「群発地震」

群発地震の発生要因は今のところ良く分かっていないが、それが発生する位置的条件から、2種の要因が考えられている。

最も代表的なケースが伊豆伊東市沖の海底火山群内で発生する群発地震だが、この海域には大小含めて100を超える小さな火山がひしめいている。

その為にM2~M5前後の地震が頻発し、こうした状態が4年、5年の単位で継続される事が多い。

1週間に10回以上の有感地震が発生し、細かいものを含めると1日に数百回と言う場合も在るが、基本的に震度5を超える地震は少ないか、発生しない。

またここから少し離れた神津島、これは東京都に属するが、神津島本体も活火山で在る事から解るように、この付近には伊東市沖よりもう少し大きな海底火山が散在している。

こうした火山性群発地震に火山規模との関係側が在るのか否かは不明だが、神津島付近の群発地震は伊東市沖の群発地震より回数は少なくなり、多い時でも1日に3,4回、1年間のトータルでも通常20回以下のケースが多いが、数年に1回は1カ月に10回以上と言う不規則性を持ちながら、ほぼ通年同じ状態が継続されている。

そして同じ火山が原因と考えられるトカラ列島付近だが、ここで発生する群発地震は活発化すると1日に10回ほど発生し、以後毎日数回震度1~3の地震が発生するが、沈静化したり活発化したりして2年から3年継続する場合がある。

これらの群発地震はいずれも火山性微動のような、体に感じない地震、有感地震を含めて短期間数百回と言う小さな地震を含む事から、群発する地震の要因が火山に関係したものと推定できる訳である。

2つ目の要因として、代表的なものが長野県、岐阜県の県境付近で発生する群発地震だが、震度1から4くらいの地震が1日に数回発生する状態が5年くらい継続する。

この群発地震の要因はフォッサマグナ、大地溝帯が北アメリカプレート、ユーラシアプレートに圧されるか、その対極のフィリピン海プレートや太平洋プレートの圧力に拠って発生しているものと考えられ、日本列島はこの部分で2つに分離していて、その間に土が埋まっているような構造になっている。

このフォッサマグナ付近は結構複雑な事になっていて、北アメリカプレートが太平洋プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの間に楔状になって入っている、その南端に一致する為、大きなプレート内部の加圧力の影響を拾うようにして、群発地震を発生させているものと推定できる。

これらの地域の群発地震に関しては古くから記録が残っている為、群発地震の多い地域として知られているが、一方で2019年から始まった能登半島珠洲沖の群発地震は過去に記録が無く、またここ100年の間でも同様のケースは記録されていない。

その為あらゆるモデルケースが想定されたが、東京工業大学理学院は地震波のデータ解析から、地殻内部に流体の存在を想定し、この流体の上昇に拠って群発地震が発生するとし、2007年に発生した能登半島地震も同様の原理から発生したとものと発表した。

しかし、この推論には若干矛盾も存在し、そもそも地殻内部の流体検知方法が地震波の到達速度変化に拠る推定である事から、地震波到達速度が遅くなるのは地殻内部の流体だけが原因と言うのは、些か恣意的な印象が拭い去れず、2007年の能登半島地震と2019年から続く今般の群発地震の要因が同じなら、何故2007年の時は震度6強の大地震になり、現在のそれは群発地震なのかと言う疑問が残る。

また日本列島の形成過程を推定するなら、能登半島のみが特殊な地殻構造と言う考え方は成立しないが、同様のケースが日本各地に想定されるなら、能登半島を含め、何故過去に火山性群発地震以外に、同様の群発地震が発生していないのかと言う話でも在る。

能登半島の群発地震には多きく分けると、震源が3か所くらい存在し、その内一番南側が震源となった時、近くの輪島市より新潟県上越付近の震度が大きくなるケースが観測されている。

北アメリカプレートの西側の端は、実は北海道奥尻から秋田県沖、佐渡ケ島沖を迂回して新潟県糸魚川へ入り、そしてフォッサマグナの南、静岡県安倍川へと到達しているが、佐渡島の西沖が群発地震が続いている能登半島珠洲市である。

構造的にはむしろフォッサマグナ内部で発生する長野県、岐阜県境付近で発生する群発地震に近いのではないか、そんな気がする。

東日本大地震以降北アメリカプレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートは基本的に以前より太平洋プレートに拠って大きな圧力を受けている事が想定されるが、太平洋プレートに圧された北アメリカプレートの西南の端が、やはり緩く圧してくるユーラシアプレートとの板挟みなって、少しづつエネルギーを開放していると考える方が、自然な気がする。

そしてこうしたケースでは太平洋側と日本海側はシーソーのような関係になり、太平洋側と日本海側で交互に地震が発生する。

分かり易く言えば、日本中均等に各地で地震が発生し、その内年に4回ほどは震度5付近の地震が発生する事になるが、元々力の均衡が微妙な南北両端に大きな地震が発生し易い傾向が在るのではないだろうか。

前の記事でも申し上げたが、冬に少し度を外れた高温が在った時は、余り良い事がない。

古来より「地震が来る時は温暖なものなり」は各地の文献に多く残されている。

恐らく1月13日、14日は日本各地が季節外れの温暖な気温の恩恵を受けるだろう。

大きな地震は温暖な気候が終わってからやって来る。

1月15日から18日くらいまでは、周囲に更に奇妙な事が発生しないか、注意し乍お過ごし在る事をお勧めする。

何もなければそれに越した事はないが、どうしても1995年1月17日早朝、阪神淡路大地震が発生した事を思わずにはいられない。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。