「ラニーニャの呪縛と温暖な冬」

地球の陸地の平均高度は840m、これに対して海の平均深度は3800mである。

つまり地球を綺麗に均してしまうと、水深3000mの水の惑星と言え、この海水が気象に与える影響は甚大であり、全海洋面積の30分の1,水深100mの水温を1度上昇させるエネルギーは、地球全土の気温を1度上昇させるエネルギーに等しい。

北極圏には地球の北半分の寒気が集中するが、この寒気領域は円形や楕円のような幾何学的安定形状では存在できない。

波が連続して接続した形状、理解し易い形状としては星形の突出部分が丸くなり、谷の部分がやはりなだらかになった形状、或いは花形のような形になっていて、しかもこうした星や花のような綺麗な均等性を維持していない。

突出部分が1つから5つ発生し、この突出部分を「波」と呼び、波の南端を流れる風を偏西風と言う。

2022年12月末から2023年1月初期、北極海の寒気は2つの突出を持っていたが、其の1つが日本、もう1つがアメリカ大陸へと延びていた。

こうした突起ができると、通常はどこかの部分は波状の凹みができるように考え易いが、凹みは必ずしも出現するとは限らず、突出の横や対角線上に凹みが出るなどの規則性もない。

日本やアメリカ大陸に寒気が延びていた頃、ヨーロッパでは寒気の空白域が発生し、この影響でスイスでは冬の季節に摂氏20度と言う記録的な温度上昇が発生するのである。

この寒気の突出と凹みでは、凹みの部分は南から暖かい空気に圧されるケースが有り、一度凹みが発生すると北極海まで南の暖かい空気が侵入する事例は有るが、ごく稀な事であり、今回のように北極海深くまで南風が侵入するケースは初めての事である。

また日本に突出してきた寒気だが、確かに強い寒気だったが、日本海側に記録的な積雪をもたらした最大の原因は寒気でも収束前線でもなく、実は中途半端な気温の影響と言える。

通常12月後半、日本海側の積雪地帯はもう少し温度が低く、その為降る雪は湿った重たい雪ではなく、もう少し軽い雪が標準となる為、風に飛ばされたり圧縮率の高さから、今回のような積雪量にまではならない。

日本海側の積雪地帯が早くから積雪量が多くなった経緯は、雨になるか雪になるか微妙な温度で降ってきた雨が、全てかろうじて雪になったと言う、とても中途半端な気温がもたらした豪雪と言え、結果として寒気が侵入した割には温度が高かった事が、12月の日本の記録的な積雪に繋がったと考えられる訳である。

気象庁は2022年末から2023年初期の「冬」の傾向を11月に発表していたが、其の予測ではラニーニヤ現象の影響で今季日本の冬は厳しいだろうと言う予測がなされていた。

日本ではエルニーニョやラニーニャの影響と、気象庁や気象予報士が平気で口にするが、例えば欧米で日本の気象にエルニーニョやラニーニャが影響すると考えている専門家は殆ど存在しない。

今期の冬に鑑みれば解る事だが、ラニーニヤが日本の冬に影響を与える確率は、50%と50%、言い換えればラニーニヤではなくても厳しい冬もあるし、エルニーニョでなくても温暖な冬が存在し、ラニーニャなどはそもそもエルニーニョ概念に相対して発生した概念でもある。

結論から言えば一種の宗教のような形で日本の気象庁はエルニーニョとラニーニヤを信じている訳だが、冒頭の話に戻すなら、ラニーニャが発生するから日本に寒気が南下するのではなく、それは北極圏の寒気の動きに拠って決まるのであり、ラニーニャも大きな原因に拠って発生する1つの兆候に過ぎない、そんな当たり前の話なのである。

日本はこれから1月14日に向けて、前出のスイスと同じような寒気の凹みを迎える。

東京の最高気温は1月13、14日のどちらかには17度を越え、本州のどこかの地点では、この季節としては異例の20度越えも有り得る。

2022年末ラニーニャだ、厳しい冬だと大騒ぎしていた気象予報士も、こうなればラニーニャなど口にしない。

都合の良い時だけラニーニャにすがり、昨年日本海側で12月としては記録的な積雪を観測したその原因は、意外にも寒気が南下しつつ、下り切らなかった気温に有る事など、中央集権的なデータ主義で、現地の傾向を長年の経験から感じる、其の感覚的な部分を放棄するからこそ、理解できなくなるのである。

雪が沢山積もるから寒いのではなく、気温が微妙に高いからこそ積雪量が増えるケースは、スーパーコンピューターでは予測ができないかも知れない。

日本は2023年1月に入って、比較的温暖な気候となって来ていて、これがピークとなる1月13、14日には記録的な高温になる可能性が高い。

因みにこうした傾向は1995年にも存在し、神戸では1月に入って、例年なら氷点下の気温になるにも関わらず、17度と言う異例の気温を記録する。

そして1月17日、震源付近最大震度7の阪神淡路大地震が発生するのである。

高温傾向と地震発生の科学的因果関係は全く立証できない。

だが、偶然では在っても、10回の内1回でもそれが重なれば、現実的な因果関係を想定するべきだろうと思う。

気象庁にはラニーニヤと言う呪縛から早く逃れられる事をお勧めし、1995年1月17日には、阪神淡路大地震で多くの人命が失われた事を、また其の前には異例の高温傾向が在った事を、今一度記録して措く。

 

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。