「イチゴショートケーキの混乱」

今ここに初めてイチゴショートケーキが作られたとしようか・・・。
人々は初めて味わうその食感や味に感激し、誰もが賞賛を与え、作れば作るだけ売れて行ったとしよう。
やがてそうした現実に、そのケーキを開発した店では無い他の洋菓子店もイチゴショートケーキを作り始め、ここにその当初は需要が供給を遥かに凌駕していたイチゴショートケーキの市場は、次第に供給が需要に追いつき、ついには供給が需要を追い越した状態になっていく。
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そしてこうした状態の端末、つまりは最後の方になってイチゴショートケーキ市場に参入した洋菓子店の売上は、あまり芳しいものとはならず、ここに従来存在したイチゴショートケーキはあらゆる可能性を求めて改良、改悪されていくことになる。
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高級素材を使ったプレミアムイチゴショート、安い材料で大量生産される普及品イチゴショート、はたまたチョコレートをコーティングしたイチゴチョコレートと言った具合に、その初期段階では一つだったものが、あらゆるバリエーションを持つようになり、このバリエーションは供給が需要を追い越すに従って増加し、「イチゴショーケーキ群」を形成するようになり、「群」全体の売上は伸びていくが各洋菓子店の売上は減少し、ついにはイチゴショートケーキ本来の姿は失われるか、激しく希釈された状態となる。
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なおその上で初期のイチゴショートケーキの概念は大幅に拡散し、ここに至ってイチゴショートケーキの価格も安い物から高いものが混在し、品質も上下が発生し価値観が不安定になっていく。
いわゆるイチゴショーケーキの混乱が発生してくる訳だが、こうして混乱した市場はやがて一般大衆の困惑を招き、一般大衆は自身での価値判断が困難な状態に追い込まれる。
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そこで現れてくるのが「権威」になるが、これはワイン市場で言えば「ソムリエ」、学識で言えば「大学教授」や「評論家」と言うものだが、近年コーディネーターと言う輩も同じように振る舞い、「権威」も上下幅や高低が現れてくること、またそもそもこうして分散してしまったイチゴショートケーキは、もはや特定の概念で縛る事が出来ない為、「権威」の言葉は初めから根拠のない独善でしかなくなっていて、やがてそうした事に一般大衆が気づいていくと、社会は高々イチゴショーケーキ一つでも、虚無感覚と言う薄いベールを被ることになる。
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それゆえ、この現象は何もイチゴショートケーキに限らず、人間のあらゆる場面で現れてくる基本原理なのだが、政治や経済、情報の分野でも全く同じ傾向を示し、根本的な原因は「分散」にあり、その分散の最大の要因は一般大衆の市場参入、つまりは民主化にこそ堕落の原因がある。
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イチゴショートケーキでも最初に食べた時は感動するが、これが2度目、3度目と回を重ねるごとに感動は薄れ、市場のあらゆる場面で豊富に出回ってくるようになると、「感動」は「普通」になり、最後は「無関心」になって行く。
そればかりか人間は必ず寿命が有り、この中では前者の「感動」から「無関心」までの流れと相まった「必然的劣化」が存在するのであり、こうしたものの集合体が民衆であることを鑑みるなら、民衆が関与の度合いを深めるに従って、あらゆる事象は混乱や崩壊を迎える現実が有る。
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情報通信の最も初期段階は音声伝達であり、次に発生してくるのは狼煙などの表形伝達や文書などだが、これは確かに情報と言うに相応しいものだろう。
また近代に発生してくるモールス信号なども同じであり、次に発生してくるラジオや電話なども、大衆化する以前は自身が求める必要最低限の情報で有った事から、これも情報と呼べるだろうが、ラジオが一般大衆の需要に応じて低価格化してきた頃から、「分散」若しくはその概念の「崩壊」を迎えていった。
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つまり情報の共有は「権力」の分散を意味するのであり、多くの者が知る情報は権力を細かく砕き、為に権力が持つ責任や「権威」が持つ「正当性」の分散につながり、社会全体が少しずつ責任を消失させて行った。
そして情報がテレビによって映像化されてしまった時点で一つの権威が失われ、新たな細かい多くの権威が発生し、これがインターネットと共有化されて来た今日に至っては、双方向に情報が伝達できる状態となり、発生してくるものは「どれが本当のイチゴショートケーキ」かと言う事になってくるのである。
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これに対して一般大衆は何が本当なのかを「権威」に求めようとするが、同じように多くの者が自由に意見を言える社会は、本来は専門家と言われる部分からも、その権威を拡散させてしまっている為、一つの情報の正確さに対して分散された、限りなく個人に近い一番権威の小さい形の存在が、各々に自身こそが権威であるように主張し、意見を述べることから、全ての情報が不確定な上に、権威と言う後ろ盾も持てない状態となっている。
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この状態は例えば世界全体の政治経済で言うなら100年、200年単位の変革期が近づいていると言うべきなのだろう。
つまりこれから国際社会は政治的にも経済的にも、庶民生活に取っても大きな混乱に向かいつつあり、しかもそれは避けられないことなのかも知れない。
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だが完全な集合と完全な分散は存在し得ない。
従って混乱、或いは現秩序の崩壊、そして秩序との関係は大きな流れの、どの状態を切り取ったかと言うことに過ぎない。
そして世界が如何なる状態で有ろうとも、その中で何かを考え思うのは、あくまでも個人一人一人であり、その者が置かれている今の状況によってしか判断が為されないものの集合が世界である。
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つまり利便性や情報を求め続け、社会を堕落させて行くのも民衆と言う我々自身なら、次のまたいつかは壊れていくだろうとも新しい秩序や安定を創造して行く者もまた、我々自身である。
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クリスマスも近くなったが、せめてただ1日だけでも人々が憎しみあわないよう、誰も殺される事がないように、祈りを捧げよう・・・。
T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。

