「春」

首都圏がウィルス感染に拠ってロックダウンに向かいつつ有りますが、こんな大変な時でも桜の花は咲き、鳥はさえずり、風は暖かな菜の花を揺らします。

人間の世界ばかりが世界ではなく、その一部である事を自然の姿から感じ取って頂けたらと思います。
暫く外出も控えられる皆様に、春らしい動画を見つけましたので、ご紹介させて頂きました。

遠い昔、私が初めて漆の世界に弟子入りした時、師匠は既に80歳近くでした。
私が彼の最後の弟子だったのですが、師匠は明治、大正、昭和と言う時代を腕1本で生きていた人でした。
戦争、大地震、恐慌、デフレ、戦後の混乱を生き抜いてきた彼が私に言っていた事は、「食べる為なら、何をやっても構わない」「仕事に拘るな」と言う事でした。

太平洋戦争後、材料の漆が手に入らず仕事もなかった時、師匠は屋根のペンキ塗りでしのいだとも言っていましたが、その以前、戦時中は静岡の軍需工場で爆弾も塗っていたと語っていました。

「食べて行ければ、それで良いんだよ」
ウィルスで日本中が停滞し、混乱から先が見えない時、なぜか春の日の暖かな光の中、師匠のこの言葉が思い出されます。

無理をせず、待っていなければならない時は、その待っている事すらも楽しむ・・・。
状況が許さず、避けられないものなら、それを嘆くのではなく、どっちでも同じなら泣くより、私は笑う・・・。
辛い事も幸いな事も天の采配ならば、どちらも有り難く頂戴する。

今微細なウィルスに拠って日本の太陽は雲間に隠れてしまったかも知れませんが、この雲は長く続くものではない。
やがて雲は切れ、明るい光が差し込んできます。

それまでの間、泣いても笑っても同じなら、少しは笑いましょう。
どんな事が有っても春になれば必ず花を咲かせる、そんな者たちの力を感じてみましょう。

偶然にとても重厚な桜と音楽の企画を見つけましたので、今日はご紹介させて頂きました。

秋田幸宏氏と、tokyosallyさんのコラボレーションです。

秋田幸宏(あきた さちひろ)
1941年、青森県旧岩木町生まれ。
弘前市常盤野で「山の家 ぶなこ」を経営する傍ら、岩木
山の四季折々の表情を30年以上にわたって撮り続ける。
また「四季をふむ会」の会長として、ブナ林やかまくらを舞
台としたコンサートを開くなど岩木山の豊かな自然を広く紹
介するさまざまなイベントを企画。
2017年2月9日逝去。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。