザイムQ10はもともと、多大なエネルギーを必要とする心筋、つまり心臓病の症状を改善する薬として使われていたものなのだが、その効果が医学的に実証できなくなったため、医薬品としての規制を解かれた結果、市場を求めてダイエット業界へ移って来たと言う経緯を持っている。
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コエンザイムQ10が不足すると、人体内でエネルギー生産が順調に行われず、基礎代謝が低下していく。
基礎代謝が低下すると言うことは、消費エネルギーが減少することであり、つまり栄養分がエネルギーに変換されず、体内に蓄積されるために体重の増加が発生してくると言う原理である。
それ故、コエンザイムQ10の摂取はダイエットに効果があるとされる。
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だがそもそも通常の生活を送っていれば、そこまで派手に人間の代謝機能が衰えることは無いのであり、コエンザイムQ10を摂取したからと言って、その摂取分に比例して効果が現れると思ったら大きな間違いである。
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ダイエットサプリメントとして名高いコエンザイムQ10だが、実は高額な費用を出してサプリメントを買わなくても、一般の食品の中に広く含有されているものであり、サプリメントとして摂取してダイエット効果があるかどうかは甚だ疑問であるばかりではなく、毒性こそ無いものの、食事以外からその成分だけを大量摂取して、安全性が保たれるものか、その懸念の方が大きいものなのだ。
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さて、今夜は食品の話をしたついでにもう一つ、日本人の口をまかなうためには、現在どれくらいの農地が必要になっていると思うだろうか。
日本は海外から膨大な量の食糧を輸入していて、2005年の食料自給率は熱量換算で40%、2006年でもこの比率は変化していない。
従ってこうしたことから日本人に海外から供給される食料は、その全熱量の60%にも及び、日本が輸入農産物の生産に要している海外の農地面積は、1500万ヘクタールにも及んでいる。
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簡単に言えば、日本はこれだけの農地を海外のあちこちで借りていると言うことであり、この面積を国内の農地と比較すると、日本に存在する食料生産農地は凡そ510万ヘクタール、つまり日本は実に国内全農地の3倍、日本国の国土面積の38%の土地を海外で使わせて頂いて、生活している訳だ。
その上、日本の農地は年々減少し続けており、現在輸入している農産物の量を考えても、これを自給することはまず不可能と言ってもいいだろう。
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また問題は食料自給率の低さだけでは済まず、根本的には日本の農業者人口の減少であり、その高齢化である。
基本的に日本の農業者人口動態は、60歳以上若しくは高齢者がその全農地の70%近くを生産しているのであり、その生産性は極めて低く、また若手の育成などは補助金暮らしを渡り歩く若者と、そうした人材しかいない中で、自給率をペーパー上で高めようと考える行政などによって、虚構となっている。
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そしてこれは集落営農の実績だが、例えば法人化して大規模会社組織農業にした、地域農業の先駆者と言われる農業法人、この殆ど全てが地域の顔と称され、国から表彰を受けながらも、その実情は膨大な借金を抱えながら、補助金で何とか繋いでいるのが実情なのである。
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最後に、こうして自給率は低く、農地は減少し高齢化が進む日本の食糧事情だが、質、量ともに常に飽和状態にあることもまた、我々は忘れてはならないことのように思う・・・・。
T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。

4件のコメント

  1. 「海外借用地」

    土地のみならず、水、太陽エネルギーその他も併せて、借用と言うべきか、買っているというべきかは、兎も角、それが公正な取引によるとは必ずしも言い難いという事もあるが、それに森林にも同じことが言えているだろうが、その上に安住しているのが、最も危険な事であろう、これは経済問題と言うより、或る意味人権問題としての側面を考えた方が良いのかも知れない。

    高齢になるに成るにしたがって、骨粗鬆症になりがちであるが、Caを補給しようとして、終日運動もしないで、日光浴もしないで、牛乳を飲んでいると、体内に確かに一時的にCaは増えるが、センサーは、残念ながらCa過剰と認識、対応し、牛乳のCaを取り込むどころか、骨から逆に血液中に放出して、益々、骨粗鬆症を亢進しているような事が、大流行している。

    平和で有るには、如何すれば良いかは難しい問題だが、非武装中立で、諸外国を信頼して、と言うのは、違うような気がする(笑い)、ウクライナはロシア軍に負けて国土の一部を失った。多分、ウクライナは、ここ数百年間、ロシアにやられっぱなし。

    1. ハシビロコウ様、有り難うございます。

      日本人はもっと食べ物に感謝する気持ちを持って欲しいと言うのが、この記事の本旨ですが、同時に贅沢を慎み、質素に暮らす事が究極の環境に配慮した営みでは無いかという事を思います。
      消費が美徳など、今までの歴史上でもこれが徳の価値観になった事など一度も無いにも拘わらず、経済と言う幻想の為に踊らされていく事を認識すべきかと思います。
      楽に楽しく暮らせたらこれが一番ですが、最も人を潰すのも豊かさです。
      私には自動小銃よりも恐ろしく感じる訳です。

      コメント、有り難うございました。

  2. 「妥協する正義」1・2

    ま、極端な話、自分の指導・監督不行き届きで、兆候やら違和感は有っただろうに、子弟が事故その他で亡くなった時に、「純然たる被害者」を演じるだけでなく、それ以外の思慮が働かない現象が多発しているのかも知れない。
    一歩下がって見れば直ぐ解かる事なのに、むざむざ詐欺の被害者になって、詐欺師より酷い仕打ちをする弁護団に、人生そのものを台無しにされる。人生の時間は幸不幸に関わらず、長さはそれほど変わらないが、辻褄合わせだけに終始するのは、少なくとも幸福では無かろう。

    今トランプ大統領は、中国解体を目指しているかどうかは不明だが、少なくとも短期的には、貿易赤字を是正して、世界不況の発信地の「名誉ある」地位を獲得しつつある様に思える。資本を含む国際収支が黒でなくとも均衡していれば、一種の植民地経営にも似るが、角を矯めて牛を殺そうとしているのかも知れない。

    全てが蟻の一穴とも言わないけれど、雑な設計や情報が分散していて有効に働かずとか理由は、多面的であるが、水が駄々洩れにも無関心な事象が増加しているのは確実そうだが、一方では、どうでも良い細部に拘泥することも多いように思えるが、これは一事の表裏で有ろう。
    何兆円も使う国家の根幹にかかわる防衛問題では質問もせず、100億円も無い詐欺師まがいのモリモトには1年半も費やす。

    1. ハシビロコウ様、有り難うございます。

      元々正義と言うのは「これしかない」と言う選択上の結果ですが、それが正しいと限った事ではなく、限定された場の限定された時間内での最上級ですから、初めから変化する可能性の高いものと言えます。
      しかし一方でこれを支えているものが社会の秩序であり、正義の質が変わらないと言う事はその国家が安定している事を示しています。
      その意味ではアメリカももう変遷期を迎えていると言う事なのでしょうが、この危機感の無いのが日本で、特に安倍総理などを見ていると、何も考えが無く、ひたすら姑息なだけと言う気がします。

      コメント、有り難うございました。

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