「消費税マインド」

デフレーションを通貨供給量だけで見ていると正確な理解には遠い。
需要と供給と言うバランスは通貨と物品相互が同じ概念を持っている。

 

従って例えば消費税増税前だからと言って、2014年4月から消費税が増税された後に買うより安く物が買える、購入予定品目が安くなっているとは限らない。

 

消費税増税と言う消費者マインドを下げる要因は、本来長期的経済活動の面から見れば不利な展開になるが、この増税前には税金の安い間に物を買っておこうと言う消費者心理が働き、こうした消費者に対して消費税導入直後の時代のメーカーは対応に戸惑ったが、幾度か増税を繰り返す中で消費税増税に伴う駆け込み需要を一つの商機と考えるようになってきた。

 

そして消費税が増税になる前の需要を当てにするようになってきたのだが、こうした需要は基本的に未来の需要の先食いになる事から、良識有る生産者は将来の売り上げを確保しようと無理をしない展開を心がける事になる。

 

しかし需要が縮小状態に有って、生産が飽和していると、先の事は考えずに今販売しておかないと自身の良識が他者の利に繋がる事から、ここに前後の見境の無い販売合戦が始まり、こうした商戦に煽られた消費者は切迫観念から、今消費しなければ損をすると言う感覚に陥ってしまう。

 

消費税増税を使った大規模な消費者に対するマインドコントロールにも似たりだが、この状況では僅かな期間だが需要が供給を上回り、実際には商品物品の価格は上昇、物によっては高騰している状態になっていて、我々は5%の消費税が4月には8%になる事から、今買えば増税分の3%を免れた事のように錯誤してしまうが、物によっては高い物を買っている場合も出てくるのである。

 

現実には短期に集中する需要を見越して生産者は物を揃え、しかも消費税増税前と言う政府が与えてくれた利点だけで物が売れる状態は、全く値引きが無くても消費者には割安感が有り、刹那的では有るが販売する側としては一つの商機、利益を上げるチャンスとなり、需要が供給を追い越した状態は消費者よりもそれを提供する側が有利な立場にある。

 

それゆえ4月を目前に控えた現在、消費者は増税を隠れ蓑にした販売側に対して不利な状態、或いは気が付かない間に高い買い物をしている可能性が高いのである。

 

消費税増税前の駆け込み需要が終わると、一転今度は全く物が売れない状態になり、例えばマンションなどは今後安倍政権が掲げる経済政策の失敗によって、現在の70%ほどにまで価格が下落する恐れが有り、その他自動車なども消費税増税後は販売台数が減少し、これによって値引きはできなくても下取り車が有る場合、ここに値引き価格を添加して実質値引きされた価格で販売されるケースも出てくる。

 

物の価値はそれを必要とする人間が多くなると価値が高くなり、それを必要とする人間が少ないと下落する。
今物を求める人間が多い状態は物の価値が上がっている状態で、しかもこれは政府の増税と言う、後に経済マインドを下げる要因によって発生している。

 

4月からは確実に経済が落ち込むのである。

 

この事を考えるなら、わざわざ忙しそうにして売れて売れて困っていますと言うメーカーや販売会社に群がり、値引き幅の少ない物を買うよりは、消費マインドが下がって売れなくて困っている状態のメーカーや販売会社から物を買えば、場合によっては消費税ぐらいではない節約が出来る訳である。

 

消費税は今後段階を追って上げられて行く方向に有り、今年の11月には来年の消費税増税の判断が為されるだろうが、一般消費者や中小企業を苦しめる増税は、駆け込み需要と言う大企業に取っては有利な展開が存在する為に、大企業はおしなべて消費税増税は歓迎すると言う側面を持つ。

 

しかしこれは本質的には需要ではなく「反動」の一種であり、こうした反動のマイナス面は良い方向の反動の数倍厳しい状況を後にもたらす。
貧しい者が祭りで大盤振る舞いし、明日から食べる米がなくなるにも等しい在り様で、少子高齢化の日本社会では需要は急激な右肩下がりになっている。

 

若い世代は結婚したり子供を育てたり、或いは家を新築、マンションを購入する、または大型家電を購入するなどして蓄財と生活で大きな消費をするが、高齢社会ではこれらの消費が既に終わっていて大型消費が存在しない。

 

加えてこうした高齢者の年金や医療費などの社会保障費用が増加し、実に日本人の所得に占める税負担率は40%を越えてしまっている。

 

この状態では少ない若い世代が夢を描けず、結果として介護と言う形態を含めるなら、裕福な高齢者のおこぼれに与って生活する者が増加、今や日本人の半分が政府支出金で食べている状態と言っても過言ではなく、あらゆる物の需要低下は既に限界を通り過ぎているからこそ、増税前の駆け込み需要にすがるメーカーや販売会社の姿が在る。

 

この意味でデフレーションの脱却など夢のまた夢、安倍政権の打ち出した祭り経済政策は僅か半年で終焉を迎えた。
輸出黒字は輸入超過で簡単に相殺されただけに留まらず赤字になり、国民の平均賃金も改善どころか下落した。

 

つまりは労働力の超過であると言う事で有り、これが意味するところは需要の下落が政府が印刷する紙幣の速度を簡単に追い越していると言う事である。

 

日本と言う一つの国家政策だけで日本経済は回復しない。
むしろ日本経済は外的要因によって簡単に国内政策など吹っ飛ぶ状態に有り、少子高齢化対策と地方も含めた公務員数の削減、議員代議士の削減、年金、医療制度改革を避けた政策には絶望しか道が残されていない。

 

安倍政権の経済政策は初めから全てが詐欺だったが、ついにそれが露呈してきた。

 

民主党野田政権時の消費税増税法案成立の付帯事項、「時の経済状況を鑑みて時期を決定する」と言う部分を偽り、そのように見せかけた安倍政権にせめても恥ずかしいと言う気持ちが有るなら、4月からの消費税増税は撤回すべきだろう。

 

そして民衆は消費税増税前の駆け込み需要と言うマインドコントロールに騙されてはいけない。
消費税増税を山にして、この駆け込み需要で利益を出し、次の増税と言う山まで何とかしのぐ形の経済、或いは企業の売り上げ目的の税制優遇措置を使った経済の在り様を許してはならない。

 

この形態は良い言葉で言えば「扇動型経済」、悪く言えば政府と経済界が税制で癒着した「詐欺経済」で有り、結果はみんなして海に飛び込むネズミに似たりである。
[本文は2014年2月21日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。