「元総理の涙」・2

2045年までには、確実に東南海地震と南海地震、その以前には東海地震と関東地震、それだけではなく日本海側にも地震は続発する恐れがある。

こうした中で、もし今回の東北の巨大地震による災害復興予算のあり方を誤るなら、今後日本は毎年少しずつ貧しくなりながら、最後は経済破綻と言う事になっていく。

政府はまだ行方不明者の確認が取れていないにも関わらず、早々に今回の東北の地震による被害額を、25兆円とする試算を発表したが、ここから見えるものはなし崩し的な消費税増税である。
海外の研究機関の試算によれば、最終的な今回の地震被害額は20兆円を超えておらず、ここに5兆円の日本政府による水増し試算がある様に思える。

勿論災害復旧費用は多く計上したに越したことは無いが、今の日本の状態で消費税の増税は大正時代の日本と同じ方法であり、これは余りにもリスクが高すぎる。

すなわち輪番制による停電が今後1年、ないし2年続くとすれば首都圏の生産は大幅に減少した上に、一般庶民は増税に苦しみ、しかも被災地域には特例措置を講じなければならないとしたら、そこにある現実は橋本龍太郎元総理の涙と同じものだ。

つまり消費税を増税して得られる税収以上の税収の減少が発生し、もし今回の地震災害復旧費用が20兆円とするなら、これを返済することができないまま、次に関東地震や東海地震の復旧費用が発生し、更にそうした借金が返済できないまま、次は東南海地震、南海地震の復旧費用の捻出が必要になっていく。

それゆえ20兆円の災害復旧予算が必要な場合は、これを5年計画で返済するものとして、年間金利も含めて5兆円を毎年返済する方法を考えるべきで、この場合はガソリン税や子供手当ての財源をこれに当て、本来なら消費税は暫定廃止した方が良いが、これだとリスクが上昇してしまうことから、少なくとも本年度は消費税を据え置き、次年度から1%ずつ5年計画で消費税を引き下げ、所得税や法人税の上昇と勘案しながら、総合的に消費税に頼らない税体系に変質させていくことが望まれる。

震災復興によって関東以外の地域はこれまでより景気は上向き、これによって今後電源不足が解消するまで続く、関東の景気低迷を関西や北陸、九州、四国がカバーし、その景気に加速を付けさせるために5年計画で消費税を下げて行き、断続的に景気浮揚策を取る。

そして所得税や法人税で消費税の不足分とそれを上まる税収を確保して行きながら、最終的に5年後には震災復興予算は償還する方式が望まれる。

日本の消費税では大企業のトップ10社には毎年合計で1兆600億円の還付が為されているが、一般消費者には還付がなく、大変不公平な税体系となっているばかりではなく、消費税が日本の総税収の20%しか占めていないと言う理論は詭弁でしかない。

消費税の内1%は地方税となるが、これを国税と区別した場合は20%だが、地方税収分も含めた日本に措ける税収総計に占める消費税の割合は実に24%を超えていて、これはイギリスよりも高い割合になる。

更に消費税は高額所得者ほど有利な制度で、日常消費資材や食品購入に必要な支出は、年収2000万円の人も年収が200万円の人も、それほど大きな差が無いことを考えるなら、消費税の本質は低所得者ほど高い割合となり、結果として貧富の差を増長させているだけである。

消費税を上げる、売り上げが落ち税収が減少する、更に消費税を上げていく・・・。
消費税は一種の麻薬のようなものだ。
経済の健全性を奪い、人の夢を少しずつ壊していく。

優遇されている高額所得者の所得税や法人税を上げ、消費税は段階的に下げて行き国内の消費に加速をつけ、更にこの機会に公務員の給与は平均で25%のカット、ボーナスは50%カット、議員報酬も地方議員を含めて50%カット、年金も平均で10%カットし、高齢者に傾いている福祉予算を若年層に再分配する。

震災の被災者を思うなら、政府もそうだが、日本国民もこうした覚悟があって初めて真剣に被災者のことを考えていると言えるのではないか。
唯きれい事を言って済まされる事態ではなく、これを機会に少しでも経済を健全にしておかねば、将来必ず訪れる災害に対して日本は方法を失うことになる。

大正から昭和初期の日本では震災に見舞われたにも関わらず、結局高額所得者や財閥を優遇するだけになり、また官僚機構や公務員の削減にも失敗し、その付けは全て大衆に降りかかり、その大衆の目を欺くために唱えられた軍事力の幻影がやがて戦争に繋がり、そして破綻した。

日本人は同じ過ちを繰り返してはならない。

[本文は2011年3月23日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。