7件のコメント

  1. ショートケーキ、少年の頃、名前は知っていたが、見たことが無く、勿論食べたこともなかった。長じて知るようになったが、場違いの気がして未だに馴染めない(笑い)

    そして原初に戻り、子供の頃の記憶にある単純な物に回帰して行く物もありますが、悪意~意図有りで、有りもしなかった理想の原理主義と出来ることを遣る世俗派との闘いが再燃して、解決の糸口は見えないと言う事も多そうです。

    モールス信号、自分の場合は勿論日本型ですが、以前簡単に言及した気もしますが、得意だったんですよ、努力で達成できるレベルで通常使用は可能ですが、今流に言えばDNAに才能が組み込まれていなければ、その時点でお終いなので或るレベル以上になると、才能が有れば簡単で、無い物はそこで上達停止、厳しい物です。

    確かベトナム戦争でクリスマス休戦をした物の。クリスチャンじゃない抵抗軍が、破棄して攻撃開始したこともある気がしますが、せめてクリスマスでも正月でも、一日で良いから安穏が訪れると良いのですが・・・全世界の、特に子どもたちの上に。

  2. 内閣情報局~だったら、国を過ったかも知れません(笑い)、小笠原諸島に来た大っぴらの密漁(笑い)C国船のアンテナの充実した無線が強力らしい、多分司令船を2~3隻拿~捕撃沈したかも(笑い)。それで田母神さんみたいに、2時間で更迭~勇退(笑い)。

    若い一時、無線通信をしていましたぁ~~♪
    情報の伝達ですから、正確に出来るだけ多くを早くが良いのでしょうが、そうすれば、受発信とも困難が実力実情を越えて弊害が多く成りやすくそれは適宜変更。多くは漁業無線の如く、平文で、詰まり通常の言葉遣いに近く、誰でも到達できる速度で行うようです。慣れると傍受していて、空中を漫画のように漢字カナ交じりの一列の文書が、耳に飛び込んできます(笑い)、-・の符号としては意識されません。
    他者に知られないようにするのは、特殊な周波数か暗号を使うと言うことになります。間違いを減らして速度を高めるために、略体数字符号、詰まり10種類のみ、を使いますが、50~60符号/毎分なら誰でも教育訓練を受ければ5分程度は、間違いなく受信が可能のようです。DNAが準備されていれば詰まり、脳のそれに関わる分解能・記憶がOKなら、同期間で100~110符号が数分受信が可能です。その間に人によって、時間と速度、正確さが、無限に広がります。勿論通常の速度では、休憩を入れながら、終日可能です。
    ついでに申し上げれば、教育中の採点の仕方が独特で、1分間20符号、5分間で全符号正解で100点、全符号受信出来ずで0点、全符号誤受信でマイナス300点と言う事で、50符号・5分で全符号正解でやっぱり100点、全符号受信出来ずで、0点ですが、全符号誤受信で50x5→250x3→マイナス750点です、勿論、無線通信手には向きません(笑い)。向く人は、毎分20符号から、100符号位まで5分間の受信試験で全部100点、詰まり全く誤受信無しです。受信状況を多少悪くさせても、ほぼ変わりません、努力の世界では無いようです。
     小学生が知らない漢字や意味不明のカタカナを飛ばして読んで、大人になってもそれに近くても、大した問題は起きませんが(笑い)、無線電文以外から隔絶されている状況下で、不向きな無線通信手と共にいるのは結構厳しいかと、戦闘地域なら勿論致命的です(笑い)。

