「中心気圧900ヘクトパスカル」

台風が日本に上陸後、中心気圧の勢力が下降し、やがて温帯低気圧になると考えている人が多いかも知れないが、台風(熱帯低気圧)と温帯低気圧の差はエネルギー発生の質が異なったと言うだけであり、現実のエネルギーは低下するとは限らない。

台風を構成する気圧エネルギーは全て暖かい空気によって構成されるが、これが日本に近付くと寒気にぶつかり、やがてエネルギー発生の主要因が寒気と暖気がぶつかって発生する温帯性の低気圧に変化したと言う事であり、ここでは空気の温度差によっては一度衰えた低気圧の勢力は増大する場合が出てくる。

1979年10月19日、和歌山県白浜市に上陸した台風20号(197920)は上陸直後の中心気圧が965hp、これが北海道を抜けてアリューシャン列島付近に達した時には温帯低気圧に変わりながら、中心気圧が950hpにまで発達した。
また中心気圧が960hpのまま、温帯低気圧に質的変化した台風も有る。

ちなみに1979年の台風20号は観測史上記録された、世界で最も低い中心気圧に発達した台風で870hp、中心付近の瞬間最大風速は秒速90mを超える巨大な勢力だった。

ちなみにこうした中心気圧が900hpから870hpに発達した強力な台風の発生確率は「自然偏向性平均値」である。

つまり適度に斑(むら)のあるランダムなのであり、この点で言えば1980年代、地球温暖化によって激化した気象によって台風の勢力も大きなものが発生し易いと予測した気象学者や、私自身もそう思っていたが、こうした世界的な予測は必ずしも的を得たものだったとは言い難い。

地球温暖化の影響は、台風などの特に激しい気象条件よりも、むしろ常性の気象である一般的な低気圧を激化させ、その意味では激しい気象条件も通常の気象も平均に激化する、或いは激しい気象条件にエネルギーが集まると考えた方向の反対、通常の気象条件の範囲を激化させるのが地球温暖化効果だったと言うべきかも知れない。

また台風は回転運動である為自力推進方向を持たない。
自分で動く力を持っていない事から、地球の自転と大気の気流を推進方向とし、その発生要因は風の波と寒気であるとされている。
縦と横や上と下などの何らかの落差が有って初期の回転運動が始まるものと考えられていて、温暖な空気のみのエネルギーであるにも拘らず、その発生要因は対比する冷たい空気なのである。

10月に中心気圧が900hpから900hpを下回る強大な勢力の台風が日本に接近する場合、奄美大島付近で930hp、九州地方に上陸した時点で940から950hp、その後上空の気流によって速度を上げる事から、京都、大阪の緯度では960hp付近の勢力を保つ事になる。

この時点でも周囲の気圧差から秒速40mから50mの瞬間最大風速となり、これが温帯低気圧に変化した場合は、風の勢力や雨の範囲は同心円から離れた不規則分布勢力となる為、台風の中心付近から離れた、南から風が引き寄せられる地域で竜巻が発生し易い。

事実過去の台風被害でも台風の中心付近が通った地域で、屋根が数メートルの円形状にむしられた形跡が見られた事が有り、この事から地勢的な条件から台風内部には中規模の竜巻や、小規模の竜巻が混在している概念が必要なのかも知れない。

秒速90m以上の風速は事実上巨大ハリケーンが通過するのと同じ事であり、この状態で台風が日本に上陸した場合、全ての木造家屋は吹き飛ばされて跡形も残らず、車や家畜、人も吹き飛ばされるが、こうした勢力で台風が日本に上陸する確率は低く、日本の真ん中付近で中心気圧は965hpから975hpにまで勢力を落とす事になる。

その後冷たい空気の影響を受け、台風の気圧エネルギーの質は「位置エネルギー」である温帯低気圧と変化していくが、この状態が台風にとっての「混沌」のピークである。
地上では台風の分散したエネルギーと、位置エネルギーの急激な発達によって発生する気象条件の複合的な影響が出てくる事になる。

中心気圧が960hpの時点で温帯低気圧に変化した場合、台風被害の予想は中心付近から離反し、通常は台風の進路方向の左側が「航行可能半径」と言って、比較的風の弱い状態となるが、これが温帯低気圧になると、中心付近から離れた台風の進路方向の左側でも竜巻などが発生する事になる。

秒速40mから50mの風の勢力が統制を失いちぎれて分散し、予想外の地域で被害が発生してくる、また前線が発達して遠く離れた地域で深刻な洪水被害が発生する場倍も多い。

今日本に刻一刻と近付きつつある台風「19号」、この中心付近の気圧は900hpであり、統計的にも最大級の勢力を持った台風である。
奄美地方では秒速70m前後の風が吹く恐れが有り、沖縄、鹿児島地方でも秒速60m前後、九州北部、四国、中国地方では秒速50m、中部、関東地方、東北でも秒速40mから50mの風が吹く恐れが有る。

身の危険を感じる場合、少し高台に有る鉄筋コンクリートの建物に避難し、窓から離れたところで台風の通過を待つ必要が有り、今の段階で我々ができる事は日本に上陸しないよう神に祈るだけだ・・・。

最後に台風は周囲の空気を巻き込んで行く事から、その進路の左に位置する場合は少し気温が下がり、右側が温度上昇になるになるが、何故か現実には古来から言われているように、台風の左右に関係なく台風の後の進路になる地域は気温が上昇し、航行可能半径である左側に入る地域は早い段階から少し温度が下がる傾向に有る。

必ずしも全てがそうなるとは言えないが、台風の進路方向に出る前兆現象と大きな地震発生の前兆現象は同じ場合が多い。
気温が上昇する、夕焼けの空気がピンクや紫の色が付いたように見えたりと言う事が有った場合、今はまだ台風が遠く離れていても充分な警戒と避難準備をして置いた方が良いかも知れない。

[本文は2014年10月9日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。