「アトラクタ異分子」

水辺に生える植物と同じ葉の形状を持つ植物が、その水辺に近い陸地に生息する場合、基本的な形状を変えずに陸地に適合し、最終的には水辺で3種、陸地で2種くらいの同系の植物に分化して行く発展方法はフラクタル(自己相似性)の観点からも、アトラクター(時間的不規法則発展)の中に在る事が解るが、アメーバーのように初めから決まった形を持たない生物の運動は「カオスアトラクター」(混沌の法則性)に拠る。

アメーバーの進行方向の決定過程はランダム方向から、特定の栄養値が存在すればそこへ少しずつ移動容積を増やして進行する形態となっているが、ここには地形的な要素も部分的には含まれ、では最初のランダムな動きのその先端はどうなるかと言えば、それまでの形状に対して全て「異」となっている。

自然界が持つ崩壊や混沌にまで存在する一定の法則、それが変化していく過程は時間的発展の中でフラクタル性を持った法則の中の変化か、或いはクラスター構造そのものが破壊される変化か、若しくはクラスター構造が小さな「異」によって変化するのかが区別できない。

おそらくこの結果が解るのは宇宙が消滅した時と言う事になるのだろう。

つまり我々が考える秩序とその崩壊の関係は、宇宙が消滅するまでは同じ方向に在ると言う事で、フラクタル性は集合の意味を持つが、その反面僅かな変化を許容しているとも言え、それまで存在した秩序の中に少しずつ混じって来る変化は、遠からず現状の変化に繋がるが、その変化が今度は次の秩序を構成し、また次の変化によって変化して行く有り様は、植物の分化やアメーバーの動きと同じ概念を持つのか、或いは根本の原理が崩壊してしまうのか、それとも小さな「異」と言う現実によって宇宙の秩序が変化するのかが決定されていない。

この事から統計学の分野で必ず発生する特殊性の崩壊、その初期に出現する統計学上の「例外」は、時間経過と共に少しずつ例外を増やし、やがては基本となっていた統計上の特性をランダム近似値にしてしまう傾向の本質は、予め変化が平均値で有る事を示しているようにも見える。

台風11号の進路方向はこの季節にしては一般的な進路方向とは言えないものの、それでもほぼフラクタル(相似性)の中に有るが、珍しいのは台風13号の進路で有る。
こうした動きの台風が全く無いとは言い切れないものの、この季節としてはとても珍しく、原因は太平洋高気圧の弱体と、寒気に有る。

少し以前に関東地方に大雨や雹が降った激しい気候でも、シベリアから降りてきた寒気が太平洋高気圧の縁を回り、一度太平洋まで出てから戻ってきた為に発生したものだが、極めて珍しい現象である。

気象庁は当初今年の夏の気候をエルニーニョ現象によって冷夏と予測したが、その後6月7月と高温状態が続き、終には秋にエルニーニョ現象と言う苦しい発表をしている。
しかし、現実は8月に入って気温が下がった地点が増加し、この事からエルニーニョ現象と夏の高温化をもたらす「ラニーニャ現象」のどちらもが出現した形と考えられなくも無い。

台風11号、台風13号も通常で有れば太平洋を大きく覆ってくる太平洋高気圧の勢力が弱く、後ろで切れているような形になっている為に発生する進路なのであり、この点で言うならエルニーニョ現象に近いが、7月はラニーニャ現象のようだった。

つまりはエルニーニョとラニーニャの両現象が混乱してきていると言う事か、或いはもう既に南米ペルー沖の海水温と、これまでの気象統計学上の関係が崩壊してきている可能性を考える時期が来ているのかも知れない。

特に台風13号のようなミッドウェー海域から日本に近付く台風の出現は明確に「異」、これまでの秩序の崩壊の初期段階に現れる「誤差」、特殊性の出現であり、エルニーニョと言う現象が持つこれまでの統計学上の傾向に変化が出てきたか無効になった、それともエルニーニョやラニーニャ自体が、これまでたまたま統計学上に重なっていただけで本来に戻ったのか、または発展的な変化なのかの区別が付かない。

しかし何れにせよ毎年では無いにしても、こうした現象が現れてくると言う事は、フラクタル性によって同じ様な傾向や変化がこれから少しずつ増えてくると言う事であり、片方でそれぞれの地域で協賛者を募り、リアルタイムで10分単位の気象が予測できるシステムが構築されながら、中長期予測と言う分野が混沌に向かう事は、如何にも混沌の時代らしい有り様と言える。

気象情報の時間的細分化に付いて、その情報が細分化されるに従って公的、国家的重要性から乖離していく。
戦争時以外では今日や明日、更には今日の13時の天気と言った具合で、その情報提供が細かくなるほど、それを必要とする需要の先は個人に近付き、内容も重要性が薄くなる。

今日の13時の天気情報が必要な者はイベント主催者や参加者、会社の打ち合わせやデートを予定している者などの需要だが、3ヶ月後の気象予測はその国家の食料政策やエネルギー政策を左右し、場合によって世界戦略の重要課題である。

その重要課題である中長期気象予測が、地球温暖化によって寒暖が激化し、統計学上も混沌に近付きつつ有る今日、一刻も早く地球物理学、物理学、生物学などと連携し次なるカオスアトラクターを探さないと、ある日突然食料やエネルギー事情で国家が倒壊と言う事態を迎える可能性がある。

時間や分単位の気象予測は、どこかでスマートフォンの使われ方と似ている。
細かい事に対応してしていて本質が失われているような気がする。

晴天の日だから良い事が有る訳ではなく、恋人達の仲が良くなるとは限らない。
嵐の夜ゆえに出会う人もいる・・・・。

[本文は2014年8月10日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。