    ご挨拶を頂いたので、新年にしようかとも思いましたが、忘れそうなので(笑い)、今日にしました。

  3. ハシビロコウ様、有り難うございます。

    ご返事がすっかり遅くなってしまい、恐縮です。
    いやいや、、、やはり只者ではないと思います。
    どこかで「しきい値」や量子力学的な部分を感じさせるお話のような気もします。やはり独特の才能が必要で、こうした中に少し遅い者が入ってくると、全体の能力はその一番遅い者の速度や正確さが上限になってしまう。揃った才能が必要となるからこその採点方法なのでしょうね・・・。
    またシンプルなもの故に措くも深いのだろうと思います。太平洋戦時、日本の暗号電文は全てアメリカによって解読されていましたし、乱数表の使用周期まで知られていた。話は飛びますが、山本五十六などはこれを知っていての自決だったと、私などは思っている訳です。
    年末に入りアクシデント続きで、ついでに急ぎの大きな仕事も入ってきて、この様子だと餅がつけるのは元旦かも知れません。まだ年賀状を書くどころか、葉書を見る余裕も無い状態で、今年も忙しかったですが、来年も新年早々から仕事に追われそうです。苦しいような、嬉しいような・・・・。

    餅は大豆入りとさや豆、柚子の三種類になる予定です。既にもち米は水に浸しましたが、さてこれがいつ餅に出来るか・・・・(笑)

    今年も一年、有り難うございました。
    良い新年をお迎えください。

    コメント、有り難うございました。

  4. 新年おめでとうございます。
    今年も適当に(笑い)よろしくお願いいたします。

    新年早々、考えようによっちゃ、スパムより余程酷いかも知れませんが・・・

    無線の続きの話で恐縮です~~♪
    全く仰るとおりで、オリンピックじゃないので、自分の練度を競っても致し方なく、電波が到達するばかりではなく、内容が勿論、案文も誤解が発生しない様に意図がハッキリ伝わるように、半分聞いても意図は分かる様に難しいレトリックは不要。極力短くします。政治家の話のように最後まで聞いても、意味が分からないと言う事がないように(笑い)、通信は全くの手段に徹するわけです。と言う事は、周波数や、暗号機序が解析されて居れば、これほど分かりやすい物はない。日本語は偶々、漢語でもやまとことばでも同音異義語が比較的多いので、全体の状況が分かる人が翻訳しないと解読したけれど意味不明と言う事にも成る(笑い)~~キシャデキシャシタキシャガキシャデキシャシタ(貴社で喜捨した記者が汽車で帰社した)。
    また、余りにも当然ですが、形式上可能でも、実際に運用できない通信手がその職務に就くことはありません、多分(笑い)、飾りは要らない。大きな通信所でも誰でも一連の業務が出来る事が必要です、「俺はアンテナの長さが計算できない」とか寝言は言ってられません。定期通信のみならず、緊急臨時の頻度は高い。1つの無線系に、つまり1つの基地と20ヶ所ぐらいの固定支所、若しくは10ヶ所ぐらいの移動所。全く同じ事を発信するときと、個別の時がありますが、力量が弱いと判断された所(例えば、主が居なくて副が居る感じの反応の所)へは手加減する。当然全体的な運用文書が有っても、多種の状況を想定しすぎれば、複雑で使えなくなるので、経験と訓練で、それに堪える能力者を配置。後は個人の資質の問題にいたる所は、一般の事と同じでしょう。
    有線と違って、通信機の状況、天候も大きく影響し、電離層の状況、昼と夜でも違うし、それで不感帯も発生、総合的に考えて、且つ経験豊かな人がその仕事を采配する。と言う事でしょう。周波数も昼夜天候で到達距離に甚大な影響が有るので、無線所の全域の天候を考えます。
    モールス信号を発生させるキー(電鍵)に縦振りと横降り(左右で自動的に短符と長符が出る)のが有り、縦振りは接している間中信号が出るので個人的癖が出やすい、横振りは個人的癖は出にくい、とは言いながら、受ける方も人なので、”癖”が出る縦振りの方が同調しやすく、受信しやすい、と言う不思議も起きます。
    今、学校で英語の筆記体を教えていない、というニュースを見て吃驚しましたが、通信の世界も各種の新技術が出て、安定して使えるらしく、モールス信号が使われなくなった、というのを聞いたことが有りますが、相当酷い状況下でも各種方法で使えるので、例えば闇夜の光、接近隔絶間での音響など・・基本素養として、類似従事者には教育した方が良いように思っています。
    自動車の運転では予測運転が事故を未然に防ぐ要諦とか言いますが、無線受信では、予測が最も戒められていて、百人一首のように絞り込められれば、良いのかも知れませんが、或る符号が来て、可能性のある幾つかを準備すると、そこに正解が無いときに、瞬間ですから混乱が発生して、誤受信や暫く受信できなく成るようです、特に平文の場合は要注意と言う事です。実際書いている符号は、少し練度の高い人は、6~10符号ぐらい前に聞いた符号です、「遅れ受信」と言います。それは暗記した物を記述している。
    一緒に同じ通信を並んで聞いていれば直ぐ分かりますが、改行符号が出て、瞬時に改行している人は、聞いた瞬時に記述、熟練している人は、それから6~10符号してから、実際改行です。

