「おもてなし経済」

東京は一番大きな「田舎」で有り、従って現在地方で起こっている問題が一番最後に巨大化して発生する事になる。

日本の地方経済と言うのは第一次産業から第二次産業の生産基盤が有って、そこから第三次産業が存在する仕組みだったが、第二次世界大戦後に始まった自由貿易によって、地方の農業や林業と言った第一次産業は衰退し、更に資本主義は工業などの第二次産業も「価格競争」の原理から衰退させ、ここに少子高齢化や人口流出が起こって、事実上地方経済は破綻していた。

この図式を鑑みるなら、こうした地方経済の破綻状況は今の日本の国状そのものと言え、この中で地方が考える事は地方交付税の増額や補助金の増額、或いは都市部からの集客による経済効果と言うものであり、こうした背景から始まるのが「おもてなし」と言うものだった。

だがこれでは地方経済の主眼がすべて「観光」を基盤としたものとなり、ここでは農林業と言った地方生産基盤まで全て観光の為に動く形式を発生せしめ、為に農林業が第三次産業化、所謂サービス事業化し、本業と全く関係ないサービスに労力を費やし、その挙句期待された経済効果は時の世界情勢によって成立する事が無かった為、事実上経済破綻が慢性化していた。

またこうした事情に加え、打ち続く自然災害によってあらゆる方策を失った地方経済は、「援助」と、観光と言う効果に更に依存する傾向を深め、実際には若年労働者が流出し、高齢者しか残存していない地方に一般通常の経済復興や発展を想定したが、既に生産の為の労働者は残っておらず、地方経済は「乞食経済」になっていた。

そしてここに「人さへ来てくれれば儲かる」と言う幻想が発生したが、その実体は地方に残っていた僅かな生産能力や、その能力を有する者たちに「おもてなし」と言う弱い全体主義を強いて疲弊させ、その上で「おもてなし」は成功したとしても、それで潤う観光業以外の産業は只ひたすら力を奪われて行ったのである。

私が「おもてなし」と言う言葉が嫌いな理由はここに有り、「表が無い」、裏ばっかりだと言う意味にしか解釈できない。

「人が来れば儲かる」時代は1980年代で終わっていて、1993年以降は人が来れば損をするのが現実になっている。

それとどうやら中国経済が限界を迎えているような気がする。
共産党指導部が必至になって報道を抑制しているが、中国農村部各地の「反共産党」運動は相当激化している可能性が高く、大変厳しい制度を引いている「表の金融」に対して存在する、共産党幹部関係の個人的裁量による「裏の金融」がそろそろ「誤差」の範囲を超えてきている。

通常中国の銀行で融資を受けるには大変厳しい審査が有り、一般人はまず融資を受けることが出来ないが、これが共産党幹部の関係者やそのお墨付きが有れば、何の審査も無く融資を受けることが出来る。

勿論この仕組みが全てではないが、簡略に言うなら返済計画もいい加減なら金利も適当な融資が裏で動いていて、これの存在が無視できない状態にまで膨れ上がってきていて、中国の通貨「元」とドルとの交換を可能にしているアメリカは、近い将来大きなダメージを受けるリスクを負っているが、これは日本も同じである。

中国の経済破綻は既に秒読み段階に入っている。

アメリカの連邦準備機構「FRB」がその量的緩和政策の縮小を考えるのは国内の金利矛盾の解消も去る事ながら、こうした中国経済のタイミングを計っている事も無視できず、FRBは1年半をめどに、段階的に通貨量緩和政策を縮小して行かざるを得ない。

その結果日本の円は更なる下落を迎え、ここに日本の円高によって貿易競争力を維持していた韓国経済は一挙に危機を迎える事になり、国民の負担は増加し、韓国政府はもとより韓国国民もそのどう仕様も無い状態に対する不満のはけ口を日本に向け、この状態は中国共産党も同じである。

簡単に言うなら中国、韓国とも経済危機を迎え、その矛先を日本に向ける状態がより一層激しくなると言う事である。

こんな状態の中、いちいちフランスの風刺絵如きに政府の官房長官が遺憾の意を表しているようでは、到底この先中国、韓国との関係改善など難しい。

また福島原発事故によって発生している大量の汚染水は、今の日本の技術では海洋投棄以外に方策が無く、この意味では今後30年近くはいつどこで放射能汚染の風評が発生しても不思議は無い状態に有り、政府はこれをコントロールできないばかりか、只さへ国債の金利償還が半分を占める国家予算の国債金利負担は、円の下落によって跳ね上がり、予算も労働力もオリンピック関係に取られる東北の復興は窮地に陥る。

そればかりか円の下落は海外から調達する原材料の高騰を招き、ここでも復興予算は大幅な増額が必要になる可能性があり、これは国民生活に措いても、医療薬品関係に措いても同じである。
加えてアメリカ通貨の量的緩和縮小政策は、円の下落を日本政府や日本銀行がコントロールできる範囲を一脱させる事になる。

日本も中国も韓国も経済危機に陥り、政情は不安定化し、その上に各国とも気象災害や地震災害に膨大な予算を必要とする事になるだろう。

万一関東地震や富士山の噴火が始まった場合、日本はオリンピックを開催できるかどうかが危うく、そうで無くとも今の世界情勢を鑑みるなら「おもてなし」で巨額投資を行い、その間オリンピックを拝み続けて高額負担を我慢してきた日本国民の経済的期待は、見事に裏切られる可能性が高い。

消費税増税、あらゆる生活物資の高騰、オリンピックに集約される予算によって縮小される地方予算や福祉関係予算、それによって二次的に発生する物資や建設関係工事額の高騰、災害など、今後7年間に日本人が辿る道は艱難辛苦の道になるが、片方では煌びやかな「おもてなし」が繰り広げられ、7年後にオリンピックが終わったら日本も終わりになる。

ちょうど田舎で一生懸命働いている者は何かの集会などにも出る時間が無く、そこで暇な者だけが集まって物事が決められ、その決められた事によって一生懸命働いている者達への負担が増やされる形式に同じである。

田舎はのどかなので無く、既にあらゆる滅亡が始まっている。

そしてこの田舎の姿が数年後の東京、日本の在り様と言うものだ・・・。

[本文は2013年9月14日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。