「博物館の軍刀」前編

「小官は皇国興廃の関頭に立ち、将兵に対し、人として堪へ得る限度を遥かに超越せる克難敢闘を要求し候、黙々として之を遂行し、花吹雪の如く散り行く若き将兵を眺むる時、当時小生の心中、堅く誓いひし処は、必らず之等若き将兵と運命を...

「木材乾燥」

良い企画やイベントと言うものは、その当日時の朝には終わっているものだ。 準備が万全であるものは、その準備をした者にとって準備が終わった時点で全てが終わっていて、当日の成功は既に過去のものとなっているはずである。 輪島塗の...

「拒否され得べき情報」

殺人事件に措ける死体遺棄場所、死体を隠した場所や凶器の投棄位置、逃走経路など、その犯行の当事者か若しくは当事者と事情を共有できる者でなければ知り得ない情報を知っている者は、犯行を犯した当事者かそれに順ずる者としてまず容疑...

「東京の雪」

一度は故郷へ帰ったものの、すぐまた田舎暮らしが嫌になり、家出同然で知人を頼って上野に着いた私は、取りあえず仕事を探そうと歩いていた。 どこへ行けば良いのか分からず、多分浅草寺裏側の付近だったと思うが、ぶらぶらしていてふと...

「葬式・後編」

さて葬儀が終わってからだが、いよいよ棺桶の蓋に死者の長男か孫が釘を打って、棺桶は白木の輿(こし)にのせられるが、この輿は台座に棺桶をのせてその上から屋根付きの輿を被せる仕組みになっていて、全体的には白木だが部分的には赤や...