「呪いの人形の微笑」

自然現象が全て一つの事に起因して発生しているとは限らず、例えば厚さ20mmの鉄の板を人間の手が通り抜けられる確率は、42億分の1の逆べき分布である。

つまり最初の1回目で鉄の板を手がすり抜けられる可能性も有るが、81億回目と82億回目に1回の場合もあり、更には126億回目付近で3回と言う場合も有り得る。

そしてトリックを使ったマジックも人間界には存在し、この場合は100回同じ事が起こっても不思議とは思わないが、為に42億回に1回発生する確率が消滅している訳ではない。

地震の前兆現象は以前にも書いたように「呪いの人形」であり、通常は風や人間が部屋に入った時に起こる対流で日本人形の裾が揺れ、これを怪奇現象と思い込む場合が多いが、この中で1万回に1回、本当に人形が呪われて、それで着物の裾が揺れている事には気付かない訳で、しかも発生する結果は同じなのである。

2013年12月16日、島根県松江市の島根県庁では同日午前1時35分に県庁の全ての時計が止まっているのが発見された。
島根県庁が採用しているシステムは音波信号方式で、親機から発信される電波によってコントロールされているが、250個有る時計の全てが午前1時35分で止まっていた。

この現象の原因は雷、親機の異常などが挙げられているが、同日島根県庁付近に雷雲の発生は無く、親機にも異常はなかったとされている。
電波障害は無線などの周波数などでも発生するが、通常こうした親機を使った隣接地域のコントロール電波に大きな干渉を与える事は難しく、もし干渉したとしても、その場合は時間が少し遅れる程度である。

そして電波干渉に最も大きな影響を与えるのは電圧、言い換えれば強力な磁性であり、この場合は目に見えなくても一時的に島根県庁付近で異常電圧がかかったか、或いは磁性が働いた可能性が有り、もしかしたらでは有るが、1万回に1回発生してくる呪いの人形の確率が出てくる。

1974年5月9日に発生した伊豆半島沖地震では、腕時計の蛍光塗料が発光しなくなった現象と共に、時計が止まった記録が多く残っており、それらはいずれも地震が発生する1週間前から始まっていて、殆どの大きな地震で発生している現象である。

また2013年10月17日、これも島根県松江市での出来事だが、会社員の西村大輔さん(39歳)が午後3時ごろ、太陽が3つに見える「幻日」(げんじつ)現象と「逆さ虹」を目撃している。
「幻日」とは空にある氷の粒に太陽光が反射して起こる現象で、通常良く見られのは太陽が2つ見えるパターンだが、最大では9つの太陽になって見える例が残っている。

同じように「逆さ虹」も空気中に存在する水蒸気や氷の粒によって、太陽光が分散されて太陽の周辺に丸い虹が発生する、その下の部分だけが見える現象で、これは通常の虹がひっくり返ったように見える。

島根県では11月に「神在月」を迎えていた事から、これらを神の奇跡と考えた向きも多かった。

確かに「幻日」は昔から記録が残っているが、これが地震の前兆現象とする記録は殆ど残っておらず、前兆現象と考えるようになったのは1970年頃の事であるから、おそらくこれは「恐れ過ぎ」だろうと思う。

しかし問題は「逆さ虹」であり、これも気象学的には考えられない程珍しいものでは無いが、こちらは昔から地震発生の前兆現象とする記録が残っている。

だが「逆さ虹」現象は地震発生の数日前の現象であり、この点で言えば既に2ヶ月も前の事だから関係はないように思えるが、「逆さ虹」と同類の現象に「彩雲」(さいうん)や「瑞雲」(ずいうん)と言う現象があり、この延長線上に「虹蛇」(こうだ)現象がある。

「彩雲」や「瑞雲」は「逆さ虹」同様、雲に虹が映る現象で、基本的には「虹蛇」も同じだが、これらは綺麗な半円を描かず、横長か幅が広い直線虹になって見え、「彩雲」や「瑞雲」は昔から吉祥の兆しとされているが、「虹蛇」は「彩雲」や「瑞雲」が不確定な直線で長く伸びた状態になって見える現象であり、こちらは吉祥、凶事共に絶大な面を持っているとされている。

「虹蛇」は大変良い事が起こるか、大変悪い事が起こるか、そのどちらかとされているが、地震の前兆現象としては「遠い前兆」である。
この現象は将来震源となる地域から数千キロメートル離れたところで観測され、しかもこれが目撃されてから地震が発生するのは1ヶ月から2ヶ月後の場合が多い。

だが中国四川省大震災の時、「虹蛇」は地震発生の16日前に目撃されていた。

統計は「ローレンツ・アトラクタ」「混沌」で有り、地震の前兆現象でも全く同じものは1つも存在せず、それはいつも少しずつ動いている。
自然現象が持つ「呪いの人形」の確率の中に、常に混沌に向かう確率が交差して多次元的な動きをしている。

島根県庁の時計が止まった事が地震発生の前兆現象である確率は低い、また10月に目撃された「逆さ虹」もやはり地震の前兆現象である確率は低い。

しかし、これらが発生してどのくらいで地震が来るかは変動し、その確率は低くても大きな地震が来る前に「時計が止まる」事が有り、「逆さ虹」が出る時が有ると言う事実は変わらず、「虹」は「遠い前兆」と言う、統計的側面を頭の片隅の入れて置く必要はあるだろう。

人間は電池で動くフランス人形の電池が切れている事を知るのは、その人形の動きが止まった時だが、その最後の1回の動きが何か理不尽な動機で有ったとしても気が付かない・・・。

[本文は2013年12月18日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。