「敏腕女スパイ」・Ⅰ

「ご報告申し上げます」 「んっ、何だ」 「昨日、岩倉卿のもとを女らしき者が訪ね来たとのことです」 「ふん、女とな、して女は若い女か」 「いやそれが、どうも見た者によりますと、かなりの年寄りとのことで、どこぞの田舎の隠居ら...

「そんなに若い女が恐いか」・Ⅱ

五百子の父「了寛」は二条家出身の尊王論者で、兄「円心」とともにこうした父から影響を受けた五百子もまた、尊王論者として唐津では認識されていたが、彼女は父の手紙を長州藩の家老に届けるために長州に赴き、そして関所でもめていたの...

「そんなに若い女が恐いか」・Ⅰ

「おい、お前、女か・・・」 長州藩の関所前で何やら大勢の人だかりができ、その真ん中でこれまたついぞ最近見かけぬ、華々しい出で立ちの若侍が啖呵をきっている場面に出くわした高杉晋作、僅かに白きうなじの有り様に、この若者が女で...

「グリーン車に乗る」

横綱と言えば、大相撲力士の中で最高位に君臨している者を指すが、この地位は本来地位ではなく、大関の中で最強の者に対して使うことを許される「尊称」だった。 江戸時代に編纂された伝書にはこう書かれている。 城や屋敷を建てるおり...

「日本は今どこにいるのか」・Ⅱ

60年以上も他国と戦争をせず、国民の暮らしは欧米以上に充実し、世界中行こうと思えばどこでも行ける。 食料は満ち溢れ、人々は車を所有し、道端に死体が転がっていると言うこともなければ、文字を書けないと言う人もいない。 世知辛...