「アンチモラル・ショートストーリー」

「姐さん、よーけ人が来とりますなー」
「叉市、久しぶりで腕がなるやないけ」
「こないぎょうさん人が集まっとるのは久しぶりやで」
「それにしても自眠党にも女の議員やら大臣もおるのに誰も騒がんし、セクハラを受けた女も一緒になって議会の幕引きに賛成とは、よーけ解らん連中でんな」

 

「おのれは本当にアホやのー、みんな人間の前に党、女の前に党ちゅう事やないけ」
「セクハラ、セクハラちゅーて騒ぎながら、あいつ等は遠の昔に女を棄てとるちゅー事や」
「なるほど、そう言うことでっか・・・」
「せや、それに比べたらうちはどうや、今日のぶるーのスーツは清純そのものやろ」

 

「姐さんは今日も綺麗でんがな」
「叉市、お前は言葉が軽い」
「どや、そない言うなら今夜わての相手でもしてもらおうか」
「いや、それはちょっと・・・・」
「せやろ、女を褒める時はそんなら今夜一緒に寝てもらおうかゆーたら、分かりました言うくらいの覚悟しとらんと褒めたらあかん」
「せやからお前の言葉は迫力がないんや」
「へっ、すんまへん・・・」

 

或る地方議会で発生した議会内での女性議員に対するセクハラ野次問題、ネット社会はこれに過敏に反応し早速犯人追求ネット署名運動も始まったが、こうした世間のセクハラ盛り上がりに対し、当の議会はセクハラを受けた女性議員の会派も同調して、最大会派であり政権与党でもある自眠党の議案に賛成。

 

セクハラ発言は自眠党議員団の中から聞こえてきていたにも拘らず、野次を飛ばした自眠党議員一人が自首した時点で問題はこれで終わり、と言うような議案が出され可決成立した。

 

これに対して納得行かないのがネットで集まった人たちだった。
早速市民集会が開らかれ、そこには100名を超える人が集まり、セクハラ野次を言った議員を絶対許してはならない、徹底的に追求しなければならないと気勢を上げていた。

 

そしてどこからかこの話を聞きつけた女性問題と騒乱のプロである「斜民党」副党首の「福嶋水穂」と幹事長の「叉市政治」もまた集会に顔を出していたのである。

 

「姐さん、あれは民腫党の「連方」やないですか」
「なんやて、あの鳥ガラがまた性懲りも無くこんな所まで顔出しとるんかい」
「世も末やで・・・」

 

「まっええわ、それよりあの如何にも玄米しか食いませんゆーとるような、痩せた女がこの会の代表らしいが、その隣の金髪ブタは誰や・・・」

 

「何でもクリエーターにしてジャーナリスト、ネット情報通信のプロらしいでっせ」
「今回のネット署名もあの男が仕組んだらしいですねや」
「いけ好かんやっちゃのー、あの太り方は市民運動には向いとらん」
「第一セクハラ問題に男が顔を出してどないするつもりや」
「セクハラゆーたら痩せた女が言うから迫力があるんのとちゃうか」
「ブタはセクハラをはたらく方と決まっとる」

 

「姐さん、それをゆーたら別の問題が起こりまっせ」
「わては痩せた男が好きやねん」
「そう言えば民腫党の鳩川はんも痩せておりましたわな・・・」

 

「叉市、あの頃はほんまにあんじょうよう行っとたな」
「今夜はカラオケでも行こうか・・・」
「らぶイズおーばーを熱唱したるねん」
「・・・・・・」

 

「と言う事でして、今回これだけの人に集まって頂いた、この情熱をそれぞれが持ち帰り活動を更に発展して行こうではないですか」
「今日は斜民党の福嶋水穂副党首にもおいで頂いております」
「福嶋先生どうぞ・・・・・」

 

そのタイプではないジャーナリスト男性の案内で、思わず遠い日の感傷から我に返った福嶋副党首、僅かに滲んだ涙を指で拭うとマイクの前に立ち、聴衆達の前で胸を張った。

 

「今回のセクハラ発言は決して許してはなりません」
「女性の地位はまだまだ低く、社会的に虐げられています」
「この問題を更に大きく発展させ、社会に浸透させる活動を続けて行きましょう」

 

「女性の地位向上、原発反対、沖縄を返せ、こんな女性蔑視の日本にオリンピック開催の資格は有りません」
「最後まで闘って、闘って、闘い抜きましょう!」

 

ぶるーのスーツの袖が破れるのではないかと思えるほど高く掲げられた右手に、聴衆も皆拳を振り上げて熱狂し、更にここに至ってセクハラはどこかへ飛んでしまい、犯人追求、野次を飛ばした議員の辞職に主題が移ってしまっている事に誰も気が付かない。

 

だがこうして女性のセクハラ問題に男が入っているのと同じように、自眠党の女性代議士や女性大臣までセクハラ問題には歯切れが悪く、どちらかと言えば問題を大きくしたくないと言う側に回っている現実は、血と肉が闘っているようなもので、結果としていつかは立ち消えになる。

 

しかしこうして集まった組織は惜しい・・・。
次はどんな話題でこの集団を引きとめ、そして拡大していけば良いだろうか・・・。
肉感的な福嶋副党首とそれ以外は痩せた女達を眺めながら、その太った男は次の話題作りに思いを馳せていた・・・。

 

この記事は以前に2回ほど書いた「関西弁水穂ちゃんシリーズ」の3作目で、登場人物は全て架空、完全にフィクションですので、くれぐれもこの点ご了承ください。
[本文は2014年6月28日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。