「熊本地震の余震につて」2

マーガレットの花が散って行く過程で、その花弁が落地する瞬間の要因は定まっていない。

野を渡る一瞬の風の場合も有れば、茎をつたって歩く蟻の体重、場合に拠っては花を見ようと近付いた人間の振動、或いは太陽が昇って地面の温度が上昇し、僅かな水蒸気の蒸発が発生した、これに拠ってでも花弁の落地動機となり得る。

そしてマーガレットの花弁の落下動機はこれらの要因の上に、我々があずかり知らぬその他多くの要因の、どれがいつになるかは決まっておらず、どの動機に拠って花弁が落下するかは、花弁が落ちた時点でしか知る事はできないが、いつかの時点での花弁落下は必然なのである。

地震発生のメカニズムは、こうしたマーガレットなどの花弁が落下する時の状況に良く似ている。
いつかの時点での必然なのだが、その発生の動機は地震それぞれに拠って異なり、エネルギーが蓄積されて地殻に亀裂が走る瞬間の動機は、地震本来とはまったく関係の無い自然現象を要因として来る可能性すら有り得る。

更にその動機は各々の地震に拠って異なり、近似値は存在しても、まったく同じ要因で発生する地震は有り得ない。
つまり地震の発生は常に想定外なのである。

また熊本阿蘇地方の余震に付いては、報道やネットニュースなどで異様な多さが騒がれているが、余震傾向としては普通であり、何ら異常ではない。
震源の浅い大きな本震の後1ヶ月は常に小さな余震が発生し、3ヶ月以内は震度4クラスの地震が平均で7日に1回、震度5クラスが1ヶ月に1回、震度1程度のものは1日に数回発生するのが標準的な傾向である。

過去1980年代に発生した大きな地震の時も、本震発生1ヶ月以内は毎日小さな地震が続き、震度4クラスの地震は1週間に1回ほどは発生し、それが3ヶ月ほどは続き、半年以内には震度5クラスの地震も数回発生していた。
共鳴現象も存在し、比較的近くの震源域で大きな地震が1ヶ月以内に発生し、余震傾向も同じになる現象は日本海側の大きな地震発生時にも多く見られた現象だった。

熊本地震の余震傾向が非常に数が多いと報道される根拠は、比較データが新しいものが多い為で、例えば1980年代以前の地震に比較すると、余震傾向はそう多いとは言えない。
勿論気象庁のデータだけでは観測地点の数が、現在よりも1980年代以前の方が少ないが、これを頼りにしてしまうと正確な判断が出来ないのである。

小さな地震は頻繁に発生していて、局地的なもの、観測点の無い地点での地震を全て気象庁が把握するのは困難な事だった。
これを現在の熊本地震の余震傾向に当てはめると異常に多い余震となるが、過去の地震発生地域での現地調査では、どの地震でも異常に余震が多いと被災者が申告しているのである。

更に今般の熊本地震に付いて、この地震は本来局地地震であり、東北で発生した日本海溝の巨大地震に拠って、日本が太平洋側に引っ張られている力学的要因で、地震エネルギーが巨大化したものと考えるべきだろうと思う。

まったく関係ないとは言わないが、これから後発生する大きな地震の一番大きな要因は、日本海溝の地殻変動に拠るプレート間のエネルギー関係に求めるべきで、熊本地震に拠って南海地震や東南海地震の時期が早まるとする考え方は、事前現象統計に拠る予測を惑わせる迷信的な考え方のように思う。

日本人は一般的に権威主義的であり、権威者の考え方を自然現象の上に措いて考える傾向が有るが、権威者とはその組織のトップであり、いつの場合も決して自然の事象のトップでは有り得ない。

熊本阿蘇の余震は5月25日前後までは小さな余震が頻発し、1週間に1度くらいは震度4くらいの地震も発生する。
半年以内には2回から3回震度5以上の余震も発生するかも知れない。

だがこれは通常の余震の範囲であり、異常ではない。
いつまでも続くエネルギーは存在せず、日を追って余震は減少し、必ずまた平穏な時を取り戻す。
悪戯に不安を煽る報道に惑わされる事無く、早く通常の生活を再建される事を願うばかりである。

冒頭にも書いたように地震の発生は花弁の落下動機に同じである。
正確な予測は誰も出来ないが、それでも大きな地震発生にはさまざまな通常と異なる現象が現れてくる。
気象庁や地震学者の話は地震が発生した後の解析、それも推定にしか過ぎない。

自分が何か変だと思う感覚、自分の直感を信じる、言い換えれば自分を信じなくして誰を信じるのか・・・・。
これが一番確かな地震予知ではないかと、そう私は信じている。

[本文は2016年5月6日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。