「国防の現実」・Ⅰ

国防(national defense)と言う概念は、その国家の国民の生命、財産、領土、主権を外部の脅威から擁護することを主な目的としているが、第二次世界大戦以降の国際社会は、こうした防衛と言う一種受動的、若しくは「静的」な有り様から、能動的かつ「動的」な防衛概念へと移り変わってきている。

つまりもともと「攻撃」を意味する(offense)の概念を払拭する為に用いられた防衛(defense)の概念は、既に防衛の為の「攻撃」や「作戦」と言う概念に移り変わっているのだが、こうした考え方を国家安全保障(national security)と言い、ここから現状で安定している国際情勢の動きを、更に継続させようとする考え方が国際安全保障(international security)と言う概念であり、現在はこれから更に「人間の安全保障」(human security)、つまりは個々の人間の尊厳を重視する考え方まで提唱され始めている。

しかし日本の防衛省、アメリカの国防省を見ても分かるとおり、一つの行政機構と言う視点から、国家のどの分野を所轄するかを明確にするならば、その任は依然として「国防」の概念こそが基本とならざるを得ない。

こうしたことから日本の「防衛」と言うもの、その実質をを鑑みるなら、防衛省のうち、長官、副長官、政務官2名、及び「防衛施設庁労務部職員」、つまりは一般職事務官だが、これらを除く他の全ては「自衛隊の隊員」と言う事になり、この自衛隊員が日本の国防の任に当たっていることになる。

その内訳は「陸上自衛隊」が定員15万6122人で、実際の隊員数は14万8302人、定員充足率95%、「海上自衛隊」が定員4万5806人に対して実際の隊員数が4万4528人、定員充足率は97・2%、「航空自衛隊」は定員4万7332人に対して隊員実数が4万5913人、定員充足率97%となっている。

またこの他に「統合幕僚監部」の定員が2322人に対して、実際の定員数は2069人、定員充足率は89・1%となっているが、これらを合計すると自衛隊全体の定員数は25万1582人となり、その実際の隊員数は24万812人、定員充足率は95・7%となっていて、この自衛隊員は全て国家公務員の身分が保障がされ、彼等に支給される報酬は全国家公務員報酬の40%に相当する。(いずれも2007年現在)

そして日本に展開するアメリカ軍だが、こちらは少し古くて申し訳ないが、2005年度の段階で陸軍1790人、海軍4802人、海兵隊1万5533人、空軍1万4240人の、合計3万6365人が日本に駐留していて、海兵隊第3海兵遠征軍はアメリカに4軍存在する「海兵遠征軍」の内、唯一有事即応態勢にあり、沖縄の第3海兵師団、第1海兵航空団(基地は山口県岩国と沖縄普天間、司令部は沖縄)、及び第3海兵役務支援組織から編成されているが、これ等の兵員数はアメリカ軍の日本への申告であり、正確なアメリカ軍の人数は、その作戦移動等によって安定していないことから、日本政府は把握できない。

在日米軍の司令官は第5空軍司令官が兼務し、その司令部は東京都、横田基地にあり、この他に広義の日本防衛にはアメリカ第7艦隊も関与しているが、その兵員数はおよそ2万人、主要戦闘艦艇50隻、海兵隊機を含む艦隊搭載戦闘機200機以上を備える世界最強と言われる艦隊が、このアメリカ第7艦隊である。

実に地球の半分をカバーすると言われるこの第7艦隊、その根拠地はグアム以外は全て日本を定係港、つまりは母港としている。

旗艦「ブルーリッジ」と空母「キティホーク」の機動部隊11隻が横須賀を母港とし、これは2009年キティホークが現役を引退し、ジョージワシントンが後継艦となっても継続され、強襲揚陸艦「エセックス」等6隻は佐世保を母港とし、また沖縄ホワイトビーチなども第7艦隊の寄港地となっている。

更に佐世保の揚陸艦部隊にはトマホーク搭載のイージス艦や、遠征攻撃郡「ESG」なども編成され、こうした背景を考えると世界最強のアメリカ軍は確かに日米同盟に基き、日本防衛の役割も果たしてるが、その実日本防衛に関する直接的な貢献度に関して、アメリカ軍の7%が日本に対する防衛の貢献度であり、残りの93%は日本がアメリカ軍に基地提供で、貢献していると言うべきものであるかも知れない。

だがこうした実情でも、アメリカ軍の防衛能力はイコール日本の防衛の全てと言うべきもので、実際に日本が戦争に巻き込まれた場合は、日本防衛の全指揮権は恐らく在日米軍司令官、若しくは第7艦隊司令官がその任に相当することになるだろう。

「国防の現実」・Ⅱに続く

※ 本文は2010年11月24日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。