「中華人民共和国」・Ⅱ

共産主義と言う考え方は現状に即して生産や経済計画が組み立てられる。

それゆえ基本的には人口が増えることに対応するほど毎年の生産は増加しないが、これは原理的に一生懸命働いても、適当に働いても給料が同じなら、適当に働いた方が利益になる事を考えれば自明の理である。

すなわち共産主義の宿命は、基本的に時間経過とともにその生産は減少することにあり、その結果国家が貧しくなると生物の本能としても生存確率の確保傾向が高まり、このことから共産主義の行く末は生産の減少と、人口の増加と言う相反する命題に直面する。

この逆の現象で資本主義が膨らんだ上に、国家が経済的に豊かになると、こちらでは生物の生存確率の安定性から逆に人口が減少へ向かい、その割には生産は拡大を続ける原理で動こうとする矛盾が発生するが、共産主義は人口抑制、そして後者の資本主義では生産の抑制と言う、全く正反対の政策が急務課題となっていくのである。

1979年、国内の人口増加に計画生産経済が追いつかなくなった中華人民共和国政府は、ここに人口抑制策として「一人っ子政策」なる人口抑制策を打ち出したが、この政策は人口の94%を占める漢族に適用され、一組の夫婦がその生涯にもうけることができる子供の数を1人と定め、これに違反したものは年収の2倍から3倍と言う高額な罰金を課し、名前の公表や租税措置、社会保障などにも格差をもうけるなどした、大変厳しいものだった。

中国政府は現在ではこの政策を見直してしているが、過去、経済的に豊かになった者たちの間では高額な罰金を払っても第二子をもうける家庭も増え、これに対応して政府が課す罰金は毎年増加し、今では年収の10倍と言うケースも発生しているが、一方でこうした罰金収入は国家予算の中でもそれなりのウェートを占めるようになり、実情は子供をもうけるために民衆が国家に支払う、「子供取得税」としての様相も現れ始めていた。

またこの「一人っ子政策」は少数民族や例えば香港などでは適用されず、その為漢族は減少したが、逆に少数民族は人口を増やすことになり、1998年頃までの中国では比較的厳格にこの政策が守られた結果、秘密にして子供をもうける傾向も発生し、こうした子供は学校教育や福祉も受けられず、戸籍の無い闇の子供、「黒孩子」(へいはいず)と呼ばれ、こうした子供たちが実際には3億、4億くらい存在していたのではないかと言われている。

ゆえに中国の実際の人口は中国政府もつかめておらず、またこうした一人っ子政策は、「家制度」が一般的だった中国の一般家庭に措いては、跡継ぎとしての男子の出生を望み、女子の出生を避けたことから、母親が妊娠してその子供が女の子だと分かるとこれを堕胎し、男子だけを出生させる傾向となって行き、これが今日中国国内の女子人口の少なさに繋がり、尚且つ結婚適齢期の男性は結婚できないと言う実情の原因ともなっている。

その為現在中国では女性と女の子の誘拐や人身売買が後を絶たず、ひどい場合には医師や看護士までが絡んだ、婦女子の誘拐事件までも発生しているのであり、こうした一人っ子政策によって発生した弊害は何も中国国内だけに留まらず、現在日本に対して起こっている中国の若者の暴動も、実はその原因のいくばくかがこの一人っ子政策にあると言っても良い。

各家庭にその将来をになう子供が1人しかいないと言う状態は、精神的にも物質的にも子供1人に対して他の家族の意識一切が集中すると言うことであり、尚且つこうした家庭が周囲の社会にも広がっている訳である。

当然の如くその子供には親や祖父母の愛情が全て注がれ、その為こうした子供たちの在り様は、男の子なら「小皇帝」、女の子であれば「小公主」と呼ばれる程甘やかされて育てられる傾向があった。

だから極端なことを言えば、家事のできない青年や女性が出現してきたのであり、彼等は全く我慢すると言うことも無く、妥協や譲歩すら知らないのであり、この傾向に結婚できない男性の増加傾向が加わり、その反動で男尊女卑から一挙に女王さま並みに地位が向上してきた漢族女性は、男子以上に我侭な傾向が現れてきたのである。

そして民主化に揺れる中国の実情が有るが、国民が貧しい時代には武力で押さえ込むことが容易だったにも関わらず、鄧小平が推進した中国経済の自由化は民衆の意識も高め、そんな中で民主化に対する潜在的な願望はいたるところで噴出し始め、それが今日では経済の自由化によって広がった中国の格差問題へと繋がってきている。

