「片務最恵国待遇」

「Most favored nation treatment」、通称「MFN」、日本語で言うなら「最恵国待遇」と言う国家間の、主に関税に関する制度が存在するが、この制度の初源は「誠意」のやり取りに関する慣習である。

2国間、或いは複数の友好国の間で貿易取り引きに関する公平性と市場開放を共通のテーブルで担保しようとするもので、元々は友好国同士の協定、何か大きな条約締結時の付帯条項だったものが、第二次世界大戦後に発足した「World Trade Organization)(WTO・世界貿易機関)と「General Agreement on Tariffs and Trade」(GATT・関税と貿易に関する一般協定)により国際取り引き条項にまで発展した制度である。

従って最恵国待遇は、基本的には共通の関税制度と政治体制を必要とし、開放市場と統制市場では成立しない条項であり、WTOでもGATTでもその本質は国家間の貿易差別を取り払おうとするもので、ここではどうしても優遇されがちな自国商取引と海外の商取引の公平性を目的とし、2国間で協定された優遇措置は第三国にも適応が義務付けられる。

WTOやGATTは国内税制の適応に関しての対応までに言及していないが、例えば最恵国待遇協定国家間で、消費税の導入が存在する国家と消費税が存在していない国家間の均衡を制度上の義務とはしておらず、少なくとも日本が関係する国家で消費税が導入されていない国家は極めて少ない事から、海外の旅行者が日本で日本国内税制に従って消費税を払う事は国際協定に違反していない。

しかし日本政府はこの程、衣料品や家電製品に限っていた海外旅行者の消費税免税商品を、食料品や化粧品などあらゆる製品に関して拡大する措置を発表したが、この政策では同じ日本国内で買い物をしながら、日本人は消費税を払い、海外渡航者は消費税を払わずに済むと言う逆ダンピングが発生する事になる。

つまり日本国民は日本政府によって海外渡航者に比べ明確な劣性差別を受けている事になり、本来なら日本国民代表がWTOに提訴する案件に相当する。

最恵国待遇には片務最恵国待遇と言うものも過去には存在したが、自国国民が消費税を支払って国内製品を買い、海外渡航者が消費税を免除される条項の本質は占領政策下の国家、或いは既に失われて久しい言葉では有るが「植民地」で行われる税制措置である。

この制度を何も考えず施行する政府は、自らを世界中の国家に対して占領下と認めたようなものである。
日本で海外渡航者の消費税が免除されるなら、日本人も世界各国で消費税の免責を受ける義務が発生するが、国家の税制はその国家の定めであり、WTOもGATTもこうした点にまで干渉できない。

従って日本政府が施行する海外渡航者の消費税の免責は、日本政府の自主的被差別税制となるのであり、海外渡航者が受ける恩易を被差別によって日本国民が負担し、その売り上げの向上が大企業の収益になる仕組みは、円安によって生活物資が値上がりし、消費税の増税、電気料金や保険料の値上げに直面する国内消費を必ず下落させる。

必ず諸費税増税による税収や、海外渡航者の消費税免税措置による収益拡大の幅より大幅な下落幅になる。
日本は貿易で収益を上げているように錯誤している者も多いが、その収益の60%は国内消費であり、この国内消費に負担を強いて海外渡航者の便宜を図るなど正気の沙汰とは思えない。

簡単に言えば、私が20万円の大型冷蔵庫を買えば216000円で、海外渡航者に買って貰えば20万円で買える事になり、私は旅行者に5000円の手数料を払って買ってもらい、それを裏取り引きで210000万円で転売すれば、冷蔵庫を巡って三者は5000円から6000円の収益を出す事ができると言う事でもある。

景気回復の為と言えば、こうして自国民が自国政府によって差別を被り、不利益を被っている事にすら気付かないこの国家の知性と学識は、深く恥じるが良い。

[本文は2014年10月2日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]

 

T・asada
このブログの記事は「夏未夕 漆綾」第二席下地職人「浅田 正」 (表示名T・asada)が執筆しております。