「為替介入」

2022年9月14日黎夜、鈴木俊一財務大臣は、急激に下落して行く日本円の為替相場に対し、「あらゆる手段を講じる」と発言し、円下落に為替介入も辞さない事を示唆したが、少しお疲れか、若しくは何らかの勘違いをされていたようで、こうした発言の直後、為替介入の凡その時期も示さないし、そのような事は一切公にしないものと発言した。

が、これは流石に経済学部に在籍する学生でも知っている基礎的な知識の不足なので、鈴木財務大臣の発言を訂正、補足しておく。

為替相場で自国の通貨が下落してきた時、対策は大まかには2つ存在する。

一つは下落している要因対象通貨の自国保有分、または其の相対国家と協調して自国通貨に対し、値上がりしている通貨を市場に放出する方法、これを為替介入と言う。

もう一つは自国通貨の金利を上げる方法であり、こうした対策は追い詰められてからだと効果は薄いが、どちらかと言えば通貨金利を上げる方策より、市場の為替介入の方策が効果は薄い。

また株式市場、為替市場も「現在」を反映して動いていない。

両者とも「マインド」「予測気配」で動いている為、こうした市場は「現在」を「過去」に換算して「未来」を「今」に動いている。

市場に介入すると言う事は「マインド」を与える事であり、この意味では「雰囲気」を提供する事と言える為、財務省、日本銀行は「市場介入するかも知れんぞ」と言う事を、遠巻きに表現しなければ市場介入の効果は出なくなる。

秘密裏に行う市場介入は、為替相場介入効果を滅失させてしまう。

「市場介入は秘密裏に行うもの」とした鈴木財務大臣とは裏腹に、日本銀行は2022年9月14日の段階で、既に「レートチェック」を開始している。

「レートチェック」とは日本銀行が市場関係者に意見を聞くリサーチであり、こうした日本銀行の行動が漏れ伝わり、市場には近い内に為替介入が入りそうだと言う予測が働き、相場が動くを期待する、そう言う「ここだけの話」的な日本銀行の「噂流し」なのである。

勿論実際に相場の介入が在るかどうかは分からず、唯の噂に終わるかも知れないが、こうした「雰囲気」「マインド」の流布こそが市場介入効果なのである。

鈴木財務大臣は、財務大臣として基礎的な知識の有無が疑われる発言を、勢いよくやってしまった訳だが、弁舌強勢、趣旨優柔不断の岸田総理をはじめとして、日本の政治家に基礎知識を期待するのは酷だったか・・・。

また、基本的に日本円の下落は為替介入では改善しない。

一時的に円相場は少し上がるも、数日も持たない。

長らく無制限金融緩和をやっていると、為替市場介入と言う小手先でも、相当の覚悟を以てやっているかのように感じるかも知れないが、対外的には水鉄砲の玩具から、水が発射されたくらいの影響でしかない。

せっかく血を流しながらも、非常事態金融緩和から離脱を決めたアメリカ経済は、何が悲しくて金融緩和を続ける日本円を助けなければならないのか、むしろ日本こそこうした機会に金利を上げて頂きたい、そう思っているアメリカは、円相場に対して協調介入は在り得ない。

日本単独の為替介入になるばかりか、日本円が下落しているのはドルに対してだけではない。

無制限金融緩和から離脱しようとするアメリカ、ヨーロッパEUのユーロも金利を上げている為、日本円は全方向に対して下落している。

其の上にロシアのウクライナ侵攻、中国のコロナウィルス感染0政策が存在し、これらが改善されてくる日は近い。

爆発的に発生してくる需要、それに見合った世界的な生産体制の準備を考えるなら、それを緩やかに流していかなければ、各国ともインフレに潰されてしまう。

既に始まりつつある経済拡大、これに対応する政策を始めつつある世界市場、日本政府と日本銀行はこうした流れに逆行している為、円だけが沈んできているのであり、これを為替相場と言う小手先でかわす事は出来ず、ましてや財務大臣が、市場に分からない様に為替介入すると言った時には、日本経済の終焉を感じてしまう。

1970年代石油危機の折にも、物価高騰は政府の責任だと、民衆は政府をやり玉に挙げていたが、今から思えばあれは可哀そうだったなと言う思いがする。

2022年の政府に鑑みれば、遥かに勉強もしていたし、真剣に取り組んでいた。

あれは政府のせいではなく、国際情勢のせいだった。

今もこうした通貨下落、インフレは対外的要因に拠って、もたらされている事は変わらない。

しかし其の幾ばくかを政府、日本銀行の対面主義、虚栄心、愚かさが担保しているような在り様には腹が立つ。

 

本日は特に記事掲載の予定は無かったが、2022年9月14日、鈴木俊一財務大臣の記者会見を拝見し、余りの愚かさぶりに本稿を寄稿した。

未推敲ゆえ誤字脱字、文章の稚拙さにはご容赦頂きたい。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。