「放浪の自由俳人」

種田山頭火(たねだ・さんとうか)本名、種田正一は山口県西佐波令村で大種田と呼ばれた大地主の家に生まれるが、父親の放蕩三昧を苦に、母親が山頭火11歳のときに井戸に身を投げ自殺する。 その後旧制山口中学から早稲田大学文学部に...

「越中富山の薬売り」

少しだけ登りになった道には暑さで逃げ水が立ち、蝉の声はこの時ぞとばかりに喧しくあたり一面に響き渡る。 そのもうおそらく老人と呼ぶべき年齢だろう男性は長年使い込んだ黒い時代遅れの自転車を押し、ときおり歩みを止めては首に下げ...

「雨の匂い」

おそらくイメージと言う事になるのだろうが、雨には甘い匂いが付きまとう。 それも砂糖のような極端な甘さではない薄い匂い、実際にそれが甘いかどうかではなく、感じると言う表現が正しいのかも知れない。 丁度プライマーや溶剤が実際...

「郷社祭り」(ごうしゃまつり)

石川県輪島市三井町本江(わじまし・みいまち・ほんごう)に所在する「大幡神杉伊豆牟比咩神社」(おおばたかんすぎ・いずむひめじんじゃ)の主要大祭が「郷社祭り」だが、同大祭は輪島市三井町仁行地区(わじまし・みいまち・にぎょう)...

「お願いしたい事があるのですが」

毎週日曜日の朝9時に電話することが決まっていた私は、その日もいつもの公衆電話で5000円分の100円硬貨をポケットに入れてダイヤルを回していた。 この頃はまだ携帯電話と言えば、信じられないかも知れないがアタッシュケース程...