「漆の抗菌作用」

西暦1995年ごろから若年層の間に流行してきた潔癖主義は、細菌に対する過剰なまでの警戒感を社会的に蔓延させ、ここから「抗菌作用」を謳った商品が氾濫して来る事になるが、その傾向は現在でも衰えを見せず、本来生物は細菌の中で生...

「塗師の起源」

人間の考え方として、何かの技術や文化に流れを付けて考える事は容易だが、近似DNA を持つ生物の間では同じ時期に同じ技術や文化が全く互換性のないまま発生する、「逆べき発生」の可能性を排除してはならないのかも知れない。 漆塗...

「やすやす」

昭和50年代くらいまでだろうか、輪島塗りの職人が仕事を辞める場合には、誰もが納得できる理由と言うものが必要だった。 これは良くも悪くも徒弟制度の慣い、それに狭い社会が織り成す人間関係の親密さが背景に有っての事だったが、一...

「二つの乾燥点」

漆の乾燥温度はプラス温度側に2箇所存在する。 漆は常温だと湿度が無いと乾燥しない事から唯高温な状態では逆に乾燥せず、いつまでも液体の状態のままになる。 常温24度から36度、湿度60%から88%までが一つの乾燥条件である...

「技術の前に人が在る」

2014年現在、欅(きやき)の木地で上縁の円を変形させずに最も薄く曳いた椀木地の上縁の厚みは0・85mmだが、これが昭和55年(1980年)には0・6mmと言う薄い上縁の木地が存在した。 そしてこうした薄い上縁の椀はその...