「日本国債」

日本と言う国の報道は実にユニークなところがある。
「日本の景気は緩やかな回復基調になってきました」、と大見出しが付けられた横の欄には「スーパーの売り上げ、17期連続前年割れ・・・」の文字が平気で並び、2002年3月時点の完全失業率は5・0%、実に350万人もの人が完全に失業している状態で、しかもこれは昨年度より15万人も増えていて、自殺者も昨年1年で32845人、これはその前年より596人も増加しているのである。
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おまけに宮崎県では口蹄疫の家畜感染が広がり、こちらの被害はまだ広がっている最中であり、最終的には一体どのくらいの損害が出るのか予想も付かないことになっていて、国内中央紙の朝日新聞社までもが赤字決算を出している現状で、一体日本のどこで、誰の景気が回復基調になっているのだろうか。
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日本国民の民間資産は総額1300兆円と言われるが、事実上の総資産は1100兆円前後であり、その内1000兆円は既に国債の発行で政府が集めつくしている。
アメリカの格付け会社S&P社が日本国債にAAと言う、最上位から2つ下の格付けをしているのには理由がある。
先にアメリカが行った台湾への武器輸出決定により、これに反発した中国が、買っていたアメリカ国債を放出し、このアメリカ国債を買い支えているのが日本だからである。
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アメリカは先のリーマンブラザースに端を発した世界恐慌を沈静化するために、大量の国債を発行して資金を集め、それでアメリカ経済の再建をはかったが、そのアメリカ国債を一番多く買ったのが中国で、次が日本だった。
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しかしアメリカの台湾に対する武器輸出によって、中国は制裁措置としてアメリカ国債を放出、、それをけなげにも日本が買って、アメリカ経済の回復に寄与しているのだが、こうした立場で日本の国際が暴落してしてもらっては、現在日本が持っているアメリカ国債を、また中国にお願いしなければならなくなる。
ギリシャ問題で揺れるEUに更に金を出せとは到底頼めない状況でもある。
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それゆえ、アメリカがもし再度国債の引き受けを中国に頼んだ場合、中国に対して何も言えなくなるばかりか、せっかく決めた台湾への武器輸出も、場合によっては中国政府から圧力をかけられる恐れすら出てくる。
これは避けたいのがアメリカの心情と言うものだが、そのためには日本の実情には目を瞑って、日本はまあまあの経済状況だと言うことにしておかねばならない。
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これがS&P社が日本国債の格付けをAAに留めている理由であり、実際の国際市場で日本国債が取引された場合は、日本より2ランク下の「A+」の格付けになっている中国国債より、その信用能力は低くなっている。
従って日本政府は日本国債を国際市場へ出さないのではなく、事実上出せない状況と言うものが生まれているのである。
つまり日本の国債は日本国内であればAAだが、これが国際市場へ出た場合は、それより3ランク下の高い金利をつけないと中国国債よりも売れないのである。
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この原理は簡単だ、日本国内で米が1kg400円だったとすれば、それが実は世界的には1kg200円で売っているなら、日本は鎖国状態であればこの400円を維持できるが、開国した途端、200円の国際市場に飲み込まれて、日本の農家が全滅するのと同じことだ。
つまり日本国債は市場へ出た途端暴落して、場合によっては紙くずになる恐れすらあると言うことだ。
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この原理が分る日銀、そしてアメリカ政府は、だからこそ日本国債を外に出さないようにして保護し、それによってアメリカ経済の回復をはかれる状況を作っている訳だ。
だから本当は沖縄のアメリカ軍基地の移設問題など、解決は簡単でもある。
「日本が持っているアメリカ国債を全部売る」と一言言えば、アメリカは何も言えなくなるだろう。
ただしこの場合はEUの危機は更に決定的なものになり、アメリカ経済も停滞し、そして日本も大不況に陥るが、その覚悟があればそうしたことも可能ではある。
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こうして守られている日本国債、しかしこれは国際社会の容認の基に成り立っているのであって、世界は日本の経済状況がいかに悪いかを知らない訳ではなく、日本国債が外に出ないことを暗黙の了解としているからこそ、成立させているだけのことだ。
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ギリシャの財政赤字は2009年ではGDPの13・6%、これが2010年には9・1%まで圧縮させる計画となっているが、日本は2010年でGDPの9・6%の赤字になっているだけではなく、2009年を取って見れば、政府債務比率がGDPの189%であり、これは稼ぎの倍近い借金をしたと言うことであり、ちなみにこの時点のギリシャの政府債務比率は115%、つまり稼ぎの15%を借金したと言うことで、これを比べれば日本の経済状況がいかに悪いかが判ろうと言うものだ。
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そしてS&P社の日本国債の格付け、AAだが、実はこれはギリシャの次に破綻するだろうと言われているスペイン国債、また少し以前に金融危機を迎えたアイルランド国債と評価は変わらないものであり、中国国債が低い評価なのは「共産主義国家」だからであり、その実情は日本の国債より2ランク上になっていると考えた方が良いだろう。
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こう考えた上で、日本の民間資産の残高は、冒頭にも書いたとおり、1100兆円で、その内既に1000兆円が使われているから、その残高は100兆円しかない。
つまりこのままの財務状況で行けば、日本が自国国債を自国民に買ってもらえる期間は2年しかなく、それを過ぎれば日本国債は世界市場で買ってもらうしか手が無くなり、この場合は日本国債の暴落も十分考えられる危険性があることを、2年後には日本がギリシャになる可能性が高いことを、ここで指摘しておきたい。
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ちなみに日本国債の市場調達金利の上昇、つまり国債が高い金利をつけなければ売れなくなった場合、例えばギリシャと同じ5%上昇したとすれば、日本では資金を調達するだけで、おおよそ24兆円の追加予算が必要になり、実に90兆円の予算を組んでも70兆円が借金の返済と、支払うべき金利に吸い込まれていくことになるのである。
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簡単に言えば、日本はこの時点で国家予算が組めない状況になると言うことだ。
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またギリシャの再建案を見ればこれは悲惨なものであり、人口の25%を占める公務員を対象にしているが、3年間の昇給停止と新規採用の凍結、特別手当、日本で言えばボーナスだが、これは廃止、年金受給年齢を53歳から67歳に引き上げた上で、受給額は30%カットとなっている。
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何だ年金受給年齢が初めから低いではないかと思うかもしれないが、日本とは平均寿命が低い国で、しかも一挙に14年も受給年齢が引き上げられる実情は、日本で換算すれば、一挙に受給資格が7年引き上げられたと同じ影響があるだろう。
そして消費税は2010年3月に19%から21%になったばかりなのに、更にこれが23%に引き上げられることが決まっている。
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日本の政府もマスコミも国民も、言葉で逃げていられるのは後2年間しかない、このことを良く憶えておくべきだと思う。
※ 本文は2010年5月25日、yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。
T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。

