「希 望」 

山が在って、それを超えたら何かが見えるような気がした。
確かに少しだけ何かが見えたかも知れない。
が、それは一瞬にして消え去った。

そしてその先には更に高い山がそびえ、
もっと大きな何かが在るような気がして歩き続けるが、
行けども行けども在ったものが消え去り、
超えてきたはずの山は、なだらかな丘にすら及ばないものだった。

求める先には何も無ければ、得たものも何も無い。
我がものと思ったものは人のもので、
我が希望と思ったものは人の希望だった。
永遠と信じたものは夕日に浮かび、
力と信じたものは弱さだった。

残した禍根は過ぎ去って尚消えず、
やがて大きく膨らみ眼前に立ち塞がり、
光輝いたものはいつしか愁思となった。

愛も無ければ憎しみも、恨みも無い。
希望も絶望も、光も闇も無かった。
何も無かった・・・・。

存在(ある)は唯眼前のこの景色・・・・。

その景色すらも次の瞬間失われるやも知れない。
嬉しいかな、有り難きかな・・・・。

Oid passion〈T.asada〉

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。