「権威の散逸」Ⅱ

中国はこれから先も食料調達を進めないと国民を食べさせることができない。

つまりは食料を買い集めて国民に分配しなければ、権威である「政治」に対する不満が増大し、これまでも権威の最終手段である「暴力」で抑圧してきた民衆を抑圧し切れない状態が発生してくる。

このことから中国政府は食料買い付けをやめることができないが、その一方でこうした中国の食料買い付けや、資源買い付けは世界的な原材料費の高騰を招き、このことが中国の食料、資源買い付けを困難な状態に追い込む側面がある。

またこのような買い付けによる世界市場に措ける原材料費の高騰は、中国経済に深刻なインフレをもたらし、中国は経済の失速を迎える可能性が高く、この場合、現在の中国政府がその統治能力を維持できるかどうかは不透明な状態が訪れるだろう。

加えてバブル経済と言うものは、10年の期間を超えることが無く破綻するものであり、即ちこのままで行けば中国は5年以内に相当大きな混乱を迎えることになる。

そしてこれからが今夜の本題だが、「権威」は他国との戦争では失われないと言うことを鑑みるなら、もし中国政府が国内の民衆の不満を抑えきれないとき、その場合は他国に対してその矛先を向けることで、民衆の不満をそらそうとする場面が出てくるだろう。

太平洋戦争以前の日本が、やはり日露戦争後常に無理な軍備拡張をし、為に国民生活が窮乏しその不満が渦巻いたとき、国民の不満をそらそうとして欧米列強憎しの環境を作り、ついにはそうした国民感情のコントロールを失って、「太平洋戦争」に突入した図式と同じ傾向が現在の中国にも存在する。

つまり中国が何らかの破綻を迎えたとき、中国政府はその問題を日本憎しにすりかえようとするだろうリスクの高さを、日本が負っている。

先の尖閣諸島のような問題を故意に起こし、そこから中国国民の不満を自国の「愛国心」にすりかえようと考えるに違いない。

また中国が自国の手を汚さずとも、北朝鮮を使っても同じ効果の70%を得ることができるだろう。

その上で今後5年以内に間違いなく中国は何某かの混乱を迎えるとしたら、日本は打っておかなければならない策が沢山ある。

また中国より先にロシアのプーチン政権が抱える問題は、より早く日本に影響を及ぼしている。

ソビエトを崩壊させ、ロシアに自由をもたらした「ゴルバチョフ」氏をして、プーチン政権の独裁批判が発言される現状は、ロシアには既に相当大きなプーチン政権に対する不満が溜まっているとも言え、その矛先をロシア国内のナショナリズムにすりかえようとしているのが、ロシアの北方領土に対する強硬な在り様となっている。

だがプーチン政権は大変危険な状態にある。

現在でもロシア国内には熱狂的なプーチン支持者が多いが、その理由は彼が前回政権を担当した時期の、ロシア経済の好調さと言う幻想が有るからだ。

石油資本で経済が潤った時期に大統領だったプーチン、ロシア国民はそうしたプーチンに希望を持っているが、では今回もう一度プーチンが大統領になったとして、もしロシア経済がさらに落ち込むことになれば、かれは権威を維持しようとして、軍隊と言う「強制」をロシア国民に対して用いる事になるだろう。

さらに中国と同じように、国民の不満をそらすためにナショナリズムを煽り、その矛先はやはり日本となる可能性が極めて高い。

北方領土を巡る強行な姿勢や領海侵犯、果ては間接的に北朝鮮の核開発を使うことも充分考えられる。

そしてその時日本はどうなっているだろうか・・・。

恐らく石油は高騰し、小麦などの原材料費の価格も大変な値上がりを見せ、その一方でエネルギーや食料品以外は物余り現象となる、スーパーインフレとデフレーションが二重に国民生活を直撃する社会、国民は増税に喘ぎ、年金も支給されたりされなかったり・・・、などと言う社会になっているかも知れない・・・。

[本文は2011年2月23日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。