「第二文化大革命」

かつて見た事もない異常な光景だった。

2022年10月22日配信された中国の共産党大会閉幕式での事、中国共産党としては異例の、3期連続国家主席在任が決定した「習近平」主席の隣に座っていた「胡錦涛」元国家主席が、突然背広姿の警備関係者と思しき男達に、まるで連行されるようにして退席させられたのだった。

其の折「胡錦涛」氏は何度も男たちの手を振りほどいたが、最後は無理やり席を立たされ、習近平国家主席に何かを言いながら、また更に隣に座っていた「李克強」氏の肩を叩き、そして連行されて行った。

今までに中国共産党大会の配信映像を何回か見てきたが、流石にこれは異様だった。

思い浮かんだのは文化大革命の首謀者「江青」女史の裁判、其の時「あれは革命ではない」と法廷で叫び、振り上げられた「江青」女史の拳の先に感じた「革命」と言う言葉、そう1980年以来の事だった。

中国共産党に限らず中国と言う国家は「対面」「面子」〈めんつ〉を大切にする国家であり、影では殴り合い、殺し合いをしていても、それを外にまで知れるような無様な事葉しない民族だった。

どんな頭に来ていても、笑顔で拍手して終わるのが中国共産党大会だったが、国家主席の隣に座る共産党重鎮が、皆の見ている前で連行されるなど在ってはならない事態だった。

見せしめとも受け取れ兼ねない習近平のこのやり方は、例え建前であっても今までは守られてきた慣例、そうした歴史的な形をも破壊する横暴さだった。

それまで共産主義と言うイデオロギー重視政策から、鄧小平の解放路線改革に拠って世界第二位の経済大国にまで昇りつめた中国、其の内部では経済的成功者の続出に伴い、相対的に権力が低下したように感じていた共産原理主義と言う思想主義も台頭してきていた。

体制主義、思想主義と言うのは経済的な成功者に対する「僻み」から始まるもので、経済が大きくなればなるほど其の対抗意識は大きくなる。

其の代表が「習近平」だった。

彼は余り頭が良くない、そのためインテリや経済原理の理論などが嫌いだった事から、自身を他に認めさせる方法として共産主義、独裁主義を強めて行った背景が在り、こうした傾向は1966年から始まり、1976年に毛沢東が死去して終わる「文化大革命」と構造は全く同じである。

基本的には資本主義と共産主義の戦いなのだが、厳密には資本主義と体制主義、原理主義との戦いと言える。

民衆の暮らしを考えるなら資本主義へ傾き、共産党と言う組織や思想へ傾くなら体制崇拝、独裁主義へと傾く。

毛沢東が生きている期間は体制第一主義で、国民の暮らしは顧みられなかった。

そして文化大革命言う原理主義、体制主義から鄧小平は国民の暮らしを顧みて、資本主義を導入と言う方針転換をして行った。

資本力に圧されて劣性を感じた共産主義は、経済第一主義から原理主義的方向を目指していくようになり、この急先鋒が習近平であり、鄧小平の解放改革路線を継承する勢力が「趙紫陽」長老、「江沢民」長老、「胡錦涛」元国家主席、「李克強」氏だった。

今回の出来事の前、10月に入って一時期、習近平主席が10日ほど姿を見せない時期が在った。

其の折、趙紫陽氏や江沢民氏、胡錦涛氏らに拠る習近平軟禁説と、クーデターの情報が世界を飛び交った。

0コロナ政策によって疲弊する中国人民、経済関係者たちがこれを歓迎した事もあって、情報の出所は怪しかったが、この情報は瞬く間に世界を駆け抜けたが、暫くして何事もなかったように、習近平国家主席が姿を現し、この情報は収束した。

この情報を出した所が似非〈えせ〉民主化運動組織だったようなのだが、どうもこの情報そのものが習近平サイドから流された形成が在り、今回の胡錦涛氏、李克強氏、などを追い落とすための策略だった可能性が在る。

クーデターを捏造して反対派を追い落とした感じがして、其の上で今回の粗暴な追い落としである。

以後の中国は「恐怖政治」「独裁全体主義政治」に陥る可能性が極めて高いと言わざるを得ない。

0コロナ政策に拠る経済的失速と貧困に拠って民衆の不満は募り、今回の横暴な反対派の追い落としに拠る反発、それを抑え込もうとする習近平派の対立は深まり、血で血を洗う水面下の争いが、もう始まっているような気がする。

中国人民各位にはこれから極めて暗い時代を迎える可能性が高く、これは中国だけの問題に留まらない。

内の不満を外に向けるべく、周辺諸国へ言いがかりを付けるのは勿論、体制維持の為に台湾の武力侵攻すら在り得る。

14億人の巨大市場、巨大製造工場が闇に包まれて行く訳だから、これから世界市場に与える影響、経済的損失は計り知れない。

これから中国は言論統制、国家主席崇拝条例とその罰則の制定、密告推奨、監禁拷問の多発、地方経済の崩壊、共産党員が優遇される法の設定、反対派の不審死などが横行する事になります。

日本政府日本人はこの事に備え、できるだけ中国の残された日本企業の引き上げを急ぐべきだと思う・・・。

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。