1m間隔に100円が1個ずつ落ちている道がずっと続いているとしようか・・・、それを拾いながら歩いていると、何とか1日暮らせるだけの金額になり、毎日それを拾いながら暮らしている者がいる。
だがある日、1mの間に100円が2個ずつ落ちていた、そしてその次の日には何と100円が同じ間隔で3個も落ちていて、こうなると半日も拾えば暮らしは十分どころか、酒も飲めるし美味いものも食べれるようになり、これは良いな・・・と思うようになった。
この者に100円を拾わせているのは、優しくそして余り物を考えない神様だったが、ようやく気づき始めた頃はすでに遅かった、100円を拾いながら暮らしている者の喜ぶ顔につられて大盤振る舞いしていたら、なんと道に落とし続けてやるべき100円硬貨が、袋に残り少なくなってなってきていて、このままではマズイ・・・と言うので今度は2mに1個に減らし始めた。
だがこれに俄然文句を言うのは「拾う者」であり、一度覚えた酒は毎日呑みたい、美味いものも食べたい、1日拾い続けて以前の半分以下とはどう言うことだ・・・と神様に抗議した。
神様といっても辛いもの・・・、所詮人気商売で人間の人気が無ければ神社は荒れ果て、神様の世界でも地位が低くなってなってしまうことから、何とかして人間の人気をつなぎとめておきたい・・・、そこで仕方なく来年の分の100円硬貨を使い始め、また1mに3個ずつの100円を落とし始めたが、こうなると3年分を1年で使ってしまうので、3年もすれば9年分の100円硬貨を使ってしまい、ついには神様もお金が無くなってしまった。
ある日、道にはどこまで行っても100円硬貨が落ちていることは無くなり、それを拾って暮らしていた者も何も食べることができなくなった・・・。
これは何の話だと思うだろうか・・・。
そうだ経済対策の話だ。
経済と言うのはいろんな理論があるが、それは起こった現象について、後から説明しただけと言えばそれまでのものであり、本当はその仕組みは単純明快なものでもある。
毎日食べる米やパンなどは、例えば今日のうちに明日の分を食べて貯めておく・・・と言うことはできない。
だからこうしたものの消費はそれ程大きな変動がないが、では食べ物以外の自動車や家電製品はどうだろうか、これらは今日壊れていなければそれ程慌てて買う必要は無く、本来社会的変動が少なければ、毎日売れる数は決まっているものでもあるが、それが他の理由で景気が悪くなった場合、毎日売れる数が減ってきてしまう。
そこで経済対策でエコカー減税や、エコ家電補助金制度が出てくる訳だが、これによりトヨタや日産などの自動車メーカー、大手家電メーカーなどの製品が一転して注文に追いつかないほどの盛況ぶりになる。
結構なことだ・・・が、よく考えてみると、これは本当なら1日に1台しか売れなかったものが、3台売れてしまっているのであり、このチャンスに・・・と思う消費者心理が、購買行動を前倒ししているのだ。
つまり今後2年ないし、3年の間に起こる消費、購買行動を先食いしてることになる。
3年で30台売れていく自動車が1年で30台を売り切ってしまい、ついでに経済対策が終わると、アッと言う間に残り2年の売り上げが無くなってしまうのだ。
もちろん最初の1年に出た利益はあるが、その前に他の理由で被ってしまった借金の返済に充てられ、その後また未来の消費を呼び込む方法が無ければ、そこで消費は失速してしまい、以前よりさらに経済が悪化する可能性があるのだ。
勿論、経済対策が終わった途端、まったく売れなくなると言うようなことは無いだろうが、それでも先食いした分は苦しくなってくる、また自動車で言えば、しばらくして世界経済が持ち直せば、当然原油価格の上昇も見込まれ、ハイブッリド車の消費につながって行く可能性も視野に入っているだろう。
だが、原油価格が上がれば今度は経済全体がまた失速し、根本的な経済が冷え込むだろう・・・、そしてもしこうしたときに経済対策期限切れ、基本消費の先食いによる消費低迷が起こった場合、日本経済は決定的な打撃を受ける。
事実タスポカード導入により混乱したタバコ販売は、コンビニでは店頭販売だったことから、自販機からコンビニへの消費移動が起こり、このおかげで自販機でタバコを売っていた小売店の売り上げは壊滅的な打撃を受け、その打撃のおかげでコンビニは業績を向上させたが、これですら暫くすれば安定してしまい、結果として今度はまたコンビニの売り上げも落ちていくのである。
つまりタスポカード導入のおかげで一時的にコンビニの売り上げは上がったが、その影で小売店の大量廃業があり、またさらに今度はコンビニ業界の売り上げも落ちてくるのである。
資本主義の原理は常に拡大にある。
そしてこの拡大の先に待っているものは破綻であり、世界経済は100年のスパンで見たとき、必ず1度は破綻し、そこからまた経済活動が再開され、また拡大に向かい、そして破綻すると言うサイクルを繰り返している。
またこうした破綻に伴い、新たなる市場を求め、資本は外へ向かっていき、これは帝国主義の原理とも等しいものである。
今まさに経済的に世界は帝国主義国家間の戦争状態とも言えるのであり、こうした場合、資本がある国や資源がある国は保護主義へと道を転じ、持たざる国、経済的に弱い国家は武力で、または混乱を利用してそれを乗り切ろうとしていくものである。
日本経済はとても危うい状態にあり、国際的なあらゆる外交や交渉でも日本の影響力が弱くなっている背景には、これまで経済力で無視できなかった状態から、もはや経済的にも影響の少ない国家として、対外的に看做され始めているからである。