4件のコメント

  1. 「日本国債」

     日本の報道は・・
     “日下公人:新聞記者の勤務評定の基準は記事が何本紙面に載ったかである。たくさん載れば、ボーナスがアップする。大きく載れば出世も出来る。それを決めるのは上司のデスクだから、記者はデスクの気に入るような記事を書く。
    また、「自民党の中で反論が強い」とか「民主党の中ではこんな動きがある」という調子で、これでは「政治報道」ならぬ「政局記事」である。ドラマ仕立てになっているが中身がない“
    全くで、テレビは視聴率を上げるのが目的~~♪

    国債の格付けは、確かに難しい~~♪
    只アメリカの勝手格付け会社は、アメリカの金融商品を売るための会社で有って、信用社会の審判じゃない~~♪

    金が沢山有って、コメが無い所では、金は価値低く、コメは価値が高い。
    一度もデフォルトをしたことが無し、戦争すれば、無茶苦茶強い民族と、苦しくなったら平気でデフォルトをして、禁治産者に成って出直し、戦争したら、毎日食卓にワインが有っても、直ぐ降伏する国とは違う。

    総合的国力と言うのも難しいが・・

    嘘を吐こうが、捏造しようが、裁判で勝てばいい国の精神社会と如実観察で、無駄な係争をしない民族ではまた違う。

    支那は。民族は東洋人だが、精神性と言うより遣り方は、白人キリスト教徒と似ている。アメリカと支那の民族を全取り代えしても、翌日から全く変わらず、活動出来て、国債の価値も変わらない、日本人と他の民族を取り替えたら、国債は翌日から紙屑化~~♪

    1. ハシビロコウさま、有り難うございます。

      日本の国債はもう無茶苦茶な状態になっていますが、薄氷野上を歩く日銀と政府はこの先何かあればどうするつもりかお伺いしたいものです。
      等価定理では将来の増税の為の資金が国債の金利ですから、このままでは将来は減税しかなくなりますが、どうなんでしょう

      コメント、有り難うございました。

  2. 「笑うマネキン」1・2

    子供の頃、薄暗くなるまで外で遊んでいたり、近所の裏山~今風に言えば、里山~で一人で遊んでいると、神隠しに遭うから、してはいけません、見たいな話はさんざん聞かされた。
    今はそんな話をする人も居なくなっただろうし、今どきは、反撃されて、相手にもされないかも知れない。

    薄暗い怖い所がなくなって、トイレも夜は怖い所だったが、今はそんな事は無い。
    拝みや、と言う人も今は居るかどうかは、判らないが、昔は居たらしい。

    現代は、家の手伝いも勉強もしないで、学校へ行っても廊下にいるとか、保健室にいるとか、そもそも学校へも行かないで、部屋に閉じこもってオンラインゲームをしていても、個性だから、有るものを伸ばしない、とか昔よりよっぼど怖い事が、好意的に認知されているようで、こっちらの方がよっぽど、恐ろしい~~♪

    1. ハシビロコウさま、有り難うございます。

      こう言う事って実は多いような気がします。
      人間が気付かないだけで、不思議な事が多く混じっているのだろうと思いますが、一方、こうした事を振り分けることが出来ないのも事実で、その意味では人間は多くの不可思議の中で暮らしていると思った方が良いのでしょうね

      コメント、有り難うございました。

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