それゆえ現在の中国の暴動は基本的には民主化要求ではなく、民族運動、思想言論の自由に関する要求、格差社会や共産党の腐敗に対する不満がその原因なのだが、しかし人民解放軍を後ろに持つ政府には逆らえない。

そこで若者は如何なる形であれ、暴動が起こせれば良いと言う傾向があり、これが日本に対する反日暴動となっているのだが、この背景にはやはり中国にも存在する西欧崇拝主義があり、このことから欧米にはどこかで面と向かって逆らえないが、ではどこがと言う事になれば、太平洋戦争後一貫して非難し続けてきた資本主義の象徴日本、そして日本憎しで国民を鼓舞し続けてきた中国政府の教育がここにきて生きてきた訳であり、中国政府も不満の対象が日本に向かうことを利用しながら今日に至ったのは、少なくとも暴動が政府に向かってこない都合の良さが有ったからである。

ゆえにこれから先も中国政府は各地で暴動が起きるたびに、その方向性を日本に持っていこうとするだろうし、必要となれば暴動を日本に対する圧力に使うだろうが、一方でインターネットで繋がった国際社会は実情や現実も中国国民にもたらし、そこで起こってくるものは「人権」と言うものに対する意識だろう。

「自由」と言うものを知り、それに対する我慢が分岐点に差し掛かったところで、中国人民は何れ共産党一党支配体制に立ち向かう日がやってくるに違いない。

暴動と言うものはその目的が集約されたもの、例えば「自由」や「平和」などと言ったものであれば力を発揮するが、「嫁がいない」、「何だか分からないけど腹が立つ」、「何であいつらだけが豊かで、俺たちは貧しいんだ」とか言うことが本質で集まっている暴動は、やがてその矛先を自国国家、政府に向けるものであり、既にその分岐点が視野に入ってきているように私は思える。

ちなみに中華人民共和国は国際連合常任理事国であるが、同時に中華人民共和国中央人民政府は、国際連合から「侵略者」としても定義されていることを最後に記しておこうか・・・。

※ 本文は2010年10月24日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。

 

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。

2件のコメント

  1. 「中華人民共和国」I・II

    中華人民共和国は、中華民国の正当な後継国でもないのに、UNで拒否権を持つ常任理事国って、そもそも変(笑い)、人民も共和国も、ついでに民主主義も、和製漢語~~♪

    未だに「督戦隊」が居る解放軍は強いですが(笑い)、勿論国民軍ではなく、共産党の下部組織。
    高校生の頃、天安門前広場に集結した紅衛兵の瞳は澄んでいただの、去った後、ゴミ一つ落ちて居なかっただの、朝〇新聞は、報じていたが、支那人の集まった後は、世界中ゴミだらけ。
    友達が、「毛沢東語録」を読んでいて、先生から、ちょっとだけ、気にされていましたが、読み終わって、損をした、ロクな国に成らない、と言っていました。今は、過剰な人口を、後進国を騙して、移民先にしているが、騙される国が長蛇の列~~♪

    評論家の宮崎正弘によれば、「中国語には『嘘』とう言葉はありません。漢字で『嘘』はありますが、日本とは意味がことなり、『シーッ、お黙り』という意味です。なぜ中国語に『嘘』がないか。答えは簡単です。中国人はみな嘘つきだから、必要がないのです」~3千年、全く変化なし~~♪
    最近は、4千年に成ったかと思ったら、10年位で、5千年に成った(笑い)

    1. ハシビロコウさま、有り難うございます。

      どの民族も他国の事は余り知らないでしょうね。
      例えば日本の安倍総理などを見ていると、習近平の方が遥かに誠実に見えるし、トランプ大統領は正義の味方にすら見えるかも知れない。
      自民党の腐敗と低能ぶりは韓国の国会とほぼ程度は同じ、そんな者同士が互いをけなしあっている訳ですが、誰も正確にそれを学ぼうとはしない。
      家にいてテレビや本で得た情報で他者を判断しているのでは、その本質は見えないし、考え方は強硬になるだけで、やがては対立しか起こらない。
      結局「彼を知り己を知れば・・・」ではなく「彼を知らず、己を知らず・・・」で互いが想像の範囲で曲解し、ブロック化しているだけかも知れません。
      まあしかし、いつの時代もこんなものだったかも知れませんが・・・。

      コメント、有り難うございました。

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