    モールス信号で、或る一時期の事が少し思い出されましたが、何故か何処で曲がって、今になっちゃんだでしょう(笑い)

    長々と失礼しましたぁ。

    1. ハシビロコウさま、有り難うございます。

      なるほどシンプルなものだけに、あらゆる事を包括する側面があるのですね・・・。
      予測を嫌うと言うのは素晴らしい。また信号の内容で人の力量や心情まで測られ、逆に言えばその信号によって自身が他者からどう見られているかも推し量る事が出来る訳ですね。まさしく孫子の彼を知り己を知れば・・・の究極かも知れません。そしてこの逆が今の日本や世界の情報と言う事になるでしょうね。特に必要の無い情報が蔓延し、その情報に踊らされ、まるで扇動された鼠のように愚かな行動を起こす民衆には、是非とも聞かせてやりたい話です。言語は信頼できる使い方をすれば非常に有効ですが、現在のように言い逃れや虚言が横行すると意味を失わせ、言葉が失望を招く事になります。だから何かを為したい者ほど言葉を大切にしなければならず、それに拠って自身の言葉を担保するしかないのですが、安部総理のような事をやっていると社会は絶望を抱くようになる。自民党の支持率が高いのは、選択の余地の無い状況と、多くの無関心に拠って支えられている。この意味では日本の政治は死んでいる事になりますが、民主主義は必ず衆愚政治なるとしたアリストテレスの言は、まさにこれを実証する現代の有り様で、この流れから次は専制、独裁政治になっていくのは確実だろうと思います。トランプ氏の次期大統領、イギリスのEU 離脱、ロシアや中国の台頭がそれを物語っているだろうと思います。

      コメント、有り難うございました。

  5. ちょっと悪乗りで(笑い)・・・
    後で気付いたのですが、無線は向いていた、特にやりたい事というわけでもなかった気はしますが、少なくとも向いていた気がします。
    楽勝で、進歩して、苦労なく仕事をこなして、環境が悪いときは、全員環境が悪いわけで、そう言う意味ではどうと言うこともない。
    そちらで極められなくとも、それなりに高度になった気がしたのは、後のことだから、実際は分かりませんが。
    でもまあ、それを止めて、遣りたい、と思ったことを遣ったけれど、並だったこともあるし、レベル以下だったことも有るようです。
    今は全ては渺々たる遠くに(笑い)

    1. ハシビロコウ様、有り難うございます。

      歴史もそうですが、今やっている事、今現実に起こっている事の評価をするのは難しいのかも知れませんね。赤い水の中にいる者は青い水の中にいる者の事を理解できない。しかし後に全体が見えたとしても、い水の中にいないリアルが無ければ、その時の心情は理解する事ができない。終わった事はガラス板ネガではないですが、全て叩き割って次に進まねばならないのだろうと思います。
      歴史も自身の過去も、それは今創られる過去の記憶・・・(笑)

      コメント、有り難うございました。

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