「インフレーションに金融緩和は無いでしょう」

2022年現在、日本の岸田総理は「新資本主義」と言う、新たな経済思想を策定中とされるが、物理学上の法則にも観られるように、どんな秩序もそれが永遠に保証されたものではない以上、経済は思想ではなく、現れた現実にどう対処するかと言う事であり、この点で言うなら基本が「調整」である「政治」と同義と言える。

日本の通貨「円」の下落が止まらない。

4月1日現在では経済制裁を受けているロシアの通貨、ルーブルに対してまでも「円」は下落していて、エネルギーをロシアから供給されているヨーロッパ、東欧が徹底的な経済制裁を行えない「裏取引経済制裁」の中、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻、イエメンの内戦拡大などに起因する、需要に対する生産の遅滞から、世界的にインフレーションのコントロールが効かない状態に陥っている。

いつまでもぼんやりと金融緩和を継続している日本の経済政策は、もはや「新資本主義」等と言う、ぬるい事を言っていられる時期を過去に押しやっている。

アベノミクスは金融緩和ではなく、第二次世界大戦後の国際社会が、戦前の各国が政府と中央銀行が一体となった「財政ファイナンス」状態に陥り、そこからブロック経済、保護主義が台頭した事を戦争勃発の基礎要因と考え、中央銀行の政府からの独立状態を不文律とした、これの冒涜だった。

それをいとも簡単に無視したアベノミクスは、第二世界大戦前の名蔵相「高橋是清」も期限付きを条件に容認した例もあるが、しかし暗殺された事からその期限が守れず、財政ファイナンスが行き場を失い、日本の国富はどんどん価値を失っていき、太平洋戦争へ突入したのと同じ、悪しき流れだった。

金融緩和と財政ファイナンスは別次元のものであり、単純に通貨供給量を増やすのと、国家財政を政府が紙幣を印刷して運営するのとでは全く意味が違う。

前者は長期的には国富、物品の価値が紙幣の価値が変化しても大きく変わらないが、後者は自国の富が対外的に価値を失っていく事を示している。

経済制裁を受けているロシアのルーブルは確かに一時的に下落したが、基本的には資源国であり資源供給と言う「現実」が保持されている為、強気に出れば何でもできる。

しかし日本がやっていた「財政ファイナンス」は、こうした世界的な危機に措いては正当な評価を受け、今の段階でヨーロッパがルーブルを持っているのが得か、日本の円を持っているのが得かと考えたら、日本の円はルーブルに対して価値が低くなっていくのである。

それは日本の円が唯株価に支えられた「仮想」のものだからであり、資源と言う「現実」を持つルーブルの重さが危機に措いて発揮されてくるからに他ならない。

日本がこれまで施行してきた経済政策は金融緩和と呼称された実質「財政ファイナンス」だった。

何もない所にそれが在るように見せかけられただけだったものが、今その現実に拠って正体が見えてきたのである。

世界的に平和な時期なら財政ファイナンスも悪くないかも知れないが、この政策が現れてくる時は、その国家財政が破綻寸前だから現れてくるのであり、その先は必ずと言って良い程「戦争」や「紛争」と言うものが待っている。

現在の国際上の不穏さは、ある意味これまで戦後の国際的な会計ルールを、各国が無視し続けてきた、その結果とも言えるのであり、需要が存在しても、コロナ禍と国際紛争の結果発生してきた物資不足は、嫌が上でも基本経済へと帰っていく。

仮想経済ではこれを乗り切れない。

日本は輸出国だから円が安い事は有利に働くが、それも潤沢な物資供給が存在しての事で有り、物資が不足して世界的なインフレーションが発生してくると、輸出の利益より輸入コストの方が大きくなる。

そもそも物を作ろうにも部品材料が無ければ輸出どころの話ではなく、このような場合はインフレーション対策をしなければならない状態にも関わらず、日本の経済政策は、相変わらずの財政ファイナンスと言うデフレーション対策となっている。

「持続可能な経済発展、労働賃金の上昇」はあり得ない。

物資が不足して物が作れないのに労働力は必要ないからであり、当然収入が減った一般労働者は買い控えに走り、需要は細分化、低迷する。

アベノミクスでは達成できなかったインフレーションターゲットなど、あっと言うに振り切った外的要因のインフレーション、低迷し下落していく労働賃金の上昇は待っていてもやってこない。

日本経済に今必要なものは「思想」ではなく、「インフレーション」対策で有り、財政ファイナンスを金融緩和と称した「紙幣の無尽蔵印刷」は「インフレーション」を加速させ、国民の大半がそれで暮らしている「年金」は日々価値を下落させ、苦しくなっていく。

インフレーションは国民に取って増税と同じ事で有り、ここでやらねばならない事は「金融引き締め」である。

通貨供給量を減らして行かないと、物品価格は益々上昇し、通貨がどんどん紙くずに近づくだけだ・・・。

現状を観ていて何もしない政府や日本銀行こそ、この経済的混乱の元凶と言える。

いくら何でも、インフレーションに金融緩和はあり得ないでしょう・・・。

今一度「前川レポート」等の古典経済政策を省みるのも悪くないかも知れない。

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。