「その顔はどうした」

まだ幼いころだったが、私たち子供にとっては秋と言う季節は大変重要な季節だった。 何よりも嬉しかったのは、出稼ぎで加賀へ稲刈りに言っている母親や祖母が帰ってくることで、私たちが幼い頃、この地域の女性はみんな8月の終わりから...

「風を追い越して・・・」

夏の日、しかも夕方になって、殆ど残っている者もいないこの学校へと続く坂道を、3分の1ほどの水が入ったバケツを両手に持ち、彼女は口から心臓が飛び出るのではないかと思われるほど激しい呼吸で、何度も走って駆け上がっていた。 私...

「微笑み症候群」

「河合くん、これは何だ、一体何回言えば分かるんだ」 ○△商事販促部係長、「浦飯雄太」は今年入社した新人「河合エリカ」さんを呼びつけたが、どうもこのエリカさん、しっくり来ない。 やる気があるのか、ないのか・・・、たまにボー...

「言葉と言うもの」

数年前のことだが、何をどう間違えたか、そんな大幅な利益を上げてもいない私の所に税務署の調査が入ったことがあり、そのとき私は「こんなあばら家に住んで、車だってもう10年近く乗っている者を調べてどうする、他ではみんな高級車を...

「時を彷徨う者」第三章

だが1760年、ショワズールはついにサンジェルマンにスパイ容疑をかけることに成功・・・、謀略だったがサンジェルマンはフランスにいられなくなりロシア、イギリス、イタリア、オーストリアなどを転々とするが、1766年にはプロシ...