「白い気球を撃ち落とせ」

2023年1月28日〈日本時間〉にアラスカ上空に出現した白い気球は、その後1月30日にはカナダ上空に達し、1月31日にはアメリカ合衆国北西部、アイダホ州の上空に侵入した。

以後2023年2月4日、バイデン合衆国大統領の指示に拠って、同国国防総省がサウスカロライナ州東部海域で撃墜するまでの間、この白い気球は、5日間も合衆国中央部上空を西から東に移動した。

合衆国政府は、この白い気球を偵察用と判断するまでに5日観も費やした事になるが、こうした形状の浮遊物は一般的に気象観測用のものが気流に拠って流れて来る場合もあるので、むやみに撃ち落とせない背景も存在する。

しかしカナダに侵入してから6日も存在し続ける状態は異例と言え、合衆国政府が中国の偵察気球ではないかと考え出したのは、発見してから2日後の1月31日の事だった。

気象用の気球である場合、既に観測時間が相当経過している事から、通常は中のガスが漏れて落下するか、或いは上昇を続けて破裂するかのどちらかになる。

2日以上一定の高度内を浮遊し移動する場合、それはどこかでコントロールが可能な浮遊物と判断でき、合衆国に対して原始的な気球と言う、ある種の脅しをかける必要が在る国家は北朝鮮、ロシア、中国ぐらいのもので、この中で北朝鮮の気球はもう少し材質が悪くお粗末、ついでに合衆国上空を飛ばしてコントロールできる技術が無い。

ロシアはできない事はないが、既に偵察衛星であらゆる情報を得てしまっている今日、気球と言う原始的な偵察を実行する必要性が認められず、ロシア人は伝統的に旧式の方法を嫌う為、既に作戦としては4世代も前の気球を使用し、偵察脅威を与える方法は採用しない公算が高い。

合衆国国防総省は2023年1月31日、気流のシミレーションに拠って、この気球が中国東北部から飛ばされたものである事を認識していたが、最終的に偵察気球と発表されたのは2月2日の事だった。

2月3日には2月5日から中国訪問が決まっていた、ブリンケン国務長官の中国訪問の延期が発表され、これに対して中国が反発した事から、この気球は中国が飛ばしたものである事が確定した。

ではなぜ中国が国務長官の訪問を控えながら、こうした偵察気球を飛ばしたかと言う事だが、やはり台湾問題で対立が深まっている合衆国国務長官訪問前に、できるだけ詳細な情報を得ておきたい事情が1つ、更には現在構築されている北朝鮮、中国、ロシアの歴史的同盟関係に拠って、動いている可能性が在る。

1月末から2月初頭、ドイツの戦車がウクライナに供与される事が決まり、アメリカ合衆国からも航続距離の長いミサイルの供与が決まった。

こうした国際情勢に楔を打って、尚且つ合衆国の様子が少しでも探れる方法としては、とぼけた気球の偵察と言うのは、費用対効果がとても高い。

この気球は偵察と同時に脅しで在り、尚且つそれを気象観測用のものだ、撃ち落としたら国際慣習法に違反すると発表する辺り、やり方は北朝鮮方式だが、雑で乱暴故に秩序の在る国家に取っては脅威になる。

また、こうした気球の飛行コントロールだが、遠隔操作は困難なので、実際は合衆国内部に中継する者が存在していたはずだから、FBI、CIAではそうした活動に関与した者を追跡する必要が在る。

因みに全く同じ気球が2020年6月17日、日本の仙台市上空を浮遊しているのが、多くの日本人に拠って目撃され、政府、自衛隊もそれを確認していたが、特に対策が講じられる事もなく、「謎の白い気球」として処理されていた。

「放っておけば、その内どこかへ行くだろう」と言う政府の在り様に、「まあ、日本だからこんなものか・・・」と思ったものだが、或いはこの時もどこかを偵察する為に飛ばされたものが、コントロールを失って仙台市上空に達したのかも知れない。

白い色で直径8~10m、4mほどの構造物が吊り下げられていて、今回合衆国上空を通過した気球と全く同じ形だった。

現在に至るまで、日本では謎の気球で気象用のものだろうと言うぬるい見解、或いはそうした事実が在った事すらも覚えていないかも知れないが、合衆国のおかげで謎が1つ解けた、私としては、とても嬉しい・・・・。

〈参考までに2020年6月17日の「謎の白い気球」と言う、記事のURLを貼って措きました〉

https://ameblo.jp/aquosu-l3cx/entry-12787837273.html

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。