「3月11日に思う」

物質の発生と崩壊、また或る生命体の生成と崩壊、大系の集合と分散状況は、一般的に関数座標上の正比例線である直線をイメージし易いが、現実には全て曲線を描き、その形はマイナス側に現れる2乗反比例曲線がプラス座標系に移動したような形、釣鐘状を形成している。

したがってこの世界の事象は、初めと終わりが1の1乗より大きな数字の大きな乗数になり、そのピークは1の1乗より小さな数字の小さな乗数の進行となるが、人間はこうした乗数変化の概念を描きにくく、変化を直線でイメージする、或いは過去の一点で停止した状態、軸に対して平行線を描くと理想と現実が乖離する。

日本の人口動態はもはや平均で27・6144%の確率で65才以上の年齢層が人口比率を占め、地方の端末地域の人口動態は既に60%以上が70歳以上の人口で占められ、こうした高齢者扶養の為の介護、年金、医療、地域サービス費用は国と地方の予算の50%近くを占める。

更に地域起こしなども厳密には少子高齢化対策と考えるなら、こうした地方行政はバケツに入った水が右に傾いたか左に傾いたかで総量が変わらない、つまりは或る地域で地域起こしが成立したとしても、その分が他で減少する事から総体は変化せず、総体そのものが逆2乗反比例曲線で下落している。

2000年に入って地震に被災した地域、能登半島、新潟県中越、東北地方の経済は現実には地震が発生しなければ経済的には破綻状況に有った。

そしてその後も急激に少子高齢化が進み、過疎化は拍車がかかっていたはずである。
しかし、ここに地震が発生した事から、急激な過疎化と地震と言うマイナスの乗数要因が発生し、一時的にプラス換算が発生する。

これはどう言う意味かと言えば、例えば不倫関係を続けていた女性が男性の子供を身ごもった時、彼女はこの子供を堕胎するか否かで迷うが、そこへ大きな地震が来て非常事態が発生すると、彼女の堕胎の決断は一挙に早まり、尚且つ正統性さへ発生してくるのである。

これがマイナスの乗数要因である。

つまり望まぬ子供を身ごもった女性は、その事により常に非常事態の状況に陥った。
しかしそこへ彼女が持つ非常事態など比較にならない大地震と言う非常事態が発生し、この事から彼女の以前の非常事態は緩和され、そしてその決断には非常事態と言う理由の正当性が発生してくる。

そして急激に収縮していく社会では、同じように会社を経営している者、行政の予算、人々の暮らしでも、程度の差は有れ皆が強弱の付いた非常事態に有った事から、災害がこれらを緩和、或いは麻痺させて行き、一時的にマイナスの状況に有った者がプラスマイナス0の状態に置かれ、その上で日本国だけではなく世界からも支援の手が差し伸べられる訳である。

ここでは希望される復興の目安が当然高く設定されるが、現実には日本の総量は変わらず少子高齢化の抑制策も全く無い事から、既存でマイナスに有ったところが一時的に0の状態、或いはプラスの状態になったとしても、それは他のマイナスの寄せ集めであり、結果として未来の先食いにしかならない。

能登半島は各地でそれらしい建物や道路が整備されたが、間違いなく高齢化が頂点付近に達し経済も人の心も破綻、その実情は補助金や交付金による運営、乞食経済になった。
新潟県中越も同じであり、これをやがて東北も後を追う形になるだろう。

震災を風化させないと言う言葉が有るが、これは生き残った者の傲慢である。
人は元々いつかは死に、それが交通事故や病気の場合は人に甘えられるだろうか。
いつまでも震災を盾に自助努力を怠ってはならない。

早く震災を忘れて自身の生活を立て直し、震災と言う非常事態に甘えた状態から立ち上がらねば能登半島と同じ道を辿る。

またこうした震災復興の中でその最も大きな足かせになっている放射能汚染問題だが、安倍総理は完全にコントロールできていると豪語したが、その実ヨーロッパやアジアでは日本製品の輸入規制が継続され、彼の言葉は世界的に信頼されていない事が明白な今、政府が取り組むべき最も重要な課題は憲法解釈や秘密保護法案ではない。

ウクライナ情勢ではロシアのプーチン大統領がロシア軍を派遣しながら、「あれは自警団だ」と言った、こうしたことの意味を知るべきだ。
大きな者は事を小さく見せようとし、小さな者は何でも大きく見せたがる。

韓国や中国と子供みたいな言い争いをしているからこそ、自国防衛が集団的自衛権に発展してしまうのだ。

日本の今はまさに「四面楚歌」である。
そして安倍総理がまた虚ろな目をして病気になる日は近い。
このままでは日本国中が特殊な事情を抱えた民衆、状況的に非常事態にある民衆を増加させ、やがて来る災害に寄りかかり、日本は加速を付けて瓦解していく事になる。

人間が受ける影響に措いて、影響とは一種の「依存」である。
良い影響はそれが長く続かないから依存は少ないが、悪い状況は比較的続き易く、為に気付かない間にどこかで依存していく。

悪い状況に対しては集中してこれに当たらねばならず、この過程でそれまでの通常が全て非常事態体勢になり、これはつまり悪い状況を中心とした体制になる事を意味し、いつしかそれを根拠にあらゆる事を考えてしまうようになって行くのであり、これは病気も会社中心体質、虚無感でも同じである。

そしてマイナスの乗数要因は堕胎される子供の話に立ち返れば分かるが、結果の早まりであり、その当初にマイナスの状況に在った者は災害で一時的に少しのプラス、つまりは0になったとしても、それが終われば必ず堕ちていく。

東北の経済、過疎化は10年後にはどうなっていただろうか、震災が発生しなければ発展していただろうか、それは違う。
東北も能登も、また他の災害で被災した地域、人が災害によって今被っている現状は5年後、10年後、或いは30年後が今に訪れただけである。

この事を心に刻んで、いつまでも過去にすがるのではなく、これからこの国に訪れるだろう現実を見つめ、死者の為に頑張るのではなく、地域の為に頑張るのでもない。
自分と自分の家族が生きて行く為にどうするかを、誰か人に頼るのではなく、自分で切り開いて行って頂きたい。

日本海溝地震発生から3年目の節目を迎えるに当たり、今は亡き人々に心より哀悼の意を表し、黙祷を捧げる。

[本文は2014年3月10日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。