1「財政ファイナンス」

個人事業主でも会計規則や税務規則に沿った経営記載、収支の記録を持ち、不明瞭な資金の流れが無ければ、その経営は大手企業の経営水準と全く同じものとなるが、この経営に関する資金の流れが事業主の個人的事情に流用され、尚且つ資金の調達先が事業主のポケットマネーと言う状況に陥ると、その事業の周落は確実なものとなる。

2014年10月31日、日本銀行「黒田東彦」総裁は第二段の大幅な金融緩和策を発表したが、この政策は金融緩和政策ではなく、「財政ファイナンス」であり、冒頭の例で言うなら国家に拠る市場と言う会社の「私物化」に相当する。

発生する借金をする側も、金を貸し出している側も、ついでに紙幣を印刷している者も全て同じグループの内で有る場合、そこでの市場は成立しない。

このグループによって市場はどうにでも成るからであり、例えば特定の親族グループが開いている賭博場で自分が賭けをしたとして、資金もサイコロの目もその親族グループによってどうにでも成る場合、博打を打つ者は必ず損失を被る。

市場原理の最も崇高な部分、権威と言っても良いが、それは機会の均等性、チャンスの公平性であり、これが全て政府、日銀の思うままと言う状態は市場経済が死滅している事を意味している。
簡単に言えば、政府による公式インサイダー取引と同じなのである。

10月31日の突然の金融緩和拡大発表も、実はこれと前後して年金資金の市場投資が始まっていたからであり、国民の年金資金投資が実行された直後に株価が上がれば、年金財源の拡大はともかく、年金制度上の不安感は一時的に緩和する。

これと4月に上げられた消費税の、2015年10月の追加増税決定の弾みとして実行されたものだ。

しかしこうした金融政策は株価の一時的な上昇をもたらし、市場に消費税に対する楽観論が発生する効果を招き、発表された7月から9月期のGDPがマイナス成長だった事もあり、一挙に追加増税の先送り論が発生、元々担保の無い紙幣の増刷は「財政の政府に拠る私物化」、「財政ファイナンス」そのもので有る為、消費税増税が先送りされた時点でこの金融政策は担保、信頼を失ってしまった。

消費税増税が安倍総理の決済に拠って先送りとなった時点で、日本銀行は市場を裏切った形となったが、後日自民党幹部、財政通を標榜する代議士達から、消費税増税を先送りしても財政再建に対する影響は小さいと言う発言が為され、これだとそもそも消費税増税だけでは財政再建が不可能だと自らが広言しているに等しくなる。

つまり日本銀行の大幅金融緩和は全く政府の恣意的な状況によって為されていると看做され、担保の無い金融緩和は一方、それを終了する時期を曖昧にし、そもそもが自国の国債をその国家の中央銀行が買い取ると言う詐欺的な財政運営は「非常事態」の措置で有ることから、長く続けられるものではなく、現実にも長くは続かない。

財政の特例措置はその終了時期を明確にする、或いは目的が達成されたら終了する事がもう一つの担保、信頼になるが、これがどちらも不明瞭と成った現在、日本の金融市場の信頼は日本政府のやりたい放題と言う状態となっている。

日本銀行はもはや為す術が無い状態に陥り、かと言って金融緩和政策を止めれば今までの苦労は水の泡になり、国債は暴落、かつて無いまでに国債を購入し、本来の貸付よりも国債の利回りで経営が成り立っている日本の大手、地方銀行は壊滅的な打撃、日銀と共に連鎖倒産する恐れが出てくる。

だが金融緩和政策をいつまでも続けていると、今度は通貨価値が信頼が失い、ハイパーインフレーションを招く事になる。

事実この100年の国際社会の経済政策を見ても、金融緩和と言う状態は市場の公平性が有る程度確保された状態、若しくは市場の独立性が担保された状態を言い、これが政府に拠って「財政ファイナンス」化した時から国家経済の破綻が始まっている。

2・「ふと、思った・・・」に続く

[本文は2014年11月28日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。