「技術の前に人が在る」

2014年現在、欅(きやき)の木地で上縁の円を変形させずに最も薄く曳いた椀木地の上縁の厚みは0・85mmだが、これが昭和55年(1980年)には0・6mmと言う薄い上縁の木地が存在した。 そしてこうした薄い上縁の椀はその...

「逆放物線の交わり」

一般的な漆器のデザイン、特に「形」は陶器の形を踏襲、言い換えれば模倣して行く傾向に有るが、この原因は製作にかかる時間の差と、それを一つの様式や美と認める「権威」が陶器を先に認証して行った歴史的背景に拠る。 漆器の器の製作...

「角の概念」

輪島塗の世界にはこんな言葉がる。 「鼻をかみすぎて血が出るような仕事」 これは基本的には「過ぎたるは及ばざるが如し」だが、もう一つには仕事に呑まれて自分を見失う事を戒めたものかも知れない。 例えば吟味した「五段重」を作る...

「左手の迎え」

雷が落ちる時、それがどこへ落ちるかは決まっていないが、実は落ちる場所からもそれが誘導されている。 いわば不確定性原理の因果律と全く同じなのだが、例えば全ての手が読める将棋の名人同士が対戦したとするなら、その勝敗は対戦が決...

「塗師小刀を研ぐ」

塗師小刀(塗師刀)に限らず、刃物はその鍛えと同じように研ぐ技量によって生きもすれば死にもする。 塗師小刀の場合、裏が微妙に凹面になっていて、これを砥石で摺り合わせて刃先に2mmから3mm幅の平面部分を削り出す事から始める...