「エレベーターが待てない」

めったに出かけない会合でのことだ・・・。
その会場はビルの4階会議室だったので、メンバーたちとエレベーターを待っていたが、これがまたなかなか降りて来なくて、やがてエレベーターの前はかなりの人だかりができた。
こういう場面、私はどうしてもエレベーターに乗れる自信がない。

ゆっくり落ち着いて乗ろうと思い皆に先を譲るからだが、余りに人が多くなるとまず乗れる見込みがなくなり「仕方ない階段で行こう」と思ってしまう。
この日もそうして階段へ向かった私は3階くらいで後ろから歩く女性に気がつき、少し歩みを速めたが、大体こうして階段を使う人種と言うのは自分も含めて一様にせっかちで、ついでに負けず嫌いが多い傾向にあり、階段で抜きつ抜かれのバトルになることが多い。

そして女性の足取りは以外に速く、私はついに追い抜かれてしまった。
それもハイヒールでカツカツだったので、これでまけたら階段愛好家の名が棄たると思い、一生懸命早く歩くのだが、一向に女性には追いつけず、ついに4階まで辿り付いてしまった。
女性はちらっとこちらを見て二ヤッと笑う。

これでこの女性が自分と同類だと言うことは分かったが、しかし負けたのは悔しい。
なおかつ、なんとてっきり自分の方が早く着くだろうと思っていたのに、他のメンバーたちの方が早く着いていたのだ。
その後会合で私が終始ご機嫌斜めだったのは言うまでもない。
だが、私はこうして階段を使う人が好きだ。

かなり前のことになるが、仕事である企業を訪ねた私は、ちょうど昼ごはんの時間になったので打ち合わせを終えて帰途に着く事にしたが、この企業のオフィースは11階にあり、さすがにエレベーターを使おうと待っていたら、降りてきたエレベーターは空でこの階から乗ったのも自分だけだった。
これはラッキーだと乗り込んだが、エレベーターは10階で止まる。

まあさすがに11階で誰も乗らないとは考えていなかったが、アクシデントは突然訪れるものだ。
なんと10階で乗り込んで来たのは昼食を外で取ろうとする10人程のOLの集団、それも狭いエレベーターにぎゅうぎゅう詰めに乗り込んできたのだった。

こうなるとたった1人の男など惨めなものであっと言う間に隅に追いやられ、呼吸さえ止めて静かにしなければならなくなり、ついでに妙な緊張感からか全員無言のまま1階まで降りて行ったのである。
途中1度6階で止まったが、満員なのでまた扉が閉められ1階まで着いた頃、私は呼吸困難で倒れそうになった。
トラに囲まれたウサギの気持ちがこのときほど良く分かったことはなかった。

階段がどうのこうのと最もらしいことを書き、最後になってこういうことを言うのは気が引けるが、私がエレベーターを使わなくなったのはこの頃からだったような気もしている。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。

4件のコメント

  1. エレベーターとエスカレーターには色々言いたい事がある(笑い)けれど、この度はエレベーター。

    満員で、思わず「~~」を音無でカマしてしまって、そこはかとない怪しい香が充満した急行エレベーターの場合の最良行動は・・
    1. 知らんぷり
    2. あ、ご免なさい、暫しの御忍耐を、と白状する
    3. 気にすんな、と他人に押しつける
    色々状況がありそうななので、模範解答は難しいが、混んでいるエレベーターに乗り合わせた毎に考えると、人生について思考が深まったりはしないが、退屈な時間を短縮する効果は期待できる。

    自分が最後に乗って、警告音が出たときの最良行動は・・
    これもデパートの如く案内の方が居る場合など色々想定できるが・・
    1. 黙りを決め込む
    2. あ、失礼と言って、直ぐ降りる
    3. 無理矢理、中に突っ込む
     これも色々、国や場所によって変わるが、ちょいとした道具に過ぎないが、それなりに自他共に思わぬ人間性が表出されて、これ又人生の暇潰しには寄与する問題かも知れない。

    昔若い同僚と某パキスタンを、10ヶ所程回って、市場調査~営業もどきをしたことが有るが、朝飯か何かで、ホテルのエレベーターの前で、一緒になって、彼はボタンを押しているのに一向に来ない、と言う事で、自分が、上下のボタンを一緒に押したら、直ぐ来た。ムガール帝国時代の儀仗兵みたいなエレベーターボーイ(実際はオジサンが多い)が居る場合、手動・自動などで色々な設定回路があるのだが、なんせ年の功で、知っていた物だから、同僚も吃驚だった。

