「泥船」

現状の日本国債の流れは、その大部分が日本国内の銀行に買い取られ、銀行に買い取られた国債を更に日本銀行が買い取る仕組みになっている。

日本政府が国債を発行し、それをすぐに日本銀行が買い取ってしまうと、これは明確に借金する本人が紙幣も印刷すると言う、通貨を蔑ろにする行為になる為、一度民間の銀行に迂回買い取りをさせているが、本質は泥棒が警官をやっているのと同義である。

本来日本銀行などの中央銀行は強い独立性が求められるのだが、日本銀行総裁の地位は立法府承認ではあるが、現実は国会の多数を占める与党の中枢、行政府の長で有る内閣が決定権を持っていると言え、こうした事から日本銀行総裁は政府の意向をある程度反映し易い人選となり、現在の黒田日本銀行総裁にまで至ると粗政府が日本銀行を支配している状態と言える。

その上で日本銀行は全国の銀行のトップとなる訳だから、政府与党から日本銀行、全国の銀行は一つの船に乗った同じ方向性のものなのであり、日本銀行は民間銀行に国債を買い取らせ、利子に拠る利益を与え更に買い取りを行うのであり、これは究極的には国民から金を集めて一般銀行に利益を与えながら借金を増やしているに等しい。

唯、こうした背景から日本の国債は海外への流出は少なく、対外債務が無い分国際的な信用は債務が流出している国債よりは強く、これに国際収支が黒字に動けば簡単に円高基調になる。

しかし国債が海外に流出している状態と言うのは、その分が国債を買っている豊かな国の損失となる事から、国家の損失と言う意味では対外債務は自国防衛の手段としての効用は大きく、これを国内で回している日本は損失を全て国民が被る事になる。

日本国債への影響と言う観点で言えばイギリスのEU離脱などそう大きな問題ではない。
むしろ三菱東京UFJ銀行のプライマリーディーラー資格返上の方が日本銀行に取っては衝撃だっただろう。

与党から連綿する大護送船団から大佐クラスの将校が一人、「馬鹿らしいから辞めます」と言われたのだから、政府や日本銀行の威光がここまで軽くなってきた現実を思い知ったはずである。

日本がイギリスのEU離脱に伴う円高基調をコントロールする術はもう皆無になった。
これ以上金融緩和を行い金利のマイナスが深くなると、三菱東京UFJ銀行以外の銀行も損失をカバーし切れなくなり、プライマリーディーラー資格返上の動きが出てくる可能性が高くなる。

国債のマイナス金利をカバーしてやるだけの他の手法は存在せず、予算もないのでは市中銀行は国債を買えば買う程損失が増え、もはやそれは優遇ではなく押し付けになって行く為、日本銀行はこれ以上のマイナス金利政策が採れない。
採ったとしても僅かなもので限界が有り、そうした中途半端な政策は必ず後日水泡に帰するものとしかならない。

またこうした資金不足を補う方法として増税と方法も有るが、既に消費税増税は先送りが明言され、これをして参議院選挙が戦われる以上、選挙が終わったらすぐに増税では衆議院選挙で与党の大敗は必死になり、この程度の増税ではもはや手遅れだ。

アベノミクスと言う詐欺的政策は確実に失敗に終わり、日本は借金を増やして更に景気が冷えこむ状態になり、こうした状況では大幅な税制改革に拠る大増税と言う手法など使えば日本経済は一挙に収縮する。

そして安部政権の3本の矢の最後、行財政改革だが、日本が採れる最後のチャンスがこれなのだが、国会や地方議会の定員の大幅な削減、地方公務員を含めた公務員の大幅削減と支出の削減は、せいぜい出来ても新規採用を抑えるくらいでしかなく、これではとても間に合わない。

一方人口動態が高齢化した現状では、年金制度や健康保険制度の大幅改革もできない。
できる事は年金支給年齢の引き上げくらいのもので、選挙権の中で高齢者が占める割合が大きい日本社会は、選挙制度が在る限り、高齢者扶養費用の大幅削減を口にはできない。

その上に日本は確かに国債を海外へ流出させていないから対外債務は少ないが、例えば国連やIMFへの拠出金、対外援助資金や広義ではオリンピックなども、現実には海外と約束した資金の拠出であることから、債務と同等のものだと言う事が忘れられている。

これらは例えば今年の夏大きな台風や水害の被害を受け、更に各地に大きな地震が頻発して関東や東海が地震に拠って甚大な被害を受けても決して猶予できるものではない、国家の威信と言う債務なのである。

こうした影響が最初に出て来るのは「地方」であり、国家予算が借金返済で不足し、地方経済は衰退、加えて一番最初に福祉関連費用が底を付き、次いで水道などのインフラの整備維持費用などが不足してくる。

生活保護費用と健康保険税制がまず維持できなくなってくる上に人口は高齢化、少子対策に回せる金など皆無で有る事から、こうした補助事業は打ち切られ、オリンピック施設建設で費用が高騰した建設現場では費用見積もりが現実と乖離し、災害復旧工事の入札に誰も参加できないと言う事態が訪れる。

しかもこれはそれ以後に訪れるものの始まりでしかない・・・・。
中々面白い事になってきた・・・・(笑)

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。