「日銀の子会社化と民主主義」

これは日本と日本国民に取っては「悲劇」或いは、「大災害」と言うべき存在と言える。

2022年5月9日、安倍元総理が大分で発言した「日本銀行は政府の子会社だから・・・・」の文言は、この政治家が明確に政治や歴史、経済の基礎的な知識すら持ち得ていない事を露呈する結果となった。

前々のFRB(合衆国連邦準備機構)議長ベン・バーナンキが推奨したMMT理論、ヘリコプターマネー理論は、理論としては成立しても、それが現実に適合するかと言えば、今の国際経済に鑑みれば結果が出ている。

麻薬と同じで適量使用ならば痛みを緩和できるが、これを適量で止められるケースは皆無に近い。

結果「他に方法がない」と言いながらズルズル使い続け、量も多くなって、気が付かない内にその人間が崩壊してしまう図式に全く同じである。

第一次世界大戦後、多くの国は国家財政と中央銀行が一体となった形態、借金した者と紙幣を発行する者が同一人物となる、「財政ファイナンス」状態になり、このMMT型式はどうしても危機的財政状態に措ける非常手段でしかないので、長期に継続すると発行紙幣の権威や信用が失われ易く、為に経済はどうしても保護主義的になっていく。

その結果世界経済はブロック経済的になって、経済を巡って国際的な壁が発生する可能性が高くなる。

近代から現代への移行期、日本では日露戦争戦費ファイナンスを税制で補う事が難しくなり、世界恐慌と関東大震災などの影響も加わり、一時的に紙幣が不足した時期が出てきた。

その折、名蔵相と名高い「高橋是清」は期限付きで政府と中央銀行が一体化する形態を採用したが、この期限は226事件に拠って「高橋是清」が暗殺された為、収束させる時期を失い経済は混乱し、「戦争」でしか解決が付かない状態に陥った。

日本が敗戦した「太平洋戦争」の最も大きな原因はここにある。

また政府と中央銀行が一体となる財政ファイナンスは鎖国経済的な要素を求めて行く為に、他国と経済的な壁を生じせしめ、この事が国家間の対立を深める事から、第二次世界大戦後の国際秩序は中央銀行の政府からの独立性を重要視してきた。

日本はバブル経済崩壊後、民間企業を税金で救済する方式を採用したが、この時の理由は「仕方ないじゃないか」だった。

ここから健全な税制概念が崩壊し、ついでに国家の借金は借金ではないと言う、枝葉理論をリベートで擁護したような考え方が発生して来た。

そしてアメリカで発生したリーマンショックの対処法は、先鞭となってなっていた日本のやり方を模倣して行き、ここで従来の税制秩序、モラルが崩壊した上に、国家の借金は借金じゃないと言う考え方の台頭で国際秩序は完全に第二次世界大戦前の様相に逆戻りしていた。

この意味では日本が先鞭を切ったバブル経済崩壊の対処策が、基本的には今の国際社会のぎくしゃくした関係を招聘(しょうへい)した発端であるとも言え、現状のロシアに拠るウクライナ侵攻の「遠雷」とも言えるのである。

日本のアベノミクスは、新しい経済理論ではなく、経済の沈降が20年以上も続く日本経済に対して、期限付きで世界が許容した非常事態、一時的なグレーの許容だった。

それゆえ第二次安倍政権発足時、有頂天になっていた当時の安倍総理に対し、ドイツのメリケル首相は「あの方は本当に理解されているのかしら」と呟くのである。

政府と紙幣を印刷する中央銀行が一体化する「財政ファイナンス」は過去の歴史上、どの国家も何度も経験し、その結果は全て大混乱や「民族紛争」「戦争」に繋がっている。

財政ファイナンス状態に反対した、前の日銀総裁「白川方明」(しらかわ・まさあき)を解任し、政府の太鼓持ちだった「黒田東彦」(くろだ・はるひこ)を日本銀行総裁に選任した時点から、日本の財政ファイナンス化は始まっていた。

「日本銀行は政府の子会社・・・」と発言する者は、ロシアのプーチン大統領と同じように、第二世界大戦後世界が努力して築いてきた秩序に破壊をもたらす者、国際平和に挑戦するテロリストに同じと言える。

また2022年5月10日、東京都内で行われたパーティで、「細田博之」衆議院議長は「議員の数を増やしても罰は当たらない」と発言したが、民主主義は数ではなく、「質」の問題で有り、例え独裁政権でも「民主主義」は存在し得る。

無能な者が集まって議会ごっこをしている状態で、それは確かに国会議員に取っては罰は当たらないが、罰が当たっているのは国民ではないか・・・。

組織や自己保全しか考えず、選挙対策と言う理由が簡単に法案成立を妨げる、或いは訳の分からないばらまき法案を成立させる国会に措いて、議員の数が増えれば増えるほど、罰は国民が受けているようなものである。

数で議論する事が民主主義では無く、議論を通して国民に、その法案の本質を理解せしめるのが議会制民主主義と言うものであり、数をして力、それを民主主義と錯誤する者を「専横主義」と言う。

「日本銀行は政府の子会社」と言う者や、大した仕事もせず知恵もなく、そして月額歳費60万円、70万円は安いから、数を増やしても良いと言う、国家、国民に対する背任が常態化している者こそ、まずは削減対象になって欲しいものである。

両者とも国家、国民に対する背任者であり、国際秩序、民主主義に愚かさで抗う者である。

日本の恥、いや世界の恥だ・・・。

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。