「能登珠洲沖地震に関して」

余り聞きなれない名称では在るが、「日本海東縁変動帯」と言う理論が存在する。

日本列島が形成された時期に存在していた古いプレートが沈み込んで、その上から「北アメリカプレート」〈オホーツクプレート〉が押し寄せ、日本列島の北半分がこのオホーツクプレートに乗った状態となっている。

2011年に発生した東日本大地震は、このオホーツクプレートの下に潜り込む「太平洋プレート」に圧されたオホーツクプレートが反発した結果生じた。

これに拠り日本列島の北東部が50mも太平洋側に揺り戻し運動を起こしたのである。

このオホーツクプレートの西の境界線が、日本海の北東部沿岸付近に在るものと推定されたが、その根拠は北海道西部海域から新潟県沖まで、ほゞ直線状に大きな地震が発生していた為であり、特に1983年に発生した日本海中部地震に鑑みるなら、オホーツクプレートとユーラシアプレートが衝突する境界線を、北海道南西沖海域から新潟県沖を通って、能登半島東部先端をかすめる形で、大地溝帯〈フォッサマグナ〉に続く形が、最も整合性を持つと考えられたからである。

またこの日本海側に存在するプレート境界線は、その延長方向として琵琶湖から神戸、島根県に及ぶ構造線〈NKTL〉と何らかの関係が在ると考えられているが、具体的な力学関係は分かっていない。

オホーツクプレートとユーラシアプレートの境界付近の関係は、ユーラシアプレートがオホーツクプレートの下に潜り込む形になっているが、現段階ではその潜り込みは浅く、地形的な特徴を現していないが、200万年後くらいから、はっきりと海溝地形が発生するものと見られている。

「日本海東縁変動帯」とは、このオホーツクプレートとユーラシアプレートの日本海側境界に沿って連続する断層帯の事で在り、この南部収束域が、恐らく能登半島東部海域と推定され、2019年から連続していた能登半島の群発地震が、フォッサマグナ内で発生する群発地震と傾向が似ていた事、2023年5月5日、同地に発生した震度6強の地震発生メカニズムを推定するに、2011年に発生した東日本大地震の影響を排除できない。

東日本大地震以降継続している太平洋側からオホーツクプレートを圧す力が、日本海側でユーラシアプレートから圧される力に何らかの影響を与え、結果として、せりだしたオホーツクプレートの端である能登半島東部に、逆断層を発生させた可能性を排除できないのである。

2023年5月8日、午前10時17分、珠洲市から直線距離で50km離れた輪島市南端地域で、震度1くらいの弱い揺れを観測したが、気象庁の地震計は同地域に設置されておらず、民間の観測に拠って3か所で地震の揺れが観測された。

この微震は5月5日に発生した、珠洲市地震の震源から50kmも離れており、同地震の余震とは区別して考えなければならない可能性が在る。

一番恐ろしいのは、オホーツクプレートとユーラシアプレートの衝突が東日本大地震の影響から強まった、或いは変化して時間的に加速された場合で在り、こうなると日本海東縁変動帯、言い換えれば北海道奥尻、日本海中部、新潟県、能登半島、長野県で震度6以上の地震が連続する恐れが出て来る。

またそうでなくても、5月5日の珠洲市の地震とは異なる震源で再度、能登半島か新潟県中越で震度6クラスの地震が発生する可能性が出て来る。

このブログの「宏観地震予知資料室」では2023年3月30日の記事で能登半島で震度6の地震発生の可能性と、それに次ぐ可能性として新潟県中越地方、それから1年後まで何もなければ、太平洋側の大きな地震の可能性を記事にしていたが、どうやら先の5月5日の珠洲市の地震が終わっても、こうした可能性はまだ変わっていないような気がする。

万一、オホーツクプレートとユーラシアプレートのプレート境界型地震の傾向が在る場合、5月5日の珠洲市の地震は何か大きなものの始まりに過ぎないかも知れない。

能登地方の方々、新潟中越地方の方々は今後1週間ほどは、くれぐれも注意してお過ごし頂ければと思います。

末尾ではございますが、能登半島珠洲市の地震に関して、亡くなられた方には謹んで哀悼の意を捧げますと共に、被害に遭われました方々には心よりお見舞いを申し上げます。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。