「通貨の自主性」

通貨制度に措ける流通過程には通貨を支払った者、受け取った者双方にその行為を為すまでの経費がかかり、通貨が移動する場合には移動経費が必ず必要になる。

銀行が扱っている主力商品が通貨である事に鑑みるなら、銀行の収益は通貨の移動手数料に拠って発生していて、例えば自身が取引する銀行の建物施設、行員の給与などは認識、非認識を問わず、その銀行を通して通貨を移動させた者たちの損益、未来に被るべき利益の一部を原資とした投資利益に拠って維持され、この投資が循環して自身の為す職業に薄く利益が再配分される。

一方国家や地方に拠って徴収された税も同様に移動に関する経費がかかるが、国家は基本的に事業収益を為していない事から、徴収された税の償還方法は国債の発行を含めて、未来に措ける増税となる。

この為、よく言われる「きめ細かい税制」と言う在り様は「税制の煩雑化」を意味し、通貨移動の経費が徴収された税や配布される還付金の中から差し引かれない限り、税制の煩雑化に拠る損失分が更に増税される、若しくはその経費分を税の徴収者以外の者が負担しなければならない。

尤も税が所得税などの直接税に拠って成立しているなら、国家が起す財政の出動は投資と同じ意味を持つが、これが間接税などに転落している場合、国家の債権利子の支払い、社会保障費用、または国家威信に関するイベント、オリンピックなどがこれに該当するが、こうした予め目的が定められたものの為に徴収された税は社会投資とはならず、その支出された税に措ける経費は将来の増税に拠ってでしか償還されない。

「間接税」は基本的に現在、未来を含めた「後始末」の為の税である事から、ここから通貨が移動した事に拠って発生する投資効果、利益は発生せず、増税若しくは民間や国家の下部組織である地域行政がこの負担を被るのみの、損失しか発生しない税である。

良く消費税増税の前には駆け込み消費が発生するので、景気には影響しないと言う経済学者が存在するが、駆け込み需要がその後に発生する売り上げの低迷による損失を超える事は有り得ず、また自動販売機やスーパーのレジなどは消費税増税に拠って機種変更やシステムの改変が必要になり、この為に機械メーカーなどの需要増が景気に好影響をもたらすとする者も存在するが、こうした者が経済を語る資格はない。

企業がシステム改変に拠って支払った金額が全額償還されてもプラスマイナス0であり、支払いを受けた機械メーカーから徴収される所得税は所得の一部であり、企業が払った全額が徴収される訳ではないから、こうしたところから集められる所得税は経済を動かす規模にはならず、増益となった機械メーカーもその後の所得税増税の為に利益を蓄える方向性しか持たない。

企業は消費税増税と共に、国家が集める通貨の移動に関する経費をこうして負担している事になり、これに還付や軽減税率還付等が為される場合、通貨移動に関する経費は還付された金額の額面が少なければ原資を超えて「損失」を発生させる。

つまり、軽減税率で3万円を低所後者層に支給する場合、国家や地方行政、民間が支払った金額の合計は軽減税率で還付された金額の合計を超えている場合が発生する。
その上で還付財源が無く、他の税を増税して財源を作る場合、この他の税に関わる通通貨移動分経費がかかり、結果として還付に拠って発生するものは「その効果を超えた損失」となる。

通貨移動で最も効率が良い方策は「移動をしない」事である。

この為通貨決済でよい効率を保つのは「相殺」に拠る決済であり、これよりもっと有効なのは「通貨の自主性」と言う事になる。

税を集めてそれで投資を行い、更に大きな利益を発生させて市場に還元するなら、税制は国民の利するものとなるが、集められた金が全て損失になり、更にその償還や経費がまた増税に拠ってまかなわれる税制は、もはや税制の意味を持っていない。

消費税増税でも10%に上げて、低所得者層に一定の金額を還付する経済効果と、ならば低所得者層の事を配慮して9%に抑えましたと言うのとでは、後者の方が国家国民全体の損失は少なくなり、予め10%だったものが1%下がったと言う事は、雰囲気として国民全体に税が軽減された印象を与える事もできる。

増税して還付を行うのはマイナスにマイナスを重ねる最低の策であり、通貨は移動しないほど全体に措ける相対的原資価値を失わない。

国家と言うものが事業で利益を上げる組織でない以上、一度集めてそれを国民に配分する方式は、通貨の移動にかかる経費を増やすだけであり、この点に措いて通貨は出来るだけ多く初めから民衆の手元から移動しない事が最も効率の良い、通貨移動の在り様と言える。

解り易く言うなら、税制で集めて能力のない者が無駄遣いしていてはいけない。

国家や国民の繁栄を思うなら、金は出来るだけ集めずに民衆の手元に残れるようにするのが一番効率が良い、税は出来るだけ数を少なくし、更に出来るだけ集めない事が国家や国民に為にも、通貨の為にも最も効率の良い方法だと言う事である。

国家や国民が疲弊した時行う政策は2000年前から同じである。
税を減らし役人の数を減らす事が、最善にして他に方法の無い唯一の方法なのである。

[本文は2015年12月14日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。