「兄弟」

幼い頃からそうだった・・・。 匂いが解らない。 最盛期の金木犀の香りですら、微かにしか感じない私の嗅覚は、何故かしら身内や親戚の誰かが死ぬ時だけ、反応していた。 それはまるで草が繁茂する時に発する勢い、萌えるような匂いで...

「星が山へ帰る」

さてこの日差しは梅雨の僅かな隙間か、それとも確かな夏の訪れか、いかようにも見える青空の下を、かなりの年配と見受けられる婦人が巾着袋と一緒に花束を持って坂道を行く姿があり、そうした婦人の後姿に幾ばくかの申し訳ない気持ちを感...

「至福のチャーハン」

眠れぬ夜、たまに自分がこれまでに書いてきた記事を読み返しながら思うに、どうも「料理」の記事が余りにも少ないので、今夜は少し料理の話など書いてみようかと思うが、いかんせん自分が何とかまともに作れるものと言えば、「チャーハン...

第2章「子供達の手紙」

そしてそこでの仕事はこの大手化粧品メーカーが経営している繊維工場の閉鎖準備だったのである。 だから結果としてこの繊維工場の社長には権利が無く、「管理室」の室長である本社部長がこの工場の権利者だったのである。 そして工場の...