「えー、そんな~」

日本で初めてMRI(核磁気共鳴映像)が導入されたのは1983年の事だが、この原理は原子核が回転する事によって発生するランダム方向の磁性にラジオ波を当て、それが帰ってくる速度によって生体組織の画像を撮影するもので、正確には「nuclear magnetic resonance」、NMRである。

しかし「核」と言う表現が、放射線を使っていないにも拘らず誤解を受け易いと言う事から、日本ではMRIと表記されるようになったが、今夜はこのMRIにまつわる少し不思議な話で涼を得て頂ければと思う・・・。

2000年頃、某国立大学病院の内科医師で準教授だった「鈴木芳雄」医師(仮名・当時43歳)は、患者として訪れた「山形清子」さん(仮名・当時69歳)を診察、血液検査の中で一つだけ癌を疑う数値が有った事から、9月13日に医局の「大田祐樹」医師(仮名・当時31歳)に肝臓のMRI検査を指示する。

そして得られた画像を見た鈴木準教授は「やはりな・・・」と呟いたが、その画像には2cm前後のエコーが7箇所に渡って点在し、間違いなく肝臓癌である事を示していた。
鈴木準教授は翌日、大田医師に山形さんの血液検査をもう一度行う事、また部位の特定の面から超音波診断と、CT検査も併せて行う事を指示する。

9月20日、再度病院を訪れた山形さんはCT検査と超音波診断、血液検査を受けるが、その結果を見た鈴木準教授は我が目を疑う、血液検査、CT検査、超音波診断のどれを見ても有ったはずの癌部位が見当たらなかったのである。

間違いなくステージ2、ステージ3の進行癌だったはずだが、それがどこにも見当たらず通常の健康な肝臓のデータしか出て来なかった。
入院の手続きが取られていた山形さんはその後、組織細胞検査、再度のMRI検査を受けるものの、全く異常は発見されずに1週間後に退院した。

この事態に大学病院は早々にMRI機材の点検を業者に依頼するが、特に機材の不都合は見当たらず、その後このMRIは正常に作動し、いつしか山形さんの事は忘れられて行った。

だが、この翌年の8月後半、「山田隆」さん(仮名・72歳)が大学病院を訪れ、定期健診を受診したおり、たまたま診察を行った鈴木準教授は、やはり血液検査のデータから肝臓機能の低下を疑い、9月に入ってからでも再度MRI検査を受けるように山田さんに話し、それから10日ほどして山田さんはもう一度大学病院を訪れる。

この時山田さんを担当したのは、医局の「片桐祐子」医師(仮名・当時33歳)だったが、MRI検査の画像から殆ど末期癌の状態で有る事を鈴木準教授に報告し、鈴木準教授もこれを確認し、山田さんとその家族にはすぐにも入院して検査、手術が必要と告げられた。

そして9月24日、入院した山田さんはまず血液検査と超音波診断、CT検査を受ける。
だが、検査データを受け取った片桐医師は思わず「そんな・・・」と呟いてしまう。
何とステージ4にも匹敵するMRIのエコーは完全に消えていたのである。

片桐医師はこの事を鈴木準教授に報告、データを受け取った鈴木準教授も驚くと思っていたら、意外にも鈴木準教授は「そうか、ご苦労さんだったね」と言い、組織細胞検査と血液検査、MRIの再検査を片桐医師に指示した。

結局山田さんのその後の検査からは癌の兆候は完全に消滅していて、山田さんは10月2日に退院した。

鈴木準教授は片桐医師からMRIのエコーが消えていた報告を受けたとき、真っ先に去年の同じ頃に起こった山形さんの事例を思い出していた。
更には何となく同じ事になるような、そんな気がどこかでしていて、片桐医師に指示を出した後、大学病院の過去のMRI検査記録を調べはじめていた。

山田さんのMRIの画像撮影日が9月13日だったのだ・・・。
やがて鈴木準教授は或る事に気が付く。
9月13日、午前11時から行ったMRI検査には必ず肝臓腫瘍のデータが出て、その後これが消滅する事を・・・・。

少なくとも9月13日が日曜日ではない平日の時は、ここ数年、毎年同じ日の同じ時間の検査が同じエコーを映し出している事に気が付いたのである。

肝臓は人体臓器の中で唯一再生機能を持つ臓器だ。
だから自然回復の可能性は勿論有り得る。
事実末期肝臓癌患者の肝臓腫瘍が1ヶ月ほどで無くなった事例や、時にはほんの2、3日で癌が消滅した事例も有る。

だからMRIの肝臓癌の映像が後には無くなる事だって有り得る。
しかし、数年間連続して9月13日の午前11時に撮影されたデータの肝臓癌患者が、全て自然回復する事は有り得ない。

鈴木準教授はそれから後、9月13日にはMRI検査を実施しないように心がけたと話していた・・・。

MRIは核の磁気共鳴だから、磁気の影響やラジオ波の影響を受ける事は考えられる。
が、9月13日の特定の時間だけ同じエコーを映し出すような磁場や電波を発生させる事は、現実的に無理かも知れない。

また技師が故意に同じものが写るようにしていると言う可能性も極めて困難だ。
だとしたら、一体この原因は何だったのだろうか。

人間はあらゆる事象の中で不自然な事が起こった場合、自分に最も都合の良い解釈を選択する。
MRIは存在しないものを映し出していたのだろうか、それともこのMRIで検査を受けると、その瞬間から肝臓癌が治癒して行くのだろうか・・・・。
一体誰が何の為に・・・・。

我々が病気になったり、それが治癒していく過程は一見物理的、西洋医学的な原理に基づいているように見えるが、その実中には想像も付かないような理由で病気になったり、それが完治している場合も有るのかも知れない・・・・。

[本文は2014年7月9日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。