「消失する炎」Ⅰ

山火事の鎮火について、例えば長い間乾燥した期間が続き、燃えやすくなっている状態では火事は中々消えないが、こうした状態で時々突然火事が自然鎮火していくケースが存在する。

また「空気感染」と言う絶対的な感染経路を持つウィルスについても、ではこのウィルスが永遠に繁殖し続けるのかと言えば、こちらもある日突然感染が止まってしまうことがあり、尚かつ如何なるウィルス感染も全ての生体を絶滅させることはできない。

あらゆる生物の種は、例えその全てが特定のウィルスに感染したとしたしても、そこから症状を発しないケースを最低7%は持っていて、これは地震発生直前に措ける鳥の移動でも、その地域から完全に鳥がいなくなることがない事例と相似している。

こうした自然の在り様は何を物語っているのだろうか。

人類はその明確な答えを持たないが、こうした在り様から見えてくるものは、一方で死滅をもたらす要因は、また可能性であると言う事なのかも知れない。

癌発生の要因として、特殊なウィルス性癌以外では、その細胞に措ける遺伝子上の障害が、癌発生の要因となる事が分っている。

だがここで重要な点は障害を受けた組織の再構築や組織細胞の再増殖の過程であり、人体の組織や細胞は受精卵から始まって個体形成に至り、生殖活動を行い、そして「死」を迎えるまで、あらかじめ定められたプログラム(過程)に従い増殖、活動、そして死滅していく。

しかしこうしたプログラムから外れ、異常な増殖が長期に渡って継続されると、そこから癌細胞が発生するが、基本的に人類はもとより殆どの生物には始めから癌細胞の要因となるプログラムが存在していて、通常はこうしたプログラムが抑制されている、または死滅させられていると考えられ、その点から言えば、癌プログラムは過去の時代に措いて、生物的に必要性の有ったものか、またこれから先に必要となるものなのかも知れない可能性を持っている。

またこうした癌発生要因には、生物プログラムのような「内的要因」と、例えば環境などの「外的要因」が考えられているが、現在公表されている「外的要因」、喫煙と肺癌の関係、飲酒と肝臓癌などの関係については疫学調査による統計の結果であり、従って環境や食事、嗜好品、ましてや地球環境が癌に及ぼす影響に付いては、因果関係が確定しているものではない。

ゆえに疫学調査統計によって癌発生の要因とされているものも、本来は全く無関係なものが統計上の偶然によって、要因とされている場合も有り得る事になるが、癌と言う症状が自分自身を形成する人体細胞が変化して発症することを考えるなら、私見ではあるが、私は癌発生要因として「外的発生要因」よりも「内的発生要因」が重要ではないかと考える。

癌は人類だけの症状ではなく、全哺乳類、魚類、両生類、植物からハエに至るまで発症する病気であり、人類と同じような食習慣、嗜好品、薬物を摂取する習慣のない生物にも均等に現れることを鑑みても、癌はその一つの要因として、ウィルス感染者に措ける7%の非発症者のケースと、対比的同義に有るように思えるからである。

そして癌治療に関して、この2ヶ月近くあらゆる研究機関、自然療法の関係者から資料を集めたが、結果として決定的な治療方法を探すことはおろか、その予想すら立てられない現実に直面した。

外科的治療、科学療法、免疫療法、ホルモン療法、抗体医学、放射線治療、ホウ素中性子補足、投薬療法、温熱療法、笑いによる免疫療法、気による免疫療法、自然薬草の投薬療法、まじない、宇宙の高次元光照射療法と言うものまで意見を求めたが、どれも決定的な治療には至らない。

ごく初期の癌に付いては外科的治療の効果が一番大きいが、その後転移するか否かは発症組織や個人によって差が生じ、統計的な数値が整合せず、それもステージが進行した場合、近代医学療法ではどこまでが延命効果となったか不透明なまま、終末医療へと移行されるケースが多い。

従って近代医学上はステージが進行した癌に付いては、「近い間に死亡する」ことが想定された医療となるが、これに比して民間療法では正規の統計ではないが100人の内、5人前後が近代医学で予想された残存寿命を超えて生存したとする報告、更には完治したと言う者までが存在するが、これも余りにもその統計数値が少なすぎることから、「偶然」の域を出ておらず、もしかしたら癌発症でもウィルス感染時の非発症者と同じように、ステージが進行してもその内何パーセントかの人は、自然に癌を克服することになっているのかも知れない。

「消失する炎」・Ⅱに続く

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。