「船がダンスを踊る」

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2003年3月31日 Tadashi  Asada 撮影

1956年12月19日、実に8万トンを超える豪華客船「クィーン・メリー」号は一路ロンドンへ向かって静かな航行を続けていたが、ちょうどイギリスの南端コーンウォール半島の沖合いを通過した頃だろうか、貴賓室で新聞記者と話をしていた「ハーバード・モリスン」イギリス労働党議員は、座っていた安楽椅子が心なしか下に沈んだような感覚を覚えたが、その直後彼の体は椅子もろとも、1mも深く落下したような感覚に襲われた。

「何だ、この感覚は・・・、まさか沈没」

「いや、そんなことは有るまい、この不沈豪華客船が、まさかそんな簡単な事で・・・」

モリスン氏は椅子から立ち上がることもでき無い状況の中、とっさにそんな事を考えていたが、次の瞬間今度はさっきの反対で、下から突き上げられるような感じがしたかと思うと、いきなり空中に放り出されるような衝撃を感じた。

そしてそれが終わると今度はまた深い奈落のそこへ沈んでいくような・・・。

「地震だ!」誰かが大声で叫ぶ。

だがこんなことは信じられない事だが、それからこの豪華客船は船体を大きく傾斜させ、その後はぶるぶると不気味に震え始めたのである。

テーブルからはグラスが下に落ちて割れ、またあちこちで皿やガラス、調度品が下に落ちて壊れる音が聞こえる。

「キャー、助けて」

船内はたちまち物が砕け散る音と、人々の悲鳴で大パニックとなって行った。

そしてその後この客船は、どう言う訳かまるで軽快なリズムを刻むように揺れ始め、それはまるで豪華客船がダンスをしているような感じになった事から、船内のあちこちで急激な船酔い状態の者が続出し、そこらじゅうで紳士や婦人達が嘔吐している、まことに見るに耐えない状態となった。

「おい!、救命ボートはどこだ」

「助けて、キャー・・」

豪華客船の乗客たちは先を争って甲板に向かって走り出し、それに対して船員が「大丈夫です、安心してください」と声を限りに叫んでいても誰も言うことを聞かない。

みんな制止する船員を殴ってでも、力ずくで救命艇を降ろそうとし、また我先に救命艇に乗り込もうと怒号が飛び交い、甲板は騒然となった。

どれくらいの時間が経過しただろうか、やがて少し冷静になった乗客たちは、眼前に広がる穏やかな海と、そして辺りには氷山らしき物陰も無く、また船から煙も出ていない状況に気づき始め、いつしか豪華客船の異常な揺れも収まっていたことから、今度は「今のは何だったんだ」と言う感じになって行った。

それから船員達があちこち点検を始めたが、船体にはどこにも異常はなく、機関も正常、やがて「ビショップス、ロック」の灯台が見え始めた頃には「この船には故障はありません。予定通りロンドンに入港します」と言う船内放送が流れ、これでホッとした乗客たちは、やっと落ち着きを取り戻したのだった。

ロンドンに入港した「クィーン・メリー」号、この豪華客船はそれから船体をくまなく点検されたが、どこにも異常は無く、何の損傷も無かった。

また当時豪華客船の操舵室には5名の船員がいて、彼等は何れも大きな波や氷山などを確認していない。

「ただ穏やかな海だった」と証言している。

さて話は変わって、場所は石川県能登町小木港(いしかわけん・のとちょう・おぎこう)、ここではこの4、5年海が穏やかな状態の「なぎ」と呼ばれる日に、何故か船が上下50cmから60cm、水平方向には2m程も揺さぶられる現象が多発している。

小木港は日本屈指のイカ釣り船団の港だが、ここに入ってくる150トンから200トン級のイカ釣り船でも大きく揺さぶられ、漁師でも立っているのがやっとの状態になる。

風も無く、波も無い穏やかな日、突然激しく揺さぶられた船の係留ロープはちぎれ、荷揚げ用に港へコンベヤーを渡している状態なら、このベルトコンベヤーを破損するケースも現れており、同港では少なくとも2007年前後から19件の報告が石川県漁業協同組合小木支所に寄せられているが、何れも潮位の上昇も波も無い状態で発生するこの現象は、漁業関係者の間では「こみ」と呼ばれ、「こみ」とは潮の異常な海域を指している。

