「消費者と客」

Custmers who do not benefit the company・・・

これは2021年、株式会社「楽天」が発行するポイントに関する改定を発表したおり、「三木谷浩史」代表が語った言葉の中に出てきた一節だが、日本語に訳するなら「会社の利益にならない者」と言う事になろうか・・・。

そもそも日本国内での会見で、何故全文英語だったのか、その必要性が疑われるシチュエーションだったが、もしかしたら三木谷代表は、日本語での会見だと、本人の自尊心が保てなかったのかも知れない。

連結赤字で、従来の楽天ポイント付与率を半分に下げる、或いはポイント付与そのものを廃止する事を発表する際、日本語だと敗北感が出てしまうが、これを一般的には日本語よりは理解者が少ない英語にする事で、どうにか胸を張れていた、堂々とし乍もどこかで痛々しい三木谷代表だった。

ここでは楽天ポイント改悪の発表だったにも関わらず、英語での会見だった為、その改悪のイメージは急激に拡散しなかった。

それゆえ、この会見を聞いていてポイント制度が改悪になった感覚を持つ者は少なく、「ああ、楽天もモバイル事業で赤字か、まあ仕方ないわな」の印象が大半だっただろう。

しかし、現実には付与ポイント率の縮小で、尚且つ冒頭の「Custmers who do not benefit the company」な訳である。

正直なところ、私はポイント付与率の改悪より、むしろ冒頭の言葉に、ある種の衝撃と言うか、「やっぱりな」と言う納得感を覚えたものだった。

三木谷代表は確かに偉大な経営者だが、「何か大切なものが欠けている」

この以前にも楽天市場に参入している業者に不当な圧力をかけ、その負担をして楽天が利益を得るような仕組みが垣間見えたものだったが、どうもこの経営者は「信用」と「利益」の関係が解っていないような気がする。

大衆が楽天の利益のために存在していると思っているのかも知れない。

古来より「徳は得なり」と言われているが、徳=利ではなく、この両者は2つで1セットのものと言う事ができる。

徳と言う終着駅(目標)が有り、そこまで運んでくれる電車が「利」となるが、これは「=」の関係ではなく、反対に「利」と言う終着駅(目的)まで乗せて行ってくれるのが「徳」になるが、これも「徳」単体では存在し得ない。

Custmers who do not benefit the company」では、消費者と言う一般大衆は楽天の利益の為に存在し、楽天に利益をもたらさない者は客ではないと言う宣言をしたようなもので、これでは一般消費者は養殖されているウナギかハマチくらいにしか見られていない事になる。

そもそも商いや取引とは、需要と供給の接点で有り、ここではウィンウィンか、それを超えたものに見える物に対して、消費者は購買を決意するのであり、ここで重要なものはそのサービスが安定して供給されてこその継続契約となる。

つまり形骸、形而上だけでも「徳」となるものが見えないと、そのサービスを需要する者の信頼は失われる。

このまずさを英語で乗り切ろうとした三木谷代表の自尊心の高さ、言い換えれば一般大衆を餌としか見ていない在り様は、その後2020年の0円モバイルの実質有料化で具現する。

「本当にずっと無料なんですか」

「はい、そうです。ずっと無料です」

2021年の段階でそう回答していた楽天モバイル、カスタマーセンターのお姉さんは、2020年5月では一体どのような罵詈雑言を受けている事だろう。

「話が違うやんけ」

「申し訳ございません」

「一体どうしてくれるんや」

なら、まだ良いが・・・・。

「話が違うやんけ」

「嫌なら楽天モバイルを使わないでください」

「何だと、それが客に対する言葉か」

「上からの指示ですので、どうぞご勝手に」

2021年の三木谷代表の会見からは、「嫌なら使うな」のニュアンスが感じられるが、本当にそんな強気が通じるかは微妙かも知れない。

元々楽天の0円モバイル契約をした人は、それが0円だったから契約している人がほとんどだった。

総務省からプラチナバンドの許認可を得ていない楽天モバイルは、屋内での通信速度、通話が安定しなかったし、通話中も途切れる事が多かった。

iPhoneでは着信履歴すら残らずに電話が繋がらない状態で、その説明や改善案なども長く示されない状態だった。

しかしこれは0円だからこそ許されていたのであり、多くの契約者はしっかり繋がる他のスマホ契約を維持しながら楽天モバイルを使っていた。

全て0円だからこそ妥協できたのであり、これが有料化すると、せっかく0円で広げたモバイル契約者が、いつかの時点では大幅に失われる事は確実で、楽天がプラチナバンドを取得した時点で更なる値上げをするのではないか、そう言った将来に対する不安を払拭できない。

と言うより、これまでの楽天を見ていると、プラチナバンドを取得した時点での再値上げは確実、そうなれば競合他社との格差は無くなり、楽天の顧客に対する無礼さだけが、他社より優っていると言う事態にもなりかねない。

唯金だけが儲かれば良いと言うのでは淋しいものだし、下心も透けて見えてしまう。

三木谷代表には「徳」と「利」の関係を今一度考えてみる事をお勧めする。

日本の大手企業、とりわけIT企業と言われる業種にはどうもこの「徳」と「利」の関係が欠けている者が多いような気がする。

どれだけ技術が進もうが、どれだけ社会が変わろうが、この世界は「人」で成り立っている。

「人」を蔑ろにする者は久しからずや・・・。

consumer(コンシューマ)「消費者」はイギリス産業革命時、資本主義から見た場合の大衆で有り、ここでは財や物を消費する者と言う、如何にも砂糖に群がる蟻、若しくは餓鬼のようにただ貪る者のような在り様だが、これと日本の「客」の思想は同義ではない。

「客」と「consumer」は何かを提供する側に相対する存在と言う点、その英語の翻訳上では同意だが、「consumer」には消極的侮蔑が存在し、「客」には薄くても尊厳が存在する。

この違いを深く考えてみて頂ければ良いのだが・・・。

consumer」「消費者」の本来の意味は消極的な侮蔑用語と言える。

それゆえ大衆は「consumer」「消費者」と自身を名乗ったり概念した時点で、自分で自分を貶める事になる。

などと言っても、もはや詮無き時代だったかな・・・()

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。