「何となく嫌な予感が」

生意気な若者だった私にも親しく接してくれた「亀井義次」(かめい・よしつぐ・故人)氏と生前電話で話をさせて頂いた時、「大王イカ」の話をしてくれた事が有った。
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氏は「日本地震予知クラブ」の創始者メンバーの中心的人物で、民間地震研究者としては唯一「日本地震学会」の会員でも有ったが、その亀井氏が「大王イカが今ひとつ解らない」と言っていた。
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大きな地震が起こる1週間前から4、5日前、長さが5m前後の大王イカが目撃された事例が出てくるのだが、その場所は大方火力発電所の付近で、為に海水温の上昇による現象なのか地震の前兆として現れるのか、或いは単なる偶然なのかがどうしても解らない・・・。
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唯、単なる偶然や生息形態が全く解っていない大王イカの習性と言う事だけでは少し収まり切らないような気がする・・・。
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そんな話をされていた。
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2014年、今年の正月の事だが、1月2日には石川県の海岸で小さいが「リュウグウノツカイ」と言う深海魚が砂浜に打ち上げられ、同4日には富山県氷見(とやまけん・ひみ)漁港に体長4mを超える大王イカが、死んだ状態で捕獲され水揚げされた。
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そして1月8日、やはり定置網に入っていた体長4mの大王イカのメスが新潟県白瀬で捕獲され、こちらは生きた状態だったが、こうした時期に日本海側で大王イカが捕獲される事は大変珍しく、その生態の未知なる事を言えば深海魚のリュウグウノツカイが打ち上げられたと同等、若しくはそれ以上の珍しい現象と言える。
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また2014年1月1日、同4日、5日、8日、9日9時35分には富山県西部と石川県北部地域で「空振」(くうしん)現象が多発している。
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その内1月8日午後4時30頃の「空振」には地震に伴う破砕音のような遠くから近付いて来る感じの音が聞こえたと言う報告も混じっている。
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古来よりリュウグウノツカイなどの深海魚が打ち上げられる場合、または大王イカなどの極めて珍しい魚介類が打ち上げられる場合、人々はそこに「天変地異」を恐れた。
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即ち大地震を恐れたのだが、過去の統計ではリュウグウノツカイが打ち上げられてから地震が発生するまでは平均で1ヶ月以内となっていて、これが大王イカともなれば平均で5日以内に地震が発生するとされているが、これらはいずれもその目撃事例の付近が震源地近くとなっている。
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だがここに一つ気にかかる点がある。
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それは昨年「神在月」付近から発生している出雲の気象的な現象である。
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いずれも気象学的にはそう珍しいと言う訳ではないが、暈(太陽に傘がかかる現象)や直線虹、逆さ虹が重なる事は珍しく、事に直線虹や逆さ虹は震源となる地点から比較的遠く離れた地域で確認されやすい上、島根県庁では音波時計が全て同じ時間で止まっていた事例が発生している。
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時計が止まったなどの異常は地震の前兆現象として最も報告の多い事例と言え、この事と先の直線虹や逆さ虹の事例が連続関係に有って、それに北陸の大王イカが捕獲される現象が連続した関係に有るとしたら、佐渡島近海はここ1ヶ月ほど厳重な注意が必要になる。
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またこうした日本海側の異常現象が今後6ヶ月ほど各地で続き、しかも日本海側で地震が発生しない場合、大きな地震の震源は太平洋側となる可能性が高い。
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2007年の能登半島地震や中越沖地震の後も日本海側では魚介類や植物、気象的な高温状況が続き、その3年後には日本海溝地震(東日本大地震)が発生した。
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この事を鑑みるなら能登半島地震や中越沖地震は広義では日本海溝地震の「前震」だったと言う事が出来、厳密に言えば阪神淡路大地震もこれに類すると考えられる。
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従って太平洋側で特段の異常現象が確認されなくても日本海側で各種の異常現象が続きながら日本海側で震度5以上の地震が発生しない場合、太平洋側で震度6以上の地震が発生する公算が強くなり、こうした異常現象が始まってから地震が発生するまでの期間が長ければ長いほど地震の規模は大きくなると考えなければならないだろう。
昨年末の出雲の気象現象とリュウグウノツカイ、大王イカの捕獲などの現象は、これで終われば偶然と言う事も出来るかも知れない。
だが今後も各地でちょっと変わった事が続く場合、東北南部から関東東海、東南海に及ぶ巨大地震を警戒する必要が有り、その何となく嫌な感じが始まってきているような気がする。
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更に北陸で続く「空振」は地震のような振動だが、窓ガラスなどは揺れても地面が揺れる事は無く、この現象は離れた地域の噴火活動に起因している。
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それゆえ桜島の噴火活動の活発化がまず疑われ、その次には中部日本に存在するいずれかの火山噴火を警戒する必要が有る。
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我々は日本海溝地震(東日本大地震)を本震と考えているかも知れないが、かの地震にしてもそれ以後に更に大きな地震が発生した場合は「前震」となる事を憶えておかねばならないだろう。
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ちなみに鹿島大明神は剣術の神として名高いが、その一方で地中に棲み地震を発生させると言われている大鯰を押さえ付けている「要石」(かなめいし)を守護する神としても知られていて、過去の伝承では出雲の「神在月」に出かけている旧暦の10月に地震が発生し、それは鹿島大明神が出雲へ出かけていた為に起こったとされているものが有る。
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この要石は地中に深く刺さった杭で、実際には鯰の頭と尻尾に打ち込まれていると言われている。
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そして鹿島神宮の所在地は茨城県鹿島市で有る事を考えるなら、当地は蝦夷(えみし)を抑える地理的要衝と言うだけではなく、過去にも多くの地震を経験していると言う背景が有ったのではないかと考えられる。
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神在月付近に発生した出雲の珍しい気象現象、それに東日本大震災と鹿島大明神との地理的関係、大王イカやリュウグウノツカイなどが、それぞれバラバラではあり乍、何かどこかで細い糸が繋がっているような気がしないだろうか・・・。
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珍しい大王イカが捕獲されたと言う事で、かつて大恩ある師の言葉を思い出したが、正月早々感じの良くない話だったやも知れない。
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多分私の考え過ぎだろう・・・。
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[本文は2014年1月9日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]
T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。