そしてこのような場合は「内部波」と言って、海底で起こる異常な潮の流れによって発生した表面上に変化を表さない波が、影響していると言われているが、波に振動が無くそこで浮いているものに対してのみ振動が伝わる言う観点から、こうした波の発生原因も、またなぜ振動が起こるのかも今だ物理学的説明がつけられていない。

小木港では1981年から新港整備事業が始まっており、この事業に関連して2003年には、それまで繋がっていなかった港の防波堤が全部繋がり、こうした時期から異常振動が始まったのではないかとする意見も有るが、2003年では7年前からこうした現象が現れているはずで、ここ4、5年と言うことで有れば、誤差の範囲かも知れないが、タイムラグが有るように考えられる。

むしろ2007年前後と言うことであれば、「能登半島地震」によって起こった海底の異常と言う考え方の方が、可能性として高いようにも思われ、また事実石川県と富山県の一部では、2007年ごろから謎の「空気振動」現象が頻発している事実がある。

この空気振動は地面が揺れるのではなく、空気の振動によって家屋などが揺れる現象で、ジェット機の加速振動、隕石の大気圏突入時の振動、雷の振動の可能性を排除した状態で起こる「ドーン」と言った衝撃音を伴う、最大震度4程度の振動のことで、こうしたことを鑑みるなら、空気を伝わる振動も存在することを、これらの現象は示しているように思うが、気象庁、及び大学の理学部などは原因不明としながら、「空気振動」と地殻変動の関連性を否定している。

船がまるでダンスをするように踊りだす・・・。

さてその原因は見えない海の波か、それとも大きな空気振動か、いずれにしても目に見えないだけに人間には不思議に思えるこの現象、54年前も「謎の事件」だったが、現在でもやはり「謎の事件」のままである。

※ 本文は2010年11月28日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。

2件のコメント

  1. 「船がダンスを踊る」

    世の中には不思議な現象が有るものですねぇ、未だに神隠し、のような事が報道で有りますが・・これはきっと共振やら、そのような物理的な事が発生している気もしますが、その発信源が、何処かは、まさに僥倖が有って、類推されることも有るかも知れません。電波も周波数によって、一定の距離で感度が上がったり、下がったり。

    可なり前に、長い砂漠~高山~荒地を飛行通過中の時に食事が出されていたのですが・・微振動が忽ち強振動になって、飲物のコップ~ガラスから幾人かは飲物がこぼれ、その内、いくつかは引っくり返り、結構な恐怖だったが、数分で収まり、安堵の声が上がった。
    地上も良く見えて居たし~星空も感じられたが、乱気流だったのでしょう、無事目的について、乱気流より悪い仕事が始まった~~♪

    1. ハシビロコウ様、有り難うございます。

      この現象の正体は「三角波」だと思いますが、海水の乱水流と言うところでしょうか。
      千葉県沖、相模沖などでも時々発生しているようですが、一説にはバミューダトライアングルなども、この原理が働いて沈没船が多くなっているのではないかと言われてます。
      世界中には随所に魔の海域が有り、そうした場所に連動して人魚や海坊主、或いは大蛸伝説が発生しているのかも知れません。
      人魚などは間違いなく「不吉」ですが、その歌声を聞いた者は死ぬと言われていますし、嵐の中マストに現れる火、セントエルモスファイアーなども、嵐の中の火だから希望のような気もするのですが、この炎が出てくると船は沈むと言われています。
      サルガッソーなどは浅瀬が有り、また多くの海藻や藻などに拠って船が座礁したり、スクリューに絡まったりの事故が発生すると言われています。
      21世紀になったら相当科学は進むと考えていたのですが、思ったほどではなく、民衆の一般を見ていると、1980年代より若干非科学的な事がまかり通っているような気がするのですが、如何でしょうか。

      コメント、有り難うございました。

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