「インフレーションとサブプライムローン」

暑い夏の日と言う条件は、必然的にアイスクリームの需要を押し上げるが、この時アイスクリームの生産量が予め決まった量で一定だった場合、アイスクリームの価格は上昇する。

それゆえアイスクリームを生産する会社が、その価格を一定に保とうとするサービスを提供する場合、統計を取って各季節ごとに生産の増減を調整する必要が出てくる。

通貨と物の関係はこれに全く同じで、通貨の供給量を増やせば物に対して通貨の価値は下がり、通貨の供給量を減らせば、物に対して通貨の価値が上昇していく。

デフレーションは通貨に対して物が多すぎる、つまりは通貨の需要に対してその供給量が少ない状態を指すが、基本的に日本でこれまで考えられてきたデフレーションは、一般的なデフレーションではなかった。

現実には通貨も物も余っていた。

人口減少と、少子高齢化で基礎需要そのものが減少に転じていたので有って、これを一般的なデフレーション対策、通貨供給量を増やす「金融緩和」で解決する事は、初めから不可能だった。

その上で世界的なコロナウィルス感染対策に拠るブロック、またロシアのウクライナ侵攻に拠る経済封鎖の結果、あらゆる物資の供給量が極端に減少し、相対的に急激な通貨余り、ハイパーインフレが発生してきたのである。

デフレーションと違ってインフレーションの解決策はそれほど複雑ではない。

物資の生産量を増やし、通貨の供給量を減らせば数年単位では有るが、状態を緩和する事はできる。

しかし、ロシアがウクライナに侵攻し、世界が経済封鎖を行っている為、生産量の増加と言う、対策の半分が実行不可能な現実は、その対策の大部分を通貨供給量の抑制にしか頼る事が出来ない状態を引き起こしている。

2022年5月5日、(日本時間)、アメリカのFRB(連邦準備制度)議長、ジェローム・パウエルはアメリカの金利を0・5%引き上げると発表した。

FRBが採る利上げ策としては、余りにも急激な利上げで有り、金利を上昇させると言う事は、それだけ市場が通貨を得にくくなる事を示していて、金利上昇はすなわち、通貨供給量を減らすと言う事である。

物資が不足して生産が間に合わない為、通常の利上げ幅の倍の利上げをした事が伺える。

これに対して日本はどうかと言うと、先日日本銀行の黒田総裁は、これまで通り金融緩和を継続すると発表しており、日本でも急激な物価上昇が発生している中での、この発言は経済界からも多くの疑問が投げかけられた。

インフレーション下で、それを加速させる政策を継続すれば、どう言う結果になるかは目に見えている。

日本の通貨「円」は世界的な全面安となり、近い将来1ドル150円は現実的な数字になり、日本の財は安く世界から買いたたかれる事になる。

加えて急激な物価上昇により経済困窮者は増加し、日本は内も外に対しても壊滅的な打撃を被る事になる。

また2010年の段階で日本でクレジットカード破産、若しくはそれに準じる状態の者が210万人存在していたと言われているが、2022年の消費者金融協会の発表では、消費者金融のカードローンを利用している人口は500万人ともされ、これに銀行が発行しているカードローン利用者、他ノンバンク、後払いサービスを利用している人口を加えると、1000万人以上が、何らかの後払い、分割支払いを選択している事になる。

その上、日本政府はキャッシュレスを推進している事から、クレジット会社の審査も、従来よりは危険な経済状態の者にまでカードを発行する傾向に有り、これに連動して銀行の審査が通らない経済状態の者にまで、ローンを適応させる為、銀行が消費者金融を子会社にして、きわどい融資も実行している現実がある。

日本の金融界は2009年に発生したリーマンショック、その原因ともなった「サブプライムローン」のような状態に近付いている。

経済的弱者も家が買えるように、ローンの審査基準を甘くした結果がリーマンショックだった。

日本政府が推進するキャッシュレスでは、クレジット、pay等の後払い清算方式は必須だが、経済的困窮者、18歳以下、69歳以上の者、また過去に金融事故を起こしている者にもキャッシュレスを適応させねばならない。

それゆえ日本の金融業界は劣後債、劣後ローンに近い状態に傾きかけているように見えるが、経済的に貧しい状態の者は返済の事は考えないものだと言う大観も存在する。

既に生活費を消費者金融のカードローンで補っている状態、リボビリング(分割定額支払い)を利用している状態は、返済が不可能になる可能性が高く、借金をさらに借金して返済する多重債務状態では、破綻は目に見えている。

日本人の6人に1人は消費者金融のカードローンを利用している現実、それに過去延滞や債務整理をしている者にまで拡大して、カードローンやクレジットリボビリングに拠る消費を広げて行く在り様は、先にとても恐ろしい何かを想定させる。

このインフレーション最中に「金融緩和を継続します」と言う日本銀行総裁のセンス、日本政府が推進するキャッシュレス時代、その為に恩恵の公平化と言う観点から、サブプライムローン化する金融業界・・・。

何かが狂い始めている。

いや、もう既に狂っている。

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。