「時を彷徨う者」第一章

ブルボン王朝、その絶頂を築いたフランス・ルイ14世・・・、しかしいかに彼をしても年齢と言う限界は超えることができなかった、今まさにすべての栄光もまた自身のものではなかったことを知り、ただその身を神の御心に委ね横たえていた...

「赤い茗荷」

そんなに驚く程のことではないが、少し変わったものを見た・・・、と言う連絡が留守番電話に入っていたので、今夜はその話をしておこうか・・・。 連絡してくれたのは能登地方に住む74歳の男性だが、たまたま昼間は稲刈りで留守にして...

「状況の尊重」

書は體を現し、體は心を映す。 現在ではパソコンのワードが主流になってしまったが、文字と言うのは文字そのものが最も大きな意味を持つ一方、それが書かれた状況と言うものも書体の端々に現れ、それは心情のみならず書いている人間の環...

「鵺(ぬえ)の鳴く夜」

キャップの下から髪を伝って信じられないほどの汗が滴り落ち、それが目に入って痛い・・・、すでにTシャツは突然のスコールにでも出合ったように、絞ればこれも汗が滴ることだろう。 暑い、いや正確には蒸し暑い、それも地面から立ち上...

「童子」

  元弘の変により、隠岐に流された後醍醐帝・・・、ある夜帝は不思議な夢を見る。 後ろから黒い影が追いかけてきて、それは今にも帝の肩を掴もうと言う勢いであった、必死でその影から逃げようとする帝、しかしついにそれは...