    大したご面相でもないのに(失礼)、エレベーターの横に付いている鏡で盛んに自分の髪型や様子を見ているお兄さんは、そんな自分が、人からも見られていることも気にした方が良いと思っている。
    私は自分のエネルギーを節約するために、階段は使わないと公言しているが、実際は5~7階ぐらいで、エレベーターを使うことはない、但し、筋肉痛他、やっと歩いているときはこの限りに非ず~~♪

    1. ハシビロコウ様、有り難うございます。

      今しばらく出て来ないかも知れませんが、エレベーターで重量制限のブザーが鳴ったときの人間のリアクションに関する記事は過去に詳しく書いた記憶が有るので、いつかの時点で必ず出てくると思いますが、こうしたリアクションには社会的合意、概念の統一と言う背景が有り、社会一般的に認知されているからこそ、成立するリアクションと言うものが出てきます。そしてこの時取れるアクションは3つ存在し、そのどれもが社会的に認められているために成立します。つまりそのリアクションに拠って周囲の人間が安心するのですが、それは必ずしも良い感情ばかりを起こさせるとは限らないものの、不快感を与えてもそれが認知される現象が発生してきます。
      この話は結構奥が深いのですが、こうしたどうでも良い事と言うのは考えていると、とても楽しいものです。
      記事の話は若かりし頃の話ですが、どうも私は女が好きではない、と言うと差別か、では男が好きなのかと言う話になってしまうかも知れませんが、そうではなくて元々一般的な男よりは女に興味が薄いのかも知れません。守銭奴の成れの果ては哀れなものと言うべきか・・・(笑)

  2. 日本のエレベーターは世界最速・最静穏で、500mとかの産油国他の高層建築にもかなり使われているのは知っているが、地球の人口が300億人とかで住むところが無くて、やむを得ずなら兎も角、ドンドン建ててゆくのは大反対です。あの高層まで色んな物を、重力逆らう程意味があるとは思えないし、人は高所に住む能力には欠けていると感じている。高層住居は、引き籠もりを誘発している。
    日本の様に景色も環境も良く、人口を水、電力その他を含めて住居可能地域か、未だ幾らでもあるのに、需要が有るからと言って、駅前に高層住宅や中層の密集住宅棟を建てて、村や町が死んでいくのを座視しながら、直近の要求のみに応えているような都市計画の無さという意味の都市計画や産業の集中には賛成しかねます。
    当面エレベーター製造会社は、利益が確保で来るでしょうが、将来は縮小しようとも、お国は長期的な展望を持って、人口の適性配置を優先した国造りを今から考える事が必要だと思っております。
    3~4階程度の出来れば平屋の住居可能地の均衡を持って建てれば、これからの福祉政策・教育政策の困難の回避、産業の分散化、電力や給水なども含めて地産地消が高くなれば、外国人労働者の導入とか都市部の給水・排水・電力など問題の多いことが、単純な発想の転換で改善出来るのじゃ無かろうかと考えています~~♪

    「誰に対してもそうなのですか」みたいな、舞台と俳優の話がありました~~♪
    その内、機会の有るときに、お知らせしたいと思っております。

    1. また、近々に「お願いしたい事があるのですけど・・・」と言う記事がアップされますが、この話などはこの記事以上に「そんな事が・・・」と思える話なのですが、結局私が若い頃の時代と、その環境がとんでもないものだった、或いはみんな真剣で、何でも有りの世界だったと言う事なのかも知れません。似たような話が演劇になっていると言うのは意外でした。電車での話は20年も前の事、しかも始めて記事にしているのは2008年かと思います。それゆえその演劇がもし2008年以降のものなら、或いは過去の他サイト記事が参考にされたか、それとも演劇の方が古ければ、たまたま偶然に同じ経験をしたか、と言うことかも知れません。過去に掲載した写真が「著作権に違反する」と通告された経験があり、でも撮影した時期は私の方が5年も古く、尚且つ地元で写真展をやって、それが地方紙の記事に取り上げられていた事から、結局最後は彼が著作権違反で自分の写真を引っ込める事になった事がありました。妙な話なのですが、自分が掲載した、それまで余り使われることの無かった音楽が、なぜか数ヶ月後にはCMに使われ始めたり、或いは似たような話がそれから出てくると言うのは少ない事ではないかも知れません。
      それはこうしたネットだけではなく、作っている物も似た傾向かも知れません。

      コメント、有り